技術者の素顔

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位置センシング技術:屋内外を問わない測位技術により人や物の動きを分析 小川 純平 専攻:情報学

人の動きを把握する位置推定技術の開発

近年、スマートフォンを始めとするモバイル端末の普及に伴い、位置情報を活用したサービスが注目されています。例えば、工場内の作業者の位置を把握することで、作業者の移動距離や経路の分析が可能となり、より生産性の高い工場レイアウトを設計できます。位置を把握する方法には一般にはGPS1)が用いられますが、工場などの屋内環境では衛星からの電波の受信が難しいことが課題となっています。

そこで私は、屋内における位置の把握を可能とするために、作業者が携帯したモバイル端末の慣性センサの情報から人の位置を推定する技術の研究開発を行っています。この技術は慣性センサによって取得した加速度や角速度の情報から、人の1歩ごとの移動距離と移動方向を推定します。同じ距離、方向へ移動しても、人ごとの歩き方の違いや、モバイル端末の人への取り付け方法によってセンサから得られる情報は変化するため、様々な条件でデータを取得して推定方法を定め、これを検証する必要があります。ある条件でうまくいく方法が別の条件でうまくいかないなど、なかなか思った通りの結果が得られないことも多いですが、自身で立案した方法でうまく位置を推定できた時は非常に嬉しかったです。また、実際に開発した技術が適用された製品を目にすると、開発時の苦労が報われた思いになります。最近は、人だけでなく、ショッピングカートなどの車両の位置を推定する技術や、箱などの物の位置を推定する技術の研究開発を進めています。

小川純平 写真

学生時代は、扉の開閉や人の転倒などの事象を受信音から認識する研究を行っていました。学校での研究の中で人々の役に立つ技術を開発したいという思いが強くなり、この仕事を選びました。基礎的な研究から製品適用の支援まで幅広い範囲の業務に関わることができ、やりがいを感じています。業務の中で行き詰まったり、悩んだりすることもありますが、尊敬できるチームメンバーに相談しながら業務に取り組んでいます。

休日は、友人と謎解きイベントに参加したりしてリフレッシュしています。一つの解に対して、様々な考え方やアプローチを提案して試行する点や、情報共有が重要といった点が仕事にも役立っていると思います。また、仕事と休みのメリハリをつけることで、業務効率を向上できるように心がけています。

位置を把握したいという要望は工場に限らず様々な場所にあると思います。そういった要望を解決する技術を研究開発することで、人々の豊かな暮らしの実現に貢献していきたいと思います。


1) GPS(Global Positioning System):上空にある衛星からの電波を受信機で受けとり、自身の現在位置を知る衛星測位システム

(2019年8月執筆)

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