TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017イベントレポート
「東芝グループが目指す物流IoTとは?」
更新日:2017年12月11日
去る2017年11月9日(木)~11月10日(金)に東京・お台場で開催され、大盛況のうちに終了した「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017」。製造業をはじめ、様々な領域へのIoTソリューションが結集する中、いま話題の物流業界に関する最新ソリューションも数多く出展された。今回は同時開催されたミニセミナーの様子とともに、多種多様な展示内容をお伝えする。
危機に直面する物流業界。IoT活用による対策が早急に求められる
フェア当日、各出展ブースと同様に多くの人の関心を集めていたのが、ミニセミナー会場。様々なソリューションのみどころを紹介するこのセミナーで、物流業界の領域からは東芝デジタルソリューションズの藤岡健太郎氏、鞠谷達士氏が登壇。「東芝の目指す物流」と題して、物流業界が抱える課題、東芝グループが提供するソリューションの紹介、および東芝グループの目指す物流IoTの未来をプレゼンテーションした。
はじめに、「物流業界はいま、危機的状況に瀕している」と話す鞠谷氏。大きく2つのポイントを挙げてその要因を解説した。
「ひとつは、ネット通販がさかんになったことによる小口配送の増加。たくさんの荷物を一箇所に配送する大口配送に比べて、小口配送は少ない荷物を多方面に運ぶため、倉庫内ではピッキング作業や仕分け作業の負担が増えています。また、小口配送に対応するためには多くのトラックが必要なので、トラックの平均積載率が40%程度まで下がっているというデータもあります。これが、物流会社にとってコスト面の大きな負担となっているのです。
もうひとつの要因が、労働力不足です。トラックドライバーや倉庫作業者といった物流従事者は、全産業の平均以上のペースで高齢化が進んでおり、加えて、過酷な労働環境のわりに低賃金であるイメージから、物流業界を目指す若者も減っていると言われています」(鞠谷氏)
このように、限られた労働力でより多くの荷物を運ぶためには、業務の効率化が欠かせない。倉庫内で言えば、人がやっている作業の生産性向上と、人がやる必要のない作業の自動化が求められているのだ。これを実現する手段として注目されているのが、IoTの活用である。
「ひとつは、ネット通販がさかんになったことによる小口配送の増加。たくさんの荷物を一箇所に配送する大口配送に比べて、小口配送は少ない荷物を多方面に運ぶため、倉庫内ではピッキング作業や仕分け作業の負担が増えています。また、小口配送に対応するためには多くのトラックが必要なので、トラックの平均積載率が40%程度まで下がっているというデータもあります。これが、物流会社にとってコスト面の大きな負担となっているのです。
もうひとつの要因が、労働力不足です。トラックドライバーや倉庫作業者といった物流従事者は、全産業の平均以上のペースで高齢化が進んでおり、加えて、過酷な労働環境のわりに低賃金であるイメージから、物流業界を目指す若者も減っていると言われています」(鞠谷氏)
このように、限られた労働力でより多くの荷物を運ぶためには、業務の効率化が欠かせない。倉庫内で言えば、人がやっている作業の生産性向上と、人がやる必要のない作業の自動化が求められているのだ。これを実現する手段として注目されているのが、IoTの活用である。
藤岡氏は、「既にRFIDを用いた検品や棚卸し作業などが一般的に認知されつつありますが、物流側に求められる管理レベルも徐々に上がっており、IoT活用の範囲は広がっています。たとえば、パレットやカゴ車といった輸送機材がどの拠点にどの数あるかを把握する所在管理や、トラック内やボックス内の温度変化を捉えて、荷物の周辺温度が維持されていることを把握する輸送温度の管理などが必要になってきています」と語った。
輸送品質のクラウド管理や、ロボットによる作業の自動化など、
多種多様なソリューションが集結!
