映像管理を変革する顔認識AI「カオメタ®」で
300万件超の映像資産価値の最大化を実現

株式会社テレビ朝日のアーカイブ運用センターは、300万件を超える貴重な映像資産の管理を担っている。同センターは、業務効率の向上と映像資産価値の最大化を目指し、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する顔認識AI「カオメタ®」を導入した。カオメタを採用した経緯や導入の成果、今後の展望などについてお話を伺った。


Before

アーカイブ運用センターでは300万件を超える膨大な映像資産を管理しているが、人物特定や詳細なメタデータの付与には多大な時間と労力がかかり、ベテランスタッフの知識やノウハウの継承も大きな課題となっていた。

After

顔認識AIカオメタの導入後、AIによる高精度な顔認識技術により映像管理の効率が飛躍的に向上。人物特定の作業時間が大幅に短縮されただけでなく、映像から必要な情報を迅速に発見できるようになった。さらに、詳細なメタデータの付与により映像資産価値の最大化に貢献している。

膨大な映像資産を効率的に管理する仕組みづくりを模索


株式会社テレビ朝日 技術局 アーカイブ運用センター
アーカイブ担当部長 
小林 賢治氏

 テレビ朝日は1959年に開局し、2024年2月に65周年を迎えた。同局のアーカイブ運用センターは、開局以来蓄積してきたテレビ放送映像や取材素材に加え、それ以前の貴重なフィルム映像や写真なども含め、300万件を超える画像・映像データを管理している。同センターが保有する最も古い資料は19世紀末期にまで遡り、明治時代の貴重な記録も含まれている。

 「これらの映像資料は単なる過去の記録ではなく、テレビ朝日の貴重な資産です」と、同センター アーカイブ担当部長の小林 賢治氏は語る。「一方で、膨大な量の映像を効率的に管理するとともに、必要なときに必要な映像を素早く取り出せるようにする仕組みづくりが大きな課題となっていました」。

 テレビ朝日は1959年に開局し、2024年2月に65周年を迎えた。同局のアーカイブ運用センターは、開局以来蓄積してきたテレビ放送映像や取材素材に加え、それ以前の貴重なフィルム映像や写真なども含め、300万件を超える画像・映像データを管理している。同センターが保有する最も古い資料は19世紀末期にまで遡り、明治時代の貴重な記録も含まれている。

 「これらの映像資料は単なる過去の記録ではなく、テレビ朝日の貴重な資産です」と、同センター アーカイブ担当部長の小林 賢治氏は語る。「一方で、膨大な量の映像を効率的に管理するとともに、必要なときに必要な映像を素早く取り出せるようにする仕組みづくりが大きな課題となっていました」。

株式会社テレビ朝日 技術局 アーカイブ運用センター
アーカイブ担当部長 
小林 賢治氏

 アーカイブ業務を主に担当しているのは、テレビ朝日の100%子会社である株式会社フレックスだ。テレビ朝日グループでは、グループのアーカイブに関する専門知識やノウハウを集中的に蓄積・維持することを目的に、2010年頃にグループ内の体制を見直し、同社に制作番組やスポーツも含めた全社的なアーカイブ業務を集約した。

 開局65周年という長期の運用の中で新たな課題も浮上してきた。長年の経験と専門知識を持つ一部のベテランスタッフが定年退職などで現場を離れ始め、若手への技術継承が喫緊の課題となりつつあった。

 さらに、人物特定の効率化なども大きな課題となっていた。「例えば、ある特定の人物が映っている場面を探し出すには対象の映像を目視確認しなければならず、膨大な時間がかかっていました。また、映像の中に映っている人物について、人の目と記憶だけで正確に特定するのは非常に困難でした」と同センター マネージャーの秋元 典史氏は説明する。

株式会社テレビ朝日 技術局 アーカイブ運用センター
マネージャー 
秋元 典史氏

約5年をかけ検討を重ねた末に導き出した最適解


 こうしたさまざまな課題を解決し、映像資産価値向上を実現するために導入したのが東芝の顔認識AI「カオメタ」である。カオメタとは、東芝研究開発センターが開発した世界トップレベルの高精度顔認識AIを活用し、放送現場の多様なニーズに応えるメディア向け顔認識ソリューションだ。

