重症化予防ソリューション

東芝デジタルソリューションズ 重症化予防ソリューション担当者インタビュー

第2期データヘルス計画で目指すべき重症化予防とは?

平成30年度から始まる第2期データヘルス計画では、第1期データヘルス計画の実績をベースに、より実効性の高い保健事業の取り組みが求められる。しかし、悩みを抱えている健康保険組合は多い。そこで今回、第2期データヘルス計画の実行に向けた保健事業の課題や重症化予防の取り組みについて、東芝デジタルソリューションズで重症化予防ソリューションを担当する石川史朗氏、横里由紀子氏の両氏に話を聞いた。

第2期データヘルス計画の実効性ある保健事業の推進は、まだまだ課題がある


平成25年に閣議決定された「日本再興戦略」の1つである国民の健康寿命を延伸するための方法として、全ての医療保険者に対してデータヘルス計画が義務付けられた。

具体的には健診やレセプトデータ等の分析を行い、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」を作成・公表し、実際に事業を実施し、その評価までを行うというものだ。つまり、PDCAサイクルを継続的に回していくことが求められるということだ。

平成27年から29年の第1期データヘルス計画は、データ分析を基本とし、体制作りを含めて“身の丈に合った”保健事業を進めるという試行期間であった。一方、第2期データヘルス計画では、第1期の実績を元に、より具体的な保健事業施策と目標値を設定し、成果が求められることになる。しかし多くの健保組合がどのような保健事業施策をすべきか頭を悩ませているようだ。

この点について、東芝健康保険組合の保健・データヘルス事業担当を兼務している石川氏は次のように説明する。

「多くの健保組合様が第2期データヘルス計画の重点施策として、『特定健診・指導実施率の向上』と『糖尿病などの重症化予防』を掲げると思います。これらの施策にはデータ分析は必要不可欠ですが、それ以前に様々な課題があり、例えば、特定健診受診率(特に被扶養者)が低いため分析の元となる健診データが揃っていない健保組合様や、健保スタッフのスキル・リソース不足で手が回らない、重症化予防を取り組みたいがどのように取り組めばよいかわからない、そもそも保健事業予算がないなど、多くの課題があるのが実情です」(石川氏)。

また第2期と開始時期を同じくする第3期特定健康診査等実施計画では、特定健診・特定保健指導の実施率が厚生労働省より公表されるだけでなく、糖尿病等の重症化予防への取り組みも評価の指標となる。「こうした観点からも、実効性のある保健事業の取り組みは喫緊の課題で具体的な成果を出していく必要があります」(横里氏)。

「有効な保健事業に、どのように取り組んだらよいかわからない」という悩み


石川史朗氏

実際に有効な保健事業を進めるには、どうすればよいのだろうか。

「現在、多くの健保組合様が抱える共通の課題として、糖尿病など放置すれば重篤な事態をもたらす疾病の重症化予防があります。実際に有効にデータを活用して重症化予防に取り組んでいる健保組合様は非常に少なく、そもそも、どのように重症化予防に取り組めば良いかわからない、効果的な介入はどうしたら良いのかなど、お悩みの健保組合様が多いようです」と石川氏は現在の状況を説明する。

例えば、健診データの値が一定の基準を超えた人を抽出し、受診勧奨を行うといったケースだ。その対象者は既に通院している場合もある。

「対象者となった方にしてみれば、既に通院しているにもかかわらず、なぜ受診を促す連絡がくるのか、不信感・不快感を持ち、健保組合様へのクレームとなって跳ね返ってくることにもなる。そこでレセプトデータの活用という視点が必要になります」(石川氏)。

また、健診データとレセプトデータを突き合わせたうえで対象者を抽出するも、受診勧奨を行うだけというレベルに留まっていることも多い。

「この施策自体はデータヘルス計画に盛り込む内容として問題があるわけではありません。しかし第2期データヘルス計画では、具体的な成果を上げることが求められています。そのためには対象者を抽出して受診勧奨を一時的に行うだけでは不十分で、加入者の健康保持増進のためのPDCAサイクルを継続的に回していくことが何よりも重要です。そこでまず必要になるのが、“健診データとレセプトデータを突合する”という視点です」(石川氏)。

必要なのは「健診データとレセプトデータの突合」


健診データとレセプトデータを突き合わせることで、糖尿病に罹患していながら未治療、あるいは治療を中断している人を“ハイリスク者”として抽出し、さらに今後の効果的な保健事業の立案へとつなげていくことが可能となる。

東芝デジタルソリューションズの重症化予防ソリューションは、効果のある重症化予防を実現するためのデータ分析とコンサルティングを提供することで、糖尿病ハイリスク者を確実に抽出すると共に、継続的で効果的な重症化予防のPDCAサイクルをトータルに支援する。

