技術者の素顔
技術者の素顔技術者の思いをご紹介
使いやすさにも配慮し、役立つ技術を創出
パワーエレクトロニクス技術の発展によって、身の回りの家電製品から社会インフラにいたる、大小様々な電機システムの動力にモータが組み込まれるようになりました。なかでも、エアコンやエレベータ、鉄道のような電機システムでは、ダイナミックな出力変化や負荷変動に耐えうる、安定性の高いモータのドライブ制御技術が求められています。この他にも、モータドライブシステムの高効率化や、回転時に生じる振動の抑制、騒音の低減など、モータドライブ制御技術への期待は広がり続けています。そこで私は、モータの安定した可変速駆動や、振動の抑制を実現する、モータドライブ制御技術の開発に取り組んでいます。
モータドライブ制御の研究開発では、はじめに、シミュレーションツール上に制御ブロックや、数式を配置しながら、制御の仕組みを構築していきます。利用できる入力信号の種類や、制御ソフトウェアが動くプロセッサの処理速度など、様々な制約条件を考慮しつつ、要求性能を達成する制御を組み上げることはとても難しく、シミュレーション結果と向かい合いながら、思案に耽ることも多いです。その反面、自分のアイディアをもって、目標を達成する制御方式を立案できたときの満足感は、何ものにも代え難いもので、研究活動の大きなモチベーションになっています。モータドライブ制御技術を開発する上で、私はできる限り簡易に、制御パラメータを調整できる制御方式や、調整手順を提案することを心がけています。この心構えは、先輩から仕事を通じて受け継いだもので、性能だけを追い求めるのではなく、扱い易さにも配慮することが”役立つ技術”を生み出すために大切だと考えています。
立案した制御は、パラメータ設計や安定性の解析などの理論検討を経て、試作機を用いた効果検証に進みます。府中事業所には鉄道やエレベータの製造現場が身近にあり、製品と同じスケールの試作機で試験できる機会も多いです。自分の検討した制御で、数百kWクラスのモータが動く様子をみたときは、非常に興奮しましたし、企業での研究ならではの醍醐味と感じています。
学生時代にロボットコンテストに参加していた私は、その経験の中でモータドライブ制御に興味を持ち今の仕事に就きました。大学の研究テーマはモータドライブ制御ではありませんでした。専門知識は仕事を通じて先輩に親切に教えていただいたり、同僚と相談しながら次第に身につけていきました。
休日には職場の先輩や同僚、仕事で知り合った方と一緒に音楽ライブや旅行に行き、親睦を深めています。余暇にしっかりとリフレッシュすることで、研究への集中力を高めることができていると感じます。
(2019年8月執筆)