ブロックチェーンの社会実装を通じて物流DXを支援
データの真正性を担保したペーパーレス化と業務最適化を実現

 家電メーカーと量販店を中心とした3PL事業を起点とし、現在はLLP(リードロジスティクスパートナー)として流通業界を中心に物流サービスを展開し、成長を続ける三井倉庫ロジスティクス株式会社。同社は物流の「2024年問題」への対策やCO2削減とともに、業務最適化に向けた取り組みを加速させている。その一環として、ZEROBILLBANK JAPAN株式会社(以下、ZBB)が株式会社LOZIと共同で開発した物流DX支援パッケージ「Trace Ledger™」を導入し、ペーパーレス化や働き方改革に資する環境づくりを推進。それを支えているのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供するエンタープライズ向けブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」である。

三井倉庫ロジスティクスの
プロジェクトメンバーの皆さん


Before

物流業界で顕在化する輸送能力が不足する物流の「2024年問題」や環境負荷対応などの課題を解決するための新たな施策が求められていた。帳票の集約による印刷枚数の削減など取り組みをしてきたが、より大きな改善効果を出す必要性からペーパーレス化の推進は急務であり、デジタル化に伴う業務最適化の実現に向けてデータの真正性を担保できる基盤整備が不可欠であった。

After

DNCWARE Blockchain+を活用したTrace Ledgerを導入することで、1日あたり1,000枚もの紙削減を実現するとともに、ドライバーの待機時間を1人あたり1日平均45分、事務員の工数を1日1.7時間ほど削減することに成功。物流業界へのブロックチェーンの社会実装とともに、DXによる業務最適化を実現している。

オペレーションの競争力強化を成長戦略とし、DXを強力に推進


 三井倉庫ロジスティクスは、三井倉庫グループの事業会社として、家電分野を中心としたサードパーティーロジスティクス(3PL)事業からライフスタイル分野までのお客様へ幅広いロジスティクスサービス事業を展開している。

 三井倉庫グループでは、成長戦略としてDXや共創、事業アセット、ESGの4つの側面から経営基盤の強化を図っており、オペレーションの競争力強化については、徹底した標準化への取り組みを深化させることで、人の力とテクノロジーの力を融合した「圧倒的な現場力」を実現。業務品質の向上による競争優位性を確保し、さらにはオペレーションのローコスト化による収益性向上を目指している。

物流業界の課題解決に挑むペーパーレス化プロジェクトが始動


 物流業界ではトラックドライバーの時間外労働に関する上限規制などの影響で輸送能力が不足する物流の「2024年問題」に加え、環境負荷低減やDXによる業務最適化への取り組みが喫緊の課題だったと三井倉庫ロジスティクス 取締役上級執行役員 松川 健一氏は振り返る。「特にCO2排出量削減につながるペーパーレス化はどうしても実現したかったテーマの一つです。ペーパーレス化によって事務作業の軽減とドライバーの待機時間短縮が可能となり、2024年問題にも効果的なアプローチとなることを期待しました」。

 その具体的な取り組みとなったのが、上新電機株式会社と共にブロックチェーンを活用した物流管理システム導入であり、紙ベースでの運用となっていた貨物の受け渡し業務に対してデジタル化を行うことで物流網を再構築するプロジェクトだった。

 同プロジェクトの基盤づくりにおいて注目したのが、クラウドやIoT、ブロックチェーンなど先端技術を用いたソリューション開発を推進するZBBが提供している物流DX支援パッケージ「Trace Ledger」だった。「帳票をゼロにしたいという思いが強く、ペーパーレス化を図るためのさまざまなソリューションについて比較・検討していました。そんな折、QRコードを活用してペーパーレス化を推進し、物流サプライチェーン管理のスマート化を可能にするソリューションとしてZBBのTrace Ledgerを紹介いただいたのです」と松川氏は言う。

三井倉庫ロジスティクス株式会社
取締役上級執行役員
松川 健一氏

 物流業界ではトラックドライバーの時間外労働に関する上限規制などの影響で輸送能力が不足する物流の「2024年問題」に加え、環境負荷低減やDXによる業務最適化への取り組みが喫緊の課題だったと三井倉庫ロジスティクス 取締役上級執行役員 松川 健一氏は振り返る。「特にCO2排出量削減につながるペーパーレス化はどうしても実現したかったテーマの一つです。ペーパーレス化によって事務作業の軽減とドライバーの待機時間短縮が可能となり、2024年問題にも効果的なアプローチとなることを期待しました」。

 その具体的な取り組みとなったのが、上新電機株式会社と共にブロックチェーンを活用した物流管理システム導入であり、紙ベースでの運用となっていた貨物の受け渡し業務に対してデジタル化を行うことで物流網を再構築するプロジェクトだった。

 同プロジェクトの基盤づくりにおいて注目したのが、クラウドやIoT、ブロックチェーンなど先端技術を用いたソリューション開発を推進するZBBが提供している物流DX支援パッケージ「Trace Ledger」だった。「帳票をゼロにしたいという思いが強く、ペーパーレス化を図るためのさまざまなソリューションについて比較・検討していました。そんな折、QRコードを活用してペーパーレス化を推進し、物流サプライチェーン管理のスマート化を可能にするソリューションとしてZBBのTrace Ledgerを紹介いただいたのです」と松川氏は言う。

