全生産ラインのデータを集約・可視化へ
スマート工場を実現する
ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」

 130年以上にわたり東芝の照明事業を担っている東芝ライテック株式会社。同社は、さまざまな施設の照明器具や、舞台・スタジオ照明システム、航空灯火システム、車載光源、紫外線光源やそれらを組み込んだ光学装置、赤外線ヒーターなど、あかり・ひかりにかかわる製品を広く製造販売してきた。近年では、UV技術を除菌に活用した「UVライティング」や、カメラ付きLED照明「ViewLED」を使ったAI画像解析サービスにも注力している。

 同社の鹿沼工場では、世界一の照明工場を目指し、工場全体の最適化により生産計画や在庫管理をはじめとするスマート工場の実現を進めるプロジェクトがスタート。そこにものづくり情報の統合データ基盤として導入されたのが、東芝デジタルソリューションズのものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」だ。


Before

同社鹿沼工場では、自動化を中核とした生産効率化と改善活動により、従来、原価低減と生産性改善の取組みを進めてきた。自動化された一部の生産ラインはオンライン化が進んでいたものの、工場全体面での展開までには至っておらず、また、在庫や工程進捗は紙媒体での記録が行われているなど、製造状況の実態をデータによって把握できる状況とはなっていなかった。

After

お客さまの多様な要望にフレキシブルに対応しながらも、お約束した納期を守りタイムリーに提供していくため、在庫や生産進捗、設備データなどの現場データを一元的に統合管理することで、製造状況のリアルタイムな把握と更なる改善活動への活用に取り組んでいる。
また、得られた情報を生産計画の立案に活用することで、従来の月単位の生産計画から、週単位の計画へとドラスティックに改革を進め、数万点に及ぶ部品在庫の適正化とタイムリーな製品提供の両立を進めている。

お客さまの期待に応えるため、より最適な生産管理の実現へ


 東芝が2019年度から取り組んでいる「東芝Nextプラン」では、一層の収益強化を図るべく、グループ会社を横断するクロスファンクションチームによる活動を展開し、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた、各製造拠点のスマート工場化を推進している。そのトップランナーとして、東芝ライテックでは生産管理体制を強化しスマート工場化を進めてきた。

 同社は1890年に白熱電球を実用化して以来、一般照明器具から、車載用照明、航空灯火システムなど幅広く照明関連サービスを展開している。栃木県の鹿沼工場は、主にオフィスや工場などで使われる照明器具を製造しており、最近ではコロナ禍でのニーズに対応したUVライティング製品や新しいカメラ付照明ViewLEDといったIoTソリューションなど、時代や社会動向にマッチした新商品の開発にも注力している。 

 同社では、以前から自社で開発した製造装置や生産ラインを導入し、積極的にロボットの活用を進めるなど、製造オートメーション化をいち早く実現してきた。しかし、製造状況や工程の進捗、在庫に関する情報は、紙媒体や表計算ソフトなどで管理され、活用しきれていない現状があった。

 「工場では、一部設備のデータは自動取得していたものの、部品や製造の進捗に関する情報は十分ではなく、全体を俯瞰して状況把握できていませんでした。このため、ばらばらに存在する情報やデータを収集し連携させることを念頭に鹿沼工場のスマート工場化を推進してきました」と説明するのは、鹿沼工場 附職の中屋唯人氏だ。

鹿沼 工場 附職
中屋 唯人氏

 スマート工場化を通じて工場全体の最適化を実現するには、自動化や、制御システム(OT)などの導入に加えIT系の取り組みや生産管理方法の見直しが必要となる。製造プロセスで個々に取得しているデータを情報資産として一元管理し、生産計画立案の中で活用・最適化することで、顧客の期待により一層応える“ものづくり”が実現できるのである。

最適な需給計画に向け、現場のデータを連携、可視化


 「まず我々が目指したのが、工場全体のデータをつなげることでした。お客さまの要求と製造の状況や実力値、そして部品の納入状況をタイムリーに連携すれば、より迅速でフレキシブルな生産が可能になります。お客さまからの信頼をさらに高め、ご満足いただくには、必要なときに必要な製品をジャスト・イン・タイムで提供できるようにすることが大切なのです」と語るのは、生産技術部 部長(兼)生産統括責任者 伊藤良和氏だ。

 社長附 佐藤文彦氏は「今回のプロジェクトでは、生産計画を月単位から週単位に早め、直近2週間先の計画を立てられるようにするのがひとつの目標でした。まずは計画自体のサイクルを短縮化することで、適正な在庫の維持と、お客さまへのきめ細かい対応を両立したいと考えました」と説明する。

 需給面を含めた工場全体の最適化を実現するには、製造の現状をリアルタイムで見える化すると共に、その実力を把握し、生産計画の立案で活用していくことが求められる。東芝グループ全体で進められていたスマート工場化の動きの中で、同社が注目したのが、東芝デジタルソリューションズが提供する、ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」だった。

生産技術部 部長(兼)生産統括責任者
伊藤 良和氏

社長附
佐藤 文彦氏

生産に関わる情報の統合・可視化・活用を実現する
ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」


工場長
菅野 哲也氏

 「Meister Factory シリーズが魅力的だったのは、納期と在庫などの生産管理情報や、歩留まりやロス把握などの品質情報など、ものづくりに関わる全ての情報を1つの統合データ基盤に格納し、可視化、活用が実現できる点でした。鹿沼工場の取組みでは、製造現場での状況管理を、数千個単位の製造オーダーから数十~数百個単位の製造ロットレベルへ詳細化し、部材の入出庫や生産数、品質情報も同じ単位で統合管理することで、より正確かつリアルタイムな生産状況や実力が把握できると考え、これを実現できるのがMeister Factory シリーズでした。また東芝グループの一員として、製造現場にも理解が深く、デジタル化にも強い東芝デジタルソリューションズに、スマート工場化について的確なアドバイスをもらいながら着実に進めることができました」と、工場長 菅野哲也氏は振り返る。

