製造工程データを一元管理で見える化しデータの信頼性も確保
DXを加速しスマートファクトリーを実現する「Meister Factory シリーズ」
ファインセラミックスや蛍光材料応用製品、磁性材料部品などの部品・材料の開発から販売までを手がける東芝マテリアル株式会社。同社では、主に紙で記録していた検査データや工程データをデジタル化し、品質監査への対応を高度化しながら、ものづくりにおけるトレーサビリティを実現する環境づくりを推進している。そのための基盤として採用したのが、東芝デジタルソリューションズが提供するものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」だ。スマートファクトリー実現に貢献するソリューションの導入経緯とそのポイント、効果について伺った。
Before
検査データや工程データなど、あらゆる情報が手書きの紙ベースで記録・保管されていたため、工程記録や品質データの記録を確認する際に探す手間と時間がかかり、現場の負担も大きかった。また品質管理の観点からもデータの正確性や改ざんといったリスクへの対応が早急に求められていた。
After
Meister Factory シリーズ導入後は、各工程で発生する工程データや検査データなど散在していた情報を一つのデータベース上で統合管理。検査成績書などの自動発行、トレーサビリティ調査、歩留まり分析などが可能になり、スマートファクトリーの実現への道筋を確かにした。
IoTや機械学習などを積極的に導入し、製造現場のデジタル化を推進
2003年に株式会社東芝の材料部品事業部が分社独立し、設立した東芝マテリアル株式会社。1909年に日本で初めて白熱電球用のタングステンフィラメントの製造を開始して以来、独自の技術を駆使し時代のニーズに応じて、産業分野、輸送インフラ、宇宙など幅広い分野を支える製品を生産している。
同社では現在、製造現場のデジタル化に向けたさまざまな施策を実施している。特に部品材料の分野では、従来の経験則に基づくものづくりからの脱却を目指し、IoTや機械学習などを積極的に導入しながら、ユニークな材料開発、最適プロセスの探究、独自技術による設備設計の合理化に取り組んでいる。「自動車関係や医療関係など高い品質が求められるお客さまが多いことから、デジタルによって製造プロセスを可視化するとともに、機械学習などのAI技術をものづくりに応用する礎として現場のデジタル化を進めています」とITサービスマネージャで生産技術部 IT推進担当 グループ長の河野 誠司氏は説明する。
生産技術部 IT推進担当 グループ長
河野 誠司氏
データの信頼性向上とリスク回避で業務効率化を
もともと製造の現場では紙をベースとした文化が根づいており、検査データや工程データなどあらゆる情報が手書きの紙や表計算ソフトなどで記録・保管されていた。「得られた検査データから最終的な検査成績書を作成してお客さまにご提供するのですが、製造する品種によって項目などの粒度が異なるため、紙から表計算ソフトに情報を転記し手作業でつくり上げていました」と河野氏は振り返る。
品質管理の観点から、紙ベース文化における誤記や改ざんリスクへの対応が早急に求められていた。「手書きやデータ転記に伴う誤記録をはじめ、データへの信頼性とともに、改ざんのリスクへの早急な対応が求められていたのです」と同部 IT推進担当 主務の糸賀 達規氏は説明する。また、効率的なものづくりに向けた環境整備も併せて求められた。「なにか問題が発生した場合など、紙の記録を探しだして履歴を追いかけることに大変な手間がかかっていました。デジタル化することで、発生した問題への対応の効率化も課題の一つでした」と糸賀氏。こうしてリスク回避と業務の効率化を目指し、同社は新たな環境整備に向けたプロジェクトをスタートした。
生産技術部 IT推進担当 主務
糸賀 達規氏
製品ごとのデータ管理と見える化を実現できる柔軟性
材料部品製造部 蛍光体部品技術担当 参事
林 誠氏
新たな環境づくりに向け、製品数が多くパッケージでは対応できないという見解もあり当初はスクラッチでの一からの開発を検討したが、結局は属人化してしまい、維持と改修が難しいといった課題も見えた。長く運用していくにはメンテナンスや保守も考慮しMeister Factory シリーズをベースとして、ユーザーインターフェイス部分をスクラッチ開発するというハイブリッド方式を採用することとなった。
実際に要件定義を進めていく過程で、Meister Factory シリーズに備わっている、粒度が異なるさまざまなデータやIoTデータを関連づけて可視化できる、ものづくり情報プラットフォーム「Meister DigitalTwin™」や、不良率の低減や稼働率の向上、トレーサビリティ、在庫の適正化など標準的な分析機能が最初から備わった、ものづくりIoTデータ活用ソリューション「Meister Apps™」などを駆使することで、同社が挙げる要件にうまく適用できることが明らかになった。
「これまでも手間と時間をかければデータを時系列につなげることはできましたが、Meister Appsの標準機能であるトレーサビリティならば製品がいつ、どの工程を通過し、どのようにつくられたのかを可視化することができます。こうした機能があらかじめパッケージ化されていて、現場でもイメージしやすい点は大きな魅力でした」と糸賀氏は語る。短期間で現場の見える化が可能なMeister Factory シリーズはまさに最適だった。「現場に受け入れてもらいやすいよう、従来環境に近い形でデータ投入できるのも理想的でした。また、製品ごとの違いによってカスタマイズできる余地があるため、我々にとって導入しやすいと考えたのです」と語るのは材料部品製造部 蛍光体部品技術担当 参事の林 誠氏だ。
新たな環境づくりに向け、製品数が多くパッケージでは対応できないという見解もあり当初はスクラッチでの一からの開発を検討したが、結局は属人化してしまい、維持と改修が難しいといった課題も見えた。長く運用していくにはメンテナンスや保守も考慮しMeister Factoryシリーズをベースとして、ユーザーインターフェイス部分をスクラッチ開発するというハイブリッド方式を採用することとなった。
