ニュースリリース

大規模組合せ最適化を高速に実行するソフトウェア「シミュレーテッド
分岐マシン」をAWS Marketplace上に公開 ~ さまざまな分野での社会課題の解決に向けて実証実験を開始 ~

2019年7月17日

東芝デジタルソリューションズ株式会社

 東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、当社)は、株式会社東芝が2019年4月に発表した技術「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」注1を用いたソフトウェア「シミュレーテッド分岐マシン(Simulated Bifurcation Machine。以下、SBM)」を Amazon Web Services Inc.が運営するAWS Marketplace上で全世界に向け公開しました。当社は今後、SBMを用いてさまざまな分野での社会課題解決に向けて実証実験を行ってまいります。なおAWS Marketplace上での公開に伴い、当社は共同研究、共同開発を行うパートナー企業、大学、研究機関を広く募集し、連携を行ってまいります。

 物流経路の最適化、金融ポートフォリオの最適化、創薬のための分子設計など、さまざまな分野において、膨大な組合せパターンの中から最良のものを選び出す「組合せ最適化問題」が社会課題となっています。この問題は、膨大な計算を必要とすることから従来の手法では解くことが困難で、扱える問題の大規模化や解を見つけるまでの時間の短縮に課題があることです。

 今回、当社がサービス提供を開始するSBMは、既存の計算機を使用し、複雑で大規模な問題の高精度な近似解(良解)を短時間で得ることを可能とするソフトウェアです。ソフトウェアであることを活かし、従来のイジングマシン注2では扱うことができなかったような複雑で大規模な問題を解くことが可能になります。さらにGPUを活用することで計算の高速化も実現します。

 このSBMをAWS Marketplace上で、2019年10月末までの期間限定でPoC(概念検証、proof of concept)版として無償公開します注3。PoC版は、最大10,000変数のイジング問題注4、MAX-SAT問題注5、およびMAX-CUT問題注6に対応しています。

 あわせて、この期間に、当社は金融・創薬・遺伝子工学・物流・AIを始めとするさまざまな領域での「組合せ最適化問題」の解決をめざすパートナー様を募集し、PoCの実施およびSBMを活用したアプリケーション開発を進めてまいります。

 今後当社は、さらに大規模な問題へのSBMの適用を目指して開発を進めるとともに、事業化に向け、2019年中にパブリッククラウド上でのSBMによるクラウドサービスの提供開始を目指します。

AWS MarketplaceのSBMプロダクトページ(英語サイト)

https://aws.amazon.com/marketplace/pp/B07T8STKZR/ (Amazon Web Services, Inc.)

SBM紹介サイト ※7月下旬開設予定。こちらからも上記AWS Marketplaceへのアクセスを可能とする予定です。

日本語サイト:https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/ai-iot/sbm.html
英語サイト   :https://www.global.toshiba/ww/products-solutions/ai-iot/sbm.html



今回の発表に際し、現在連携中のパートナー様から以下のコメントをいただいております。

<株式会社フィックスターズ 代表取締役社長 三木 聡様>

東芝デジタルソリューションズ株式会社様のSBMによる実証実験に、弊社がパートナーとして協業させていただけることを嬉しく思います。特に、遺伝子、金融、物流などの領域での 「大規模かつ高速化を必要とする組み合わせ最適化問題」 のアプリケーション開発について、弊社がこれまで培ってきた量子コンピューティング技術の経験と知見を用いて貢献致します。

<株式会社Nextremer 代表取締役 CEO 向井 永浩様>

株式会社Nextremerは、東芝デジタルソリューションズ株式会社様のSBMがAWS Marketplace上でサービス公開されますこと、心より歓迎致します。
これにより、「組合せ最適化問題」にかかる様々な課題解決にSBMが活用されることを期待しております。
当社は、東芝デジタルソリューションズ株式会社様との連携を今後より一層強化し、「人とテクノロジーの協働」をテーマとした社会課題の解決に貢献していく所存です。

  • 注1 ・2019年04月20日 研究開発ライブラリ(株式会社東芝)
     世界最速・最大規模の組合せ最適化を可能にする画期的なアルゴリズムの開発について
    https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/19/1904-01.html
    ・Science Advances 19 Apr. 2019, Vol. 5, no. 4, eaav2372(英語サイト)
    https://advances.sciencemag.org/content/5/4/eaav2372 (American Association for the Advancement of Science.)
  • 注2 イジングマシン:イジングモデル(統計力学において、スピンを持つ原子の格子によって磁性体の磁化の振舞いを説明するモデル)の形式に変換した組合せ最適化問題を解くハードウェアやソフトウェア。
  • 注3 利用に際しては、AWSの仮想マシン(インスタンス)を使用するための契約(有償)が必要。
  • 注4 イジング問題:組合せ最適化問題をイジングモデルに変換した問題のこと。イジングモデルについては注2参照。
  • 注5 MAX-SAT問題:最大充足割当問題のこと。複数の命題論理式が与えられたとき、それに含まれる変数の値を偽(False) あるいは真(True) のどちらかに定め、「真」となる命題論理式の数が最大になるような解を求める問題。
  • 注6 MAX-CUT問題:最大カット問題のこと。複数のノード(頂点)と、ノードを結ぶエッジ(辺)からなるグラフにおいてノード群を2つのグループに分割する際に、両グループに属するノード間に張られたエッジの重みの和が最大となる分け方を求める問題。
  • * Amazon Web Services Inc.、AWS、AWS Marketplaceは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
  • * その他、記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。

以上