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開閉機器の大電流遮断技術 電力系統の事故から設備を保護します 大坊 昂 専攻:量子エネルギー工学

電力系統で発生した事故電流を確実に遮断する開閉器の開発

発電所で作られた電力を需要家に供給する電力系統において、数10kVの系統で受電するビルや工場等の電路には、一般家庭でのブレーカーに相当する開閉器が設置されています。この開閉器の重要な役割の一つは、事故電流を遮断し、設備を保護することです。落雷や短絡事故が発生した際、数10kAもの大電流が通電し、他の電力系統の機器を損傷するおそれがあります。その際に大電流を遮断し、事故点を速やかに系統から取り除く機器が開閉器です。私は入社してから、この開閉器の開発、特に機器の中で直接電流遮断を行う重要部品である真空バルブの開発に従事しています。

真空バルブは、内部が真空の絶縁物の容器内に対となる電極が搭載されており、通電時は閉じていますが、事故発生時は電極を高速に開くことで、大電流を短時間で遮断します。その際に電極間にアーク放電が発生し、表面温度が数1000度もの高温に達することがあるため、これによって電極が溶融・損傷し、電流遮断ができなくなることがあります。したがって、電極への熱的負荷を低減する技術や、耐アーク性能に優れた材料開発などが重要な開発項目です。

私の職場には大電力試験場があり、数10kAの事故電流を模擬した試験を行うことができます。この大型の試験設備を利用して実物大での試験を行い、新設計の電極の遮断性能を評価したり、様々な計測技術を駆使して遮断時の基礎的な物理現象を調査したりすることが主な仕事です。開発品によっては、想定の遮断性能に達しないこともあり、原因究明に苦労することもありますが、その際は経験豊富な先輩や上司からアドバイスをもらいながら研究を行っています。また、研究所内には、開閉器以外にも様々な分野の研究をしている方が在籍していますので、例えば、新しい計測手法を始めたいときなどは、社内の専門家の方と相談しながら進めることも大きな強みです。このように、今の部署には、設備、人ともに研究開発しやすい環境が整っていると感じています。

大坊昂 写真

学生時代は原子力工学を専攻しており、核融合について研究していました。入社当時は電力系統の知識が不足していましたが、たとえば毎月のレポートの提出が課せられた技術者教育を受講することにより、その時は少々きつかったですが、多くの知識を身に着けることができました。若手技術者向けの教育が充実していることも、この会社の魅力の一つだと思います。

休日には職場の方たちとバーベキューをすることがあります。心身をリフレッシュすることで、効率的でメリハリのある仕事ができていると思います。これからも充実した研究活動ができるよう頑張ります。

(2019年9月執筆)

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