「私たちがご提供する重症化予防ソリューションでは、はじめにお客さま(=各健保組合様)が保有する健診データとレセプトデータをお預かりして独自の突合データベースを構築します。そしてお客さまの要望に応じた抽出条件により糖尿病ハイリスク者を抽出します。併せて実績のある受診勧奨業者をご紹介します」(石川氏)。

紹介する受診勧奨業者の中には、専門医のネットワークを持ち治療予約まで行う業者もあり、早期治療開始が期待できる。

  • 健診データとレセプトデータを突合して、ハイリスク者を的確に絞り込む

http://www.toshiba-sol.co.jp/gov/hokenjigyoshien/より

ハイリスク者の抽出や治療確認などの作業負荷も一つの課題


「健診データとレセプトデータを突合して糖尿病のハイリスク者を抽出する作業を人手で行うことは困難です。加入者数が少ない健保組合様なら、まだ何とかなるかもしれませんが、数万、数十万以上の規模となる健保組合様では、非常に大変です。そこでデータ分析ツールを利用するという方法が考えられますが、それには多額の費用が必要です。ツールベンダは、分析結果による改善施策までサポートしてくれるわけではありません。また、健保組合様独自の分析条件などに対応するには追加費用が発生するケースもあります。その結果、分析ツールを導入したものの、うまく使いこなすことができていないとか、追加費用がかかるという健保組合様も散見されます」(石川氏)。

横里由紀子氏

「例えば現在、レセプトデータは電子化されていますが、その一部は紙レセプトがPDF化されているだけで、そのまま分析できる状態にはなっていません。データ分析に利用するためには、そこからさらにテキスト化する必要があります。それはまさに健保組合様の作業負荷の増加に直結する部分ですが、私たちの重症化予防ソリューションではPDFファイルもそのままご提供いただいて全く差し支えありません」(横里氏)。

重症化予防ソリューションでは、テキスト化されたデータだけでなく、画像レセプトや非定型データなど、あらゆるデータを分析対象とすることができる。また、アウトソーシングソリューションのため、高額なシステム投資とデータ抽出・分析などの作業負荷を低減することができる。

重症化予防は「評価と改善」が重要


第2期データヘルス計画への取り組みで重要となるのは、効果的な保健事業のPDCAサイクルを継続的に回して、具体的な成果を上げていくことだ。

糖尿病重症化予防においても、1~2年で結果を出すのは難しく、毎年の改善活動をどう進め継続するかが重要だ。第1期では、健診データのみを使用した抽出でも受診勧奨まで行えば、重症化予防に取り組んでいることになった。しかし、第2期ではそのハイリスク者が治療開始したか、医療費が下がったのか、などの結果を示さなければならない。

費用と作業負荷の低減だけでなく、この点においても、重症化予防ソリューションは非常に有効な手段となる。

「重症化予防を実施するにあたり、PDCAサイクルのP(計画)とD(実行)まではできたものの、その後のC(評価)とA(改善)までは手が回っていないという健保組合様が多いようです。要は、受診勧奨はしたものの、その結果を分析・評価し、翌年度どのように改善をすれば良いかわからないということです。そこで私たちの重症化予防ソリューションでは、ハイリスク者の抽出結果に基づく保健事業立案だけでなく、受診勧奨の結果を基に翌年度の改善提案までお手伝いさせていただきます」(石川氏)。

具体的にはハイリスク者の集計データや経年推移、合併症リスクなどの分析統計データ、将来の糖尿病医療費推移、重症化予防の計画・施策立案を報告書として提供する。また、受診勧奨結果のデータを提供していただければ、評価に基づき翌年度の改善施策を提案する。

「多くの糖尿病ハイリスク者は高血圧症や脂質異常症のリスク者でもあるため、食生活含めた生活習慣を見直していただくような指導や情報提供などもご提案させていただきます」(横里氏)。

「実際に導入頂いた健保組合様からは、抽出・分析だけでなく、評価・改善の提案があり、PDCAサイクルの重症化予防をワンストップで支援してくれて助かるという声を頂いています」(石川氏)。

今後の展望


「今後は企業健保に加え、協会けんぽや国保、共済組合様にも展開していきたいと考えております。また、東芝グループには、ゲノム解析や特定健診管理システムなどを提供するグループ会社があるため、グループの力を結集し、より厚みのある事業にしていきたいと考えています」(石川氏)。

現在主流となっているのは糖尿病の重症化予防であるが、東芝デジタルソリューションズの重症化予防ソリューションは、高血圧症や脂質異常症のハイリスク者も抽出することが可能である。今後は歯科やガン2次検診予防にも対応し、より広範囲にお客さまを支援していきたいと考えている。

ライタープロフィール

ライター:レッドオウル 西山毅

関連商品サイト