 出荷から販売店舗での検品まで物流に関わるサプライチェーンの関係者がスマートフォン・タブレットなどの携帯端末でQRコードを読み取ることで、拠点や役務に応じたトレースデータを記録・蓄積・共有できることがTrace Ledgerの大きなメリットだった。一方、紙書類による運用が主流だった現場にとってはペーパーレス化の推進は新たな挑戦となったが、現場に足しげく通うことで現場を理解しようとするZBBの真摯な姿勢とともに、それをシステムに落とし込む提案力や実装力も高く評価したという。また、持続可能な経営に資するESGの観点からも有効であるとともに、将来を見据え新たな技術をグループに先駆けて取り入れていきたいという同社の想いもあり、Trace Ledgerを軸に環境づくりを進めることになったと松川氏は言う。

三井倉庫ロジスティクス株式会社
取締役上級執行役員
松川 健一氏

 出荷から販売店舗での検品まで物流に関わるサプライチェーンの関係者がスマートフォン・タブレットなどの携帯端末でQRコードを読み取ることで、拠点や役務に応じたトレースデータを記録・蓄積・共有できることがTrace Ledgerの大きなメリットだった。一方、紙書類による運用が主流だった現場にとってはペーパーレス化の推進は新たな挑戦となったが、現場に足しげく通うことで現場を理解しようとするZBBの真摯な姿勢とともに、それをシステムに落とし込む提案力や実装力も高く評価したという。また、持続可能な経営に資するESGの観点からも有効であるとともに、将来を見据え新たな技術をグループに先駆けて取り入れていきたいという同社の想いもあり、Trace Ledgerを軸に環境づくりを進めることになったと松川氏は言う。

社会実装しやすいエンタープライズ向けブロックチェーンに注目


 その過程で重視したのが、紙で行っていた業務をデジタル化するために欠かせない、データの真正性を担保するためのブロックチェーン技術である。「ブロックチェーンと言えば、ビットコインをはじめとした仮想通貨に使われているというイメージしか持っていませんでした。詳しく説明を受ける中で、紙が持っていた真正性がデジタルでも担保できることが理解できました。まさに目指すべきペーパーレス化が実現できると判断したのです」と松川氏。

ZEROBILLBANK JAPAN株式会社
代表取締役CEO
堀口 純一氏

 ただし、当初Trace Ledgerが実装していたブロックチェーン技術は、AzureやAWSが提供するブロックチェーンフレームワークだった。「グローバルなソリューションの場合、開発領域で詳細なやり取りが必要な場面では、どうしても英語での問い合わせが必要となります。そのため、比較的英語でのコミュニケーションになれている弊社のエンジニアでも苦労するケースが少なくありませんでした」と語るのはZBB 代表取締役CEO 堀口 純一氏だ。

 そこで新たに検討したのが、東芝が提供するエンタープライズ向けブロックチェーンDNCWARE Blockchain+をTrace Ledgerに取り入れることだった。2021年に東芝オープンイノベーションプログラムへの参加をきっかけに東芝との協業を開始、「東芝が提供する国内産ブロックチェーンのためエンジニアが扱いやすいのはもちろん、従来の日本の現場ならではの紙によるオペレーションが理解してもらいやすい点は大きかったですね」と堀口氏は振り返る。「JavaScriptが利用できるため、新たに技術を習得する手間もかかりません。ブロックチェーンは東芝に任せ、我々はソリューションそのものに注力できる点も大きなメリットでした」とZBBの堀口氏。

 さらに、東芝が提供するという安心感も背中を押す要因の一つだったという。こうして、ペーパーレス化と業務最適化につながる仕組みとしてZBBのTrace Ledgerと東芝のDNCWARE Blockchain+が同社のプロジェクト基盤として採用されることになったのである。

 その過程で重視したのが、紙で行っていた業務をデジタル化するために欠かせない、データの真正性を担保するためのブロックチェーン技術である。「ブロックチェーンと言えば、ビットコインをはじめとした仮想通貨に使われているというイメージしか持っていませんでした。詳しく説明を受ける中で、紙が持っていた真正性がデジタルでも担保できることが理解できました。まさに目指すべきペーパーレス化が実現できると判断したのです」と松川氏。

 ただし、当初Trace Ledgerが実装していたブロックチェーン技術は、AzureやAWSが提供するブロックチェーンフレームワークだった。「グローバルなソリューションの場合、開発領域で詳細なやり取りが必要な場面では、どうしても英語での問い合わせが必要となります。そのため、比較的英語でのコミュニケーションになれている弊社のエンジニアでも苦労するケースが少なくありませんでした」と語るのはZBB 代表取締役CEO 堀口 純一氏だ。