 「カオメタの導入には大きな意義があります。メタデータには5W1H情報が必要ですが、カオメタのおかげで『Who(誰が)』の部分が格段に強化され、映像資産の価値や活用の可能性を大きく高めることができます。同時に、ベテランスタッフの知識やノウハウをシステムに組み込むことで技術継承の課題にも対応できるのです」と小林氏は語る。

 こうしたさまざまな課題を解決し、映像資産価値向上を実現するために導入したのが東芝の顔認識AI「カオメタ」である。カオメタとは、東芝研究開発センターが開発した世界トップレベルの高精度顔認識AIを活用し、放送現場の多様なニーズに応えるメディア向け顔認識ソリューションだ。

 「カオメタの導入には大きな意義があります。メタデータには5W1H情報が必要ですが、カオメタのおかげで『Who(誰が)』の部分が格段に強化され、映像資産の価値や活用の可能性を大きく高めることができます。同時に、ベテランスタッフの知識やノウハウをシステムに組み込むことで技術継承の課題にも対応できるのです」と小林氏は語る。

 導入にあたっては、約5年をかけてさまざまなサービスを比較検証するとともに、セキュリティ面や費用対効果などについて分析を重ねた。そうした綿密な検討の末に導き出した最適解――、それが東芝の顔認識AIカオメタだった。「他のソリューションも検討しましたが、ライフサイクルコストや機密性の高い報道素材の取り扱いなどを考慮した結果、カオメタの導入を決定しました」と小林氏は言う。

 「特に、放送局特有のニーズに応えられる柔軟性が決め手になりました」と秋元氏。「例えば、選挙番組など生放送での即時の人物識別や、アーカイブ映像の詳細な分析など、さまざまな場面でカオメタを活用できる大きな可能性を感じました」。

高精度な顔認識や柔軟なカスタマイズが最大のメリット


 カオメタの最大の特長は、①高精度な顔認識、②ニーズに合わせた機能の拡張・強化、③使いやすいインターフェースにあると秋元氏は言う。「高精度な顔認識については、以前は同じ人物でも化粧や髪型が変わると識別が難しかったです。パリオリンピックでカオメタを利用したところ、アーティスティックスイミングの選手のように化粧や髪型が大きく変わる場面でも人物を正確に特定することができることがわかりました」。

 現場のニーズに合わせた機能の拡張・強化という点でも高く評価している。導入後も東芝と協力しながら継続的に機能改善を行うことで、さらに現場のニーズに合致したシステムへ進化しているという。

 使いやすいインターフェースも特筆すべき点だ。顔認識エンジンは辞書に登録した顔画像の特徴量と映像から検出した顔の特徴量を照合しどの程度似ているかを類似度として出力するが、これを直感的に操作できるよう一致率に変換しパーセンテージで表示している。これによりオペレーターはAIの判断の信頼度を即座に把握し、必要に応じて追加確認を行えるようになった。「操作が簡単なので、ベテランから若手まで誰でも使いこなせています」と秋元氏。

 さらに、株式会社フレックス 技術・ソリューション本部 アーカイブ部 システム担当課長の髙橋 慶貴氏は「カオメタは人物の特定だけでなく、その人物が映像内のどの位置にいるかまで表示するため、細かな情報も漏らさずキャッチできます。現場でも高く評価されています」と付け加えた。

株式会社フレックス 技術・ソリューション本部
アーカイブ部 システム担当課長
髙橋 慶貴氏

カオメタ活用により業務効率化や新たな価値創出を実現


 カオメタの導入により、テレビ朝日のアーカイブ運用センターでは、業務全体に大きな変革がもたらされた。

 まず、アーカイブ業務の効率が飛躍的に向上した。人物特定の作業時間が大幅に短縮されただけでなく、映像から必要な情報を迅速に発見できるようになった。「以前は1つの映像を確認するのに何時間もかかっていましたが、今では数分で必要な情報を抽出できます」と髙橋氏は語る。

