府中事業所いきもの図鑑
府中市は、東京都のほぼ中央に位置する都市です。たくさんの川や湧水、公園がある、自然環境に恵まれたエリアにあります。
その府中市にあり、設立後70年になる府中事業所に、どんな生き物が生息しているか調べてみました。
府中エリアの紹介
府中事業所のある北多摩地区を見てみると、北を流れる野川、南を流れる多摩川の間に、大きな緑地が点在しています。今ある緑の「点」を「線」にしていく活動が望まれます。
事業所内に、武蔵台公園に多いクヌギやコナラなどの樹木を植えることにより、緑地の連続性が高まり、野川と多摩川を行き来する生き物が増え、地域の生態系が向上することを期待しています。
府中事業所の紹介
府中事業所は約70ヘクタール、東京ドーム14個分の広さがあります。
草地が多く、ショウリョウバッタモドキなど、草地性の昆虫が多く見られるという特徴があります。
また、ウマノスズクサがいたるところに生えており、ジャコウアゲハの繁殖が確認されました。
府中事業所の生態系ピラミッド
食べる・食べられるというつながりを、「食物連鎖」といい、生き物は、このかかわりあいの中で生きています。
また、生産、消費、分解を繰り返す生物圏の状態を「生態系ピラミッド」として図式化することができます。この生態系ピラミッドは、底辺に行けばいくほど個体数が多くなることでバランスが保たれており、どこかでバランスが崩れると、次々と上位の生物に影響し、人間の生存基盤である生物圏全体のバランスを崩す作用となる可能性があります。
府中事業所の生態系ピラミッドの頂点に立つのは、哺乳類のタヌキやハクビシン、ハヤブサなどの猛禽類です。
府中事業所いきものガイド
府中事業所において、2011年10月から一年間、構内の生物種調査を行った結果、植物368種、哺乳類6種、鳥類41種、爬虫類2種、昆虫類473種、合計890種の生き物が確認されました。
東京都レッドデータ該当種は28種(植物3種、鳥類16種、爬虫類2種、昆虫7種)が確認され、府中エリアの生物多様性ポテンシャルの高さ、都会における企業緑地の可能性を認識することとなりました。
府中事業所内の生態系の頂点に立つのは、タヌキやハヤブサです。
タヌキは、一年を通し、夜間に現れます。
ハヤブサやハイタカなどの猛禽類は、秋・冬に多く見られ、食痕も多く見つかりましたが、春・夏にはあまり見かけません。
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鳥類は、41種を確認。ムクドリ、ヒヨドリ、オナガ、スズメ、シジュウカラ、メジロ、ハクセキレイなど、都市部に適応している小鳥を多くみかけます。野川・多摩川などの河川が近いことから、構内上空をコチドリやキアシシギが飛ぶ姿も見られました。
希少種では、ハヤブサ、ハイタカ、サシバなどの猛禽類のほか、ウグイス、ヒバリ、セグロセキレイ、モズ、エナガ、イカルが確認されています。
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昆虫類は473種を確認。バッタやハチなどの草地性の種と、カネタタキなど植栽樹木に生息する種が多いのが特徴です。東京都レッドデータ該当種が6種確認されており、特に絶滅危惧Ⅱ類種のショウリョウバッタモドキは確認地点数、生息数とも多く、府中事業所を代表する昆虫と言えます。
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蝶類は20種が確認されています。ウマノスズクサ(絶滅危惧Ⅱ類)を食草とするジャコウアゲハについては構内での繁殖が確認されており、ショウリョウバッタモドキとともに府中事業所を代表する昆虫です。
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- ジャコウアゲハ(オス成虫)
- ジャコウアゲハ(メス成虫)
- ジャコウアゲハ(交尾)
- ジャコウアゲハ(卵)
- ジャコウアゲハ(幼虫)
- ジャコウアゲハ(蛹)
- クロアゲハ
- ナミアゲハ(成虫)
- ナミアゲハ(幼虫)
- アオスジアゲハ
- ツマグロヒョウモン(オス)
- ツマグロヒョウモン(メス)
- ツマグロヒョウモン(翅・裏)
- キタテハ
- ヒメアカタテハ
- ルリタテハ
- アカボシゴマダラ(春型)
- アカボシゴマダラ(夏型)
- コミスジ
- ヤマトシジミと食草のカタバミ
- ヤマトシジミ(オス)
- ヤマトシジミ(メス)
- ヤマトシジミ(メス・春秋型)
- ベニシジミ
- ツバメシジミ
- ウラナミシジミ
- ウラナミアカシジミ
- ウラギンシジミ
- イチモンジセセリ
- キマダラセセリ
- モンシロチョウ
- モンキチョウ
- キタキチョウ
- ニホンミツバチ
- セイヨウミツバチ
- キンケハラナガツチバチ(メス)
- ヒメハラナガツチバチ(オス)
- ヒメハラナガツチバチ(メス)
- サトジガバチ
- アメリカジガバチ
- コアシナガバチ
- コガタスズメバチ
- ハグロハバチの幼虫とスイバ
- シオヤアブ
- エサキモンキツノカメムシ
- コアオハナムグリ
- シロテンハナムグリ
- ダンダラテントウ
- ナナホシテントウ
- ナミテントウ(「黒地に二紋」タイプ)
- ナミテントウ(「赤地に黒紋」タイプ)
- コカマキリ
- オオカマキリ
- ハラビロカマキリの卵のう
2012年3月に小さな水辺ビオトープを設置し、その後半年間、日向を好むトンボがひっきりなしに訪れました。写真の10種類の他、ノシメトンボ、オニヤンマと、合計12種類を確認。ヤゴやその抜け殻も多数確認しました。
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植物は368種が確認されましたが、現状では手入れされた修景緑地がほとんどで、特徴的な自然の植生はあまり見られません。
東京都レッドデータ該当種は3種確認されましたが、うちウマノスズクサは構内のいたるところで見られます。タンポポは、セイヨウタンポポに押され減りつつあるカントウタンポポが多数見られることが特徴です。
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尚、「絶滅危惧Ⅱ類」などの希少性に関する表示は、東京都レッドリストを根拠としています。
めざせ!府中のいきものマスター
府中事業所に生息するいきものの写真集「府中事業所いきものガイド」を作成しました。環境教育の資料として活用しています。
ビオトープ管理士によるエッセイ
2012年9月から12月まで、東芝公式Facebookに連載したエッセイを一挙掲載します。
北多摩地区の自然を愛するビオトープ管理士 新里達也さんが、ビオトープや生物多様性について考えるヒントを語ってくれます。
リンク
東芝公式YouTubeでは、府中エリアに生息する生き物や、府中エリアを代表する里山や湿原の風景をお楽しみいただけます。
YouTubeにて公開中の動画
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<府中事業所>
- Creating Green Space 緑のネットワークづくりをめざして
一年間に渡り撮影した、府中エリアの総集編です!