実際に要件定義を進めていく過程で、Meister Factoryシリーズに備わっている、粒度が異なるさまざまなデータやIoTデータを関連づけて可視化できる、ものづくり情報プラットフォーム「Meister DigitalTwin™」や、不良率の低減や稼働率の向上、トレーサビリティ、在庫の適正化など標準的な分析機能が最初から備わった、ものづくりIoTデータ活用ソリューション「Meister Apps™」などを駆使することで、同社が挙げる要件にうまく適用できることが明らかになった。
「これまでも手間と時間をかければデータを時系列につなげることはできましたが、Meister Appsの標準機能であるトレーサビリティならば製品がいつ、どの工程を通過し、どのようにつくられたのかを可視化することができます。こうした機能があらかじめパッケージ化されていて、現場でもイメージしやすい点は大きな魅力でした」と糸賀氏は語る。短期間で現場の見える化が可能なMeister Factoryシリーズはまさに最適だった。「現場に受け入れてもらいやすいよう、従来環境に近い形でデータ投入できるのも理想的でした。また、製品ごとの違いによってカスタマイズできる余地があるため、我々にとって導入しやすいと考えたのです」と語るのは材料部品製造部 蛍光体部品技術担当 参事の林 誠氏だ。
材料部品製造部 蛍光体部品技術担当 参事
林 誠氏
品質監査対応と現場の可視化、検査成績書の自動発行などが可能に
まず材料部品事業が扱う蛍光体やアモルファス磁性体など3つの製品群から運用を開始し、現在90名ほどが活用している。
日々の情報は、必要な項目を入力画面に記録することはもちろん、CSVファイルでの投入や指定された参照場所からデータを取得することも可能となっている。トレーサビリティ関連の履歴確認をはじめ、必要な情報をデータ分析用のBIツールと連携させて歩留まりの状況を把握できるようになったという。「以前は手作業で確認していたものが、今は時間の経過を工程と紐づけて確認できるため、現場の可視化が容易になっています」と林氏は評価する。
さらに、当初課題となっていた品質監査からの要求を満たせるようになったことも大きな成果だ。「工数削減やリードタイムの短縮といった取り組みはこれからですが、人手を介さずに客先ごとにフォーマットが異なる検査成績書の自動発行が実現できるなど、導入することでさまざまなメリットが得られています」と糸賀氏。
Meister Factory シリーズの導入により、現場の人たちにデジタル化を身近に感じてもらえる環境づくりにもつながっているという。「システムに触れる機会を増やすことで、デジタル化に対する現場のハードルを下げることができ、製造DXという視点での効果も出てきています」と林氏は語る。
単なるデータ統合基盤としてだけではなく、現場の課題を解決する機能を実装させることで、現場でもデータ活用のメリットや効果が実感でき、スムーズに稼働が行えたのだ。
一方、MES(製造実行システム)としてのMeister Factory シリーズに着目している河野氏は、今後MESと連携することで今回の仕組みが成長していくことに期待を寄せている。「同じグループ会社として、我々の現場が持つ複雑な工程などを通じて、十分な仕様に育てていって欲しいという思いがあります。そうなれば、Meister Factory シリーズの品質保証がより強化され、我々に返ってくるメリットも大きいと考えています」
システムの提案から実装、運用支援を行っている東芝デジタルソリューションズについては、複雑な工程理解からシステム反映まで手厚い支援を高く評価する。「導入にあたって、要件定義の段階から参画していただき、細かい製造現場へのヒアリング、環境構築からリリースの支援まで、一貫して我々の要望に対して実運用を踏まえた形で投げ返してくれるなど、親身に対応いただきました」と糸賀氏。「Meister Factory シリーズというソリューションはもちろん、開発環境として使えるデータセンタやハードウェアも含め、我々に必要な環境をワンストップで用意いただくなど総合力の高さは大きな魅力です」と河野氏の評価も高い。
横展開を視野に、「Meister Factory シリーズ」の拡張を続けていく
今後は、材料部品事業において管理する製品群や品種を増やしていきながら、ファインセラミックス事業への横展開を視野に、「Meister Factory シリーズ」の拡張を続けていく計画だ。また、現在は手入力やバーコードの読み取りで着工などの記録を行っているが、例えばRFIDを利用して情報を自動取得するなど入力の簡素化・自動化も視野に入れているという。
河野氏は、将来的にはスケジューラーとの連携やAI技術を活用したMESとの連携による進化に期待を寄せていると語る。「従来のMESではデータ蓄積が中心ですが、その情報をうまく活用してAIによる着工指示のレコメンドなどができるようになれば、まだ慣れていない担当者でも品質の高い工程管理が可能になります。これまで以上に現場に貢献できる環境づくりを進めていきたいです」
生産ラインのデータを集約・可視化しスマート工場の実現へ貢献する東芝のものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」。今後も生産管理の品質向上だけでなく、製造工程の高度化に向けたさらなる機能拡張により、製造業のものづくりを強力に支援し続けていく。
SOLUTION FOCUS
ものづくりIoTソリューション Meister Factory シリーズ
ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」は、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を支援します。
複数のシステムに分散されているIoTデータや業務データの製造情報を統合管理し、データの可視化・活用を可能にします。
さらに、つながる工場を実現することで、マネジメント強化が図れ、製造業のバリューチェーン全体の最適化に貢献します。
この記事の内容は2024年12月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
東芝マテリアル株式会社
設立
2003年10月1日
所在地
神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地(株式会社東芝 横浜事業所内)
事業概要
ファインセラミックス、蛍光材料応用製品、高純度金属、磁性材料部品、タングステン・モリブデン、特殊金属材料などの部品・材料の開発、製造、販売