東芝グループは上記で述べられたような社会的な課題を解決すべく、物流現場の様々なシーンに活用可能なソリューションを提供している。今回のフェアに出展したソリューションから、ポイントを絞って紹介しよう。
まず、輸送環境品質の維持・向上を支援する「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」。これは、温度データが取得できるセンサーデバイスをトラック庫内に取り付けて、運転日報データと関連付けることで、温度変化が起きた配送先を特定するクラウドサービスだ。スマートフォン上で動作するアプリケーションでセンサーデバイスからのデータ読み取りとクラウドへの送信を実行し、ウェブ入力した運転日報データとの関連付けデータ処理をクラウド上で行う。車両に依存しないデータ収集方法なので、導入のハードルが低く、全社展開も比較的容易だ。
同様に、荷物の温度管理を担うソリューションとして、「クールボックス無線管理ソリューション」がある。これは、クールボックスの温度データの収集や、クールボックスの所在もリアルタイムで把握できるサービス。異常が発生した際は瞬時にアラートを送信し、どの倉庫のどの場所にあるクールボックスに異常が起きているのかを知らせてくれる。また、所在管理をすることで、輸送機材の滞留情報も分析。同じ拠点に滞留しているクールボックスを見つけ、足りていないところに回すなど、輸送機材の適切な運用にも役立てられるのだ。
まず、輸送環境品質の維持・向上を支援する「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」。これは、温度データが取得できるセンサーデバイスをトラック庫内に取り付けて、運転日報データと関連付けることで、温度変化が起きた配送先を特定するクラウドサービスだ。スマートフォン上で動作するアプリケーションでセンサーデバイスからのデータ読み取りとクラウドへの送信を実行し、ウェブ入力した運転日報データとの関連付けデータ処理をクラウド上で行う。車両に依存しないデータ収集方法なので、導入のハードルが低く、全社展開も比較的容易だ。
同様に、荷物の温度管理を担うソリューションとして、「クールボックス無線管理ソリューション」がある。これは、クールボックスの温度データの収集や、クールボックスの所在もリアルタイムで把握できるサービス。異常が発生した際は瞬時にアラートを送信し、どの倉庫のどの場所にあるクールボックスに異常が起きているのかを知らせてくれる。また、所在管理をすることで、輸送機材の滞留情報も分析。同じ拠点に滞留しているクールボックスを見つけ、足りていないところに回すなど、輸送機材の適切な運用にも役立てられるのだ。
続いて紹介したいのが、ロボットを活用して物流プロセスの省力化を実現する「物流自動化ソリューション」。当日展示されていたのは、ピッキング作業を自動化するロボットだ。これは、荷台にバラ積みされた荷物の形状や積載状態を瞬時に判断し、適切な順番でピッキングしてくれるもの。高性能な3Dカメラとカラーカメラの2つを用いて画像認識しているため、事前のティーチングは不要で導入できるのが特徴だ。
また、今回のフェアでは展示がなかったが、ミニセミナーでは倉庫管理の見える化を実現するソリューションとして「LADOCSuite®」も紹介。
「倉庫内の入出荷作業や在庫管理といった基本的な倉庫管理システムの機能に加えて、トラックごとの荷待ち時間の把握や、出荷作業の倉庫全体での見える化ができるといった特徴があります。また、各種分析機能も備えているので、物流現場から経営側へ情報発信もできます」と、藤岡氏はポイントを説明した。
「倉庫内の入出荷作業や在庫管理といった基本的な倉庫管理システムの機能に加えて、トラックごとの荷待ち時間の把握や、出荷作業の倉庫全体での見える化ができるといった特徴があります。また、各種分析機能も備えているので、物流現場から経営側へ情報発信もできます」と、藤岡氏はポイントを説明した。
東芝アナリティクスAI「SATLYS™」の活用で、
倉庫内業務の生産性向上に挑む!
近年はあらゆる業界でAI技術の導入が話題となっており、物流業界にもその波は及びつつある。東芝デジタルソリューションズは、2017年10月30日に東芝アナリティクスAI「SATLYS™」をリリース。本フェアにも出展し、多くの来場者で賑わっていた。
出展ブースの担当者によると、同AIの特徴は大きく3つあるという。
「まず、大規模なデータでも扱える点。既に東芝メモリの四日市工場で半導体製品の歩留まり監視にAIが活用されていますが、日々量産される何十億レコードというデータを蓄積し、AIによる解析が可能になっています。
次に、少数の学習データでも分析モデルが作れる点。たとえば異常検知のAI活用だと、お客様は異常なデータを少ししか持っていない場合が多いのですが、その少量のデータをもとにAIにより大量の学習データを生成し、微妙な違いも見分けられるようになるのです。
3つめの特徴は、異常と判断したときに、どこに注目して判断したのかを説明することができる点。従来のAIだと、異常と判断した理由を答えられないものも多かったので、そこに着目して開発しました」(ブース担当者)