 中屋氏は「ソリューションの選定にあたっては、私たちが実現したい理想のスマート工場像を叶えられることに重点を置いて検討しました。ものづくり情報の統合データ基盤としての実績や運用、さらにMES(製造実行システム:Manufacturing Execution System)との親和性の高さを考慮し、最終的にMeister Factory シリーズの導入により、スマート工場化に取り組むことにしました」と語る。

 伊藤氏も「もちろんコスト面も考慮しつつ、導入時一回だけのお付き合いでなく、サポートや保守体制なども含めて長い目で見たとき、価格の数字には表れないメリットも出てくると考えました。今後、製造トレーサビリティや生産状況の可視化など、リアルタイムな状況把握やスピーディな経営判断によるレジリエンス向上に向けた取り組みを進める上で、東芝デジタルソリューションズには、さまざまな面で相談にのってもらえることを期待しています」と付け加える。

スマート工場を具体的に現場が体感、行動変容への第一歩へ


 Meister Factory シリーズは、2022年4月に本格的な運用を開始した。鹿沼工場の主力商品であるLEDベースライト「TENQOO」の製造ラインへの導入を皮切りに、データの収集、問題の洗い出しを行い、今後は別商品の製造ラインにも展開し、さまざまなデータを連携させ、実行系のMESにもつなげていく予定だ。

 より精密な生産計画を策定するために必要となるのが、集約し可視化されたデータだ。「まずはQCD(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期))のDeliveryから始め、スケジューラと生産管理システムを連動させています。前工程と後工程の生産計画を同調させることで仕掛品を、販売変動に対してフレキシブルに生産することで在庫をそれぞれ適正化することを目的に、足元の生産状況が計画どおりに実行されているかをチェックし、確実に予実管理できるようにしています」と佐藤氏。

 現在はデータベースのチューニングや、マスターデータのクレンジングなどを実際に現場の担当者の協力を得ながら整備を進めている。プロジェクト全体の完了まではまだ先になるが、確実に手応えを感じているという。

 「正直なところ、導入当初、現場のスタッフはデジタル化、スマート工場化のメリットがよくわかっていませんでした。しかし導入後は、手作業だったデータ入力作業がバーコードで簡単にできるようになり、可視化されたデータを皆が同時に確認することができるようになって、効果の具体的なイメージが湧いたようです。実はこれが一番大切な点で、いくら素晴らしいシステムを入れても、最終的に現場の行動変容につながらなければ、恩恵も半減してしまいます。デジタル化、スマート工場化で何が変わり、何が良くなったのかが見え始めたことで、ようやくスタートラインに立てたと感じています」と伊藤氏は語る。

世界一の照明工場を目指して、「あかり、その先へ」


 同社では、Meister Factory シリーズを活用し、今後はヒトの位置や動作などの行動分析を活用した配置の最適化や、製造トレーサビリティ、製造設備の予防保全までを視野に入れた展開を進める方針だ。たとえば同社のカメラ付きLED照明「ViewLED」と連携すれば、工場や店舗などのヒトの動きのデータが取得できる。現場スタッフの動きのデータを分析して無駄をなくし、店舗などの行動分析をマーケティングにつなげるといった、新しい付加価値の創出が可能となる。鹿沼工場では、このカメラ付き照明ViewLEDを既に130台以上も設置し、お客さまへのオンライン見学にも活用し、効果を上げているという。

 また近い将来、鹿沼工場をモデルに、同社の今治工場でもデジタル化とスマート工場化を推進していく計画だ。今治工場では受注生産で車載・産業用光源を製造しているため、一般照明を製造する鹿沼工場とは異なり、ある程度の生産予測が可能だ。そのため、個体管理やトレーサビリティにウエイトを置きながら、今治工場ならではの「絶対品質」を打ち出していく方針だという。

 Meister Factory シリーズによって、スマート工場を実現し、真の意味でのDXを加速させる東芝ライテック。世界一の照明工場を目指して、これからも東芝デジタルソリューションズとの二人三脚で、需要変動を捉えた適切な生産計画と在庫管理のもと、顧客ニーズにタイムリーに対応するベストプラクティスを実現していくことだろう。

SOLUTION FOCUS

ものづくりIoTソリューション Meister Factory シリーズ

ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」は、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を支援します。複数のシステムに分散されているIoTデータや業務データの製造情報を統合管理し、データの可視化・活用を可能にします。
さらに、つながる工場を実現することで、マネジメント強化が図れ、製造業のバリューチェーン全体の最適化に貢献します。

この記事の内容は2022年8月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
東芝ライテック株式会社

代表者
取締役社長 平岡 敏行

本社所在地
神奈川県横須賀市船越町一丁目201番1

事業概要
LED電球・蛍光ランプ等各種光源、照明器具、配線器具、照明制御関連機器、航空灯火システム、舞台・スタジオ照明システム、車載・産業用光源およびこれらの関連商品ならびに応用装置の製造ならびに販売

URL
https://www.tlt.co.jp/tlt/