 また、二次利用時の出演者確認などが容易になったことで、権利処理の作業も効率化された。「以前は映像の二次利用の際、出演者を一人一人確認する必要があり、膨大な時間がかかっていました」と髙橋氏は振り返る。その時間がカオメタの導入によって大幅に短縮され、それに伴い映像資産の活用の幅も大きく広がったという。

 さらに、新たな価値の創出も可能になった。従来は見落とされがちだった細かな情報も漏らさずキャッチできるようになったのだ。「例えば、ある有名人が昔のスポーツ大会の観客席に映っていたのを発見し、その人物の若かりし頃のエピソードとして番組で使用するといったこともできるようになります」と秋元氏は語る。

 これらの効果により、スタッフの負担が大幅に軽減され、ほかの業務にリソースを割けるようになっているという。

映像資産の価値最大化を目指して


 テレビ朝日アーカイブ運用センターは、カオメタの活用範囲をさらに広げようとしている。「映像の関連情報であるメタデータが不十分な古い映像にカオメタを適用すると、詳細な情報を付加することができます。これにより、貴重な映像の価値を一層高めることができるようになります」と秋元氏は語る。

 また、保存している映像データに詳細なメタデータを付与することで、映像の再利用を容易にし、資産価値の最大化を図っていくことを目指している。「これまで眠っていた映像の中から、新たな価値を見出すことができるようになります」と小林氏。秋元氏も「例えば、ある俳優のデビュー前の姿が映っている映像を発見し、その俳優の特集番組で使用するといったことが、より簡単にできるようになります」と期待を寄せる。

 そして、さらなる業務効率向上の切り札として期待されているのが、カオメタのオプションとして提供予定のテロップOCR機能の導入だ。番組内のテロップを自動でテキストデータ化する機能で、これによりスタッフロールや著作権表示の正確な記録が可能となる。「テロップOCR機能が加われば、スタッフロールやコピーライトなどを自動で取得することもできるため、権利処理や二次利用時の確認作業の効率化に大きく貢献するでしょう」と髙橋氏は説明する。

 さらに、報道やスポーツなど、放送部門でのカオメタ活用が全社的な業務効率化とプロダクトの品質向上につながるのでは、と期待を寄せている。「例えば、報道部門では速報性が求められますが、カオメタを活用することで、より迅速かつ正確な報道が可能になるでしょう」と小林氏。「例えば、サッカーの試合などスポーツの場合、背番号を見れば誰でも選手は特定できます。ただ、顔だけで判別しないといけない場合に、人の目で正しく識別してお伝えするには識別ミスをするというリスクがありました。カオメタの導入でそのリスクが大幅に減少し、現場のスタッフの負担も大きく軽減されるという大きなメリットがあると思います」。

 テレビ朝日アーカイブ運用センターは、カオメタを活用して映像資産の価値を最大限に引き出し、視聴者により質の高い情報を提供することを目指すと同時に、この取り組みが放送業界全体の発展にも寄与することを期待している。

 テレビ朝日アーカイブ運用センターの挑戦は、放送業界全体の映像資産管理のデジタル化とAI活用の先駆けとなるだろう。同社の取り組みはテレビ業界にどのような変革をもたらすのか――。そして東芝は顔認識AIカオメタという世界トップレベルの高精度な顔認識技術を通じて、映像資産の価値の最大化に貢献するための支援を今後も続けていく。

SOLUTION FOCUS

顔認識AI「カオメタ®

映像から人物をリアルタイムに特定する顔認識AIで、正確性と迅速性を両立したサービスです。照明や顔の向き、表情など、変動要因を含んだ画像からでも、正確に人物を特定するための情報を抽出する当社独自の技術で1人につき1枚の顔写真をあらかじめ辞書登録するだけで高精度な顔認識を実現します。
また、放送局などに特化した機能として、検出した顔の領域を追跡して認識を途切れさせない人物トラッキングや、複数の映像を同時に扱うマルチ画面に映し出された小さな顔の認識などもあり、番組制作の現場をはじめとするさまざまな業務をサポートします。

この記事の内容は2024年9月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
株式会社テレビ朝日
https://www.tv-asahi.co.jp/

開局
1959年2月

代表者
代表取締役会長 早河洋

所在地
東京都港区六本木6-9-1

事業内容
放送法による基幹放送事業および一般放送事業