「SATLYS™」は、東芝グループの物流ソリューションにおいても活用が促進されている。そのひとつが、「作業行動分析ソリューション」だ。
出展ブースの担当者によると、同AIの特徴は大きく3つあるという。
「まず、大規模なデータでも扱える点。既に東芝メモリの四日市工場で半導体製品の歩留まり監視にAIが活用されていますが、日々量産される何十億レコードというデータを蓄積し、AIによる解析が可能になっています。
次に、少数の学習データでも分析モデルが作れる点。たとえば異常検知のAI活用だと、お客様は異常なデータを少ししか持っていない場合が多いのですが、その少量のデータをもとにAIにより大量の学習データを生成し、微妙な違いも見分けられるようになるのです。
3つめの特徴は、異常と判断したときに、どこに注目して判断したのかを説明することができる点。従来のAIだと、異常と判断した理由を答えられないものも多かったので、そこに着目して開発しました」(ブース担当者)
「SATLYS™」は、東芝グループの物流ソリューションにおいても活用が促進されている。そのひとつが、「作業行動分析ソリューション」だ。
倉庫作業者の手首に活動量計を付けるだけで、作業者の動きを推定。取得した作業実績データを倉庫管理システム(WMS)のピッキング実績と比較・分析することで、遅延した作業に対して「棚の置き方が悪い」「荷物が取り出しにくい」「札が見えにくい」といった要因の客観的な分析に役立てられる。
「現状はビデオ撮影で行動分析をしている物流会社も多いのですが、それだとデータを作るだけで時間がかかり、リアルタイムに改善策を打ち立てることがなかなかできません。同ソリューションなら、作業者に負荷をかけることなく、大量のデータを簡単に取得・分析できて、改善策を早めに現場へと反映させることができます」とブース担当者は語る。
この活動量計で取得したデータを分析し、どんな行動をしているのかを推定するためのツールとして、アナリティクスAI「SATLYS™」が活用されているのだ。
同ソリューションは検証版をグループ内でテストしている段階だが、日本ロジスティクスシステム協会主催の「2017年度ロジスティクス大賞」で技術活用賞を受賞するなど、業界内でも注目を集めており、製品化に期待がかかっている。
同ソリューションは検証版をグループ内でテストしている段階だが、日本ロジスティクスシステム協会主催の「2017年度ロジスティクス大賞」で技術活用賞を受賞するなど、業界内でも注目を集めており、製品化に期待がかかっている。
東芝グループが培ってきたノウハウを用いて、
人の労働力と自動化IoTのベストマッチを図る
ミニセミナーの終盤では、この先東芝グループが目指す物流のあり方についての言及があった。「ファクトリー・オートメーションなど、自動化の歴史が長い製造業に比べると、物流業はまだ、現場作業者の経験と勘に頼った部分が多いと言われています」と鞠谷氏が述べるように、テクノロジーを用いた物流現場の自動化は、まだまだ導入の余地があると考えられている。課題は山積みである一方で、今こそ変革のチャンスとも言えるだろう。
鞠谷氏は、今後物流業界がどのように進化していくか、3つのステップに分けて展望を解説。
ひとつめは、人間がやる必要のない作業の自動化。および、IoT活用による、人間がやるべき作業の生産性向上。現在の物流業界はこの段階にあると言える。
ステップ2では、人間がやる作業の自動化が拡大していくと考えられている。そして、ステップ3で到達するのが、機械による完全自動化。これはまだ未来の姿ではあるものの、仕分けや入出荷など現場の実務を全てロボットが担う時代が来るのかもしれない。
藤岡氏は、「私たちの役割としては、今後自動化領域が拡大していくステップ2において、いかに人間の労働力と自動化IoTのベストマッチを実現するかにあると考えています。これまでに自動化IoT事業を通して培ってきたノウハウを結集して、お客様に合わせた最適な提案をしていきたいです」と、東芝グループが目指すべき指針を語り、ミニセミナーを締めくくった。
鞠谷氏は、今後物流業界がどのように進化していくか、3つのステップに分けて展望を解説。
ひとつめは、人間がやる必要のない作業の自動化。および、IoT活用による、人間がやるべき作業の生産性向上。現在の物流業界はこの段階にあると言える。
ステップ2では、人間がやる作業の自動化が拡大していくと考えられている。そして、ステップ3で到達するのが、機械による完全自動化。これはまだ未来の姿ではあるものの、仕分けや入出荷など現場の実務を全てロボットが担う時代が来るのかもしれない。
藤岡氏は、「私たちの役割としては、今後自動化領域が拡大していくステップ2において、いかに人間の労働力と自動化IoTのベストマッチを実現するかにあると考えています。これまでに自動化IoT事業を通して培ってきたノウハウを結集して、お客様に合わせた最適な提案をしていきたいです」と、東芝グループが目指すべき指針を語り、ミニセミナーを締めくくった。
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