 そこで新たに検討したのが、東芝が提供するエンタープライズ向けブロックチェーンDNCWARE Blockchain+をTrace Ledgerに取り入れることだった。2021年に東芝オープンイノベーションプログラムへの参加をきっかけに東芝との協業を開始、「東芝が提供する国内産ブロックチェーンのためエンジニアが扱いやすいのはもちろん、従来の日本の現場ならではの紙によるオペレーションが理解してもらいやすい点は大きかったですね」と堀口氏は振り返る。「JavaScriptが利用できるため、新たに技術を習得する手間もかかりません。ブロックチェーンは東芝に任せ、我々はソリューションそのものに注力できる点も大きなメリットでした」とZBBの堀口氏。
 
 さらに、東芝が提供するという安心感も背中を押す要因の一つだったという。こうして、ペーパーレス化と業務最適化につながる仕組みとしてZBBのTrace Ledgerと東芝のDNCWARE Blockchain+が同社のプロジェクト基盤として採用されることになったである。

ZEROBILLBANK JAPAN株式会社
代表取締役CEO
堀口 純一氏

データの真正性を担保しつつ、紙削減とドライバー待機時間・事務員工数の削減を実現


 現在、Trace Ledgerは、倉庫内での検品作業や数百店舗での検品作業に加え、必要に応じたデータ検索の場面で使われている。紙での検品リスト出力やリスト保管などの手間がなくなり、ドライバーの待機時間短縮に大きく貢献しているという。DNCWARE Blockchain+は、帳票データに関する改ざん防止用のハッシュ値の管理に活用されている。

 導入により、1日あたり1,000枚もの紙削減を実現するとともに、ドライバーの待機時間を1人あたり1日平均45分、事務員の工数を1日1.7時間ほど削減することに成功した。

 「ペーパーレスを実現したことで、検品リストなどの出力が不要になり、ドライバーの待機時間も削減できました。リストを保管する手間やスペースも削減でき、ペーパーレス化によってさまざまな効果が得られています。まさにDXによる業務最適化のプロジェクトとなりました」と松川氏は評価する。また、データ改ざんといった不正の防止効果はもちろん、リアルタイムでの追跡・管理情報が共有されることによる不正の抑止効果など、ブロックチェーンならではのメリットも得られているという。

 データの真正性を担保できるブロックチェーンの実装は、今後のデータ活用にも効果をもたらすことが期待される。例えば、改ざんされていない透明性の高いデータをサプライチェーン全体で流通させることが可能となり、問い合わせ対応や事後処理、請求支払いといった他業務にも正しいデータを活用できるなどの波及効果が見込まれている。

AI活用にも展開が期待されるブロックチェーン技術


 今後は、基幹物流センターを基点に、緊密な輸配送ネットワークで複数の拠点を連携させ、それらを高度化されたデジタル基盤が支えるGWC(Gate Way Center)の将来構想実現に向け、デジタル技術をさらに活用していきたいと松川氏は言う。「デジタル基盤を整備することで新しい業務にAIなどの技術が活用できるはずです。そのためには、データの真正性を担保して荷主やパートナーとの情報ネットワークをつなぐブロックチェーン技術が欠かせません。今後もブロックチェーン技術の活用範囲はさらに広がっていくことでしょう」。

 堀口氏は「紙ゼロを実現したことで、次は人手をかけない“ヒトゼロ”への挑戦とともに、QRコードをさらに進化させた新たなインターフェースとして、AIエージェントなどをTrace Ledgerに実装していきたいと思います」と語る。特にAI活用において課題になりやすいハルシネーションを回避するためにも、ブロックチェーン技術によるデータの真正性担保は重要になってくると説明する。

 今回のプロジェクトでは、東芝やZBB、そしてプロジェクトに理解を示した上新電機など、共創パートナーの存在が大きかったと松川氏。最後に、「今後も新たな取り組みを通じて、物流に新たな価値を見出しながら、物流会社としての新しい形を模索していきたいと考えています」と語ってくれた。

 東芝が提供するエンタープライズ向けブロックチェーンDNCWARE Blockchain+は、これからも物流の新たな価値創造に向けた三井倉庫ロジスティクスの挑戦の一翼を担っていくことだろう。

*QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

SOLUTION FOCUS

DNCWARE Blockchain+™

DNCWARE Blockchain+は、東芝が20年以上にわたって実績を積んできたクラスタ技術を基に開発した新たな合意形成のアルゴリズムで、企業間連携に求められる信頼性の高いプラットフォームを創出します。すべての変更を記録し、改ざんを困難にすることで高信頼性を確保し、これまで独立していた企業や製品、サービスをつなぎ合わせ、相互に連携させることでエコシステム型のビジネスを実現します。

この記事の内容は2025年4月15~17日に開催された第6回ブロックチェーンEXPOでのセミナーの採録を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
三井倉庫ロジスティクス株式会社

創業
1971年4月21日

本社所在地
東京都中央区日本橋箱崎町19番21号 MSH日本橋箱崎ビル

事業内容
サプライチェーンソリューション事業(3PL/4PL/LLP)、テクニカルロジスティクス事業(配送・設置・工事など)、家電量販物流事業、国内外一貫物流事業、コーヒーシステムズ事業、商品の輸出入に関わる国際物流設計及び販売事業

URL
https://www.mitsui-soko.com/company/group/msl/