技術者の素顔

技術者の素顔技術者の思いをご紹介

ビル向けソリューション技術術:ビルの省エネに貢献しています 田丸 慎悟 専攻:制御工学

熱源・空調設備のソリューション開発

東日本大震災後の電力不足から省エネの必要性が高まってくる一方、ビルの更なる「安全、安心、快適」を実現することも求められています。そのような状況において、私は「快適」を維持しつつ、省エネを実現するソリューションをお客様に提供することが重要と考え、研究開発を行っています。

ビルにおいて重要となるのは、消費エネルギーの約40%を占める熱源・空調設備の省エネです。熱源設備は、電気やガスをエネルギー源として冷水と温水を生産し、これらを空調設備に供給します。空調設備は、供給された冷水や温水を用いて熱交換器により空気を冷却・加熱し、これらを室内に供給することで冷房・暖房を行います。熱源・空調設備の省エネで一番簡単な方法は、夏期は室内温度の設定値を上げて、冬期は室内温度の設定値を下げることです。しかし、この方法は居住者の快適性を損なうため、居住者の快適性を維持しつつ、消費エネルギーを削減する別の方法が必要になります。また、人によって快適と感じる温度が異なるため、適切な室内温度を設定することも難しい問題です。そこで、快適性指標(1)を用いて、より多くの居住者が快適と感じる範囲の中で、消費エネルギーを最小にする空調制御技術を開発しています。この空調制御技術は、熱源・空調設備全体のエネルギー特性を予めモデル化し、快適性指標を満足し、かつ、設備全体の効率が最も良くなる熱源の設定温度、空調の吹出口の設定温度、室内の設定温度を求めることで実現しています。このような空調制御システムを開発することで、居住者の快適性を維持しながらビルの省エネを実現しています。

田丸慎悟 写真

学生時代は、連結車両の安定走行に関する研究を行っていました。連結車両と操縦者をモデル化した対象に対して、安定走行が可能となるコントローラの設計法を研究しており、そこで得た制御工学の知識を活かしたいと思い、この仕事を選びました。現在は、制御工学の基礎理論を活用して、熱源設備や空調設備がどのように動作するのかイメージしながら技術開発を進めています。また、学生時代はシミュレーション評価までしかできませんでしたが、入社後は研究開発から実際のビルでの効果検証に至る一連の業務を経験することができ、この仕事の楽しさとやりがいを感じています。

休日は、子供と一緒に時間を過ごすことでリフレッシュしています。子供のおもちゃでも柔軟な考え方が必要になるものもあり、良い頭の体操になっています。平日は一緒に遊ぶ時間が少ないため、なるべく仕事の効率を上げて、家族の時間を大切にするようにしています。

ビルにおける省エネのニーズはこれからも増えていくと考えられます。熱源・空調設備のソリューションだけでなく、ビル全体を対象とした様々なソリューションを開発していくことで、省エネで快適なビルの実現に貢献していきたいと思います。

(1) 温度だけでなく、湿度、風量なども含めて計算された指標であり、数値の絶対値が小さいほど快適であることを意味する。±0.5以内であれば一般的に90%以上の人が快適であると感じる。

(2016年11月執筆)

「技術者の素顔」のトップへ