技術者の素顔

技術者の素顔技術者の思いをご紹介

デマンドサイドのエネルギー管理技術:スマートコミュニティと連携した全体最適を目指して 齋藤 正明 専攻:電気工学

地域社会に貢献するデマンドサイドの電力・熱運用の最適化技術

これまで、主要なエネルギーである電力は、遠方の発電所で「作られ」、送・配電線を介して「送られ」、ビルなどで「使用される」、大規模集中型の供給形態でした。このようなエネルギーを最終的に使用するビルや工場などを総称してデマンドサイドと言い、このデマンドサイドにおいて、エネルギーを有効利用するための技術開発を行っています。

近年、太陽光発電やコジェネレーションシステムなどの、電力を「作る」機器がビルなどにも多く設置されてきており、これにあわせて、蓄電池や蓄熱槽などの、エネルギーを「貯める」機器の増加も見込まれています。さらに、例えば震災以降の節電のように、エネルギーを広域的に安定供給・有効利用するため、ビルなどのデマンドサイドと供給サイドが協調する、「スマートコミュニティ」の構築に向けた取り組みが各地で行われています。これまでは「使う」一辺倒であったビルなどのデマンドサイドにおいて、今後は電力や熱を「作る」「貯める」プロセスも考慮して、さらには広域的な観点からの全体最適を図りながら、エネルギーを統合的に管理していく必要があります。

齋藤正明 写真

東芝は国内外問わず様々な都市で、スマートコミュニティの実証PJに参画しています。YSCP(Yokohama Smart City Project)においてビル全体の電力使用量を自動的に調節することで、広域的な電力需給のバランスを図る「デマンドレスポンス」の実証試験に参加するため、私自身はこのデマンドレスポンスに対応してビル内の機器を最適に運用する制御アルゴリズムを開発しました。実際のビルで初運用する際、ビルの中央監視室を抜け出し、制御信号の出力にあわせて実際の機器が動き始めた時の光景を良く覚えています。学生時代の研究テーマは、コジェネレーションシステムの最適運用に関する研究であり、これは今現在、会社で取り組んでいるテーマとほぼ同じ物です。しかし、当時と異なり、最初は頭の中にあるアイデアなどが、徐々に具現化されて実際の物やシステムの構成要素となり、社会に適用されていく様を見届ける事ができるのは、メーカならではの仕事の醍醐味であると感じます。

仕事以外の時間は、運動不足の解消や、飲酒により蓄えたカロリーをオフするなど、諸々の理由で時々ジムに通っています。また、学生時代の専攻が電気でしたので、最近、熱力学に関する外部のセミナー等に参加するなど、少しずつ専門性を広げています。仕事以外の時間の過ごし方が、仕事を充実させる上でも重要と思います。

エネルギーは現代社会に必要不可欠であり、今後もその必要性は増すものと思います。スマートコミュニティ実現に向けた要素技術の開発を通して、環境の保全や人間社会の発展が両立できる地域社会の実現に、少しでも貢献できたらと思います。

(2015年12月執筆)

「技術者の素顔」のトップへ