業務に最適な画面やフロー作成の内製化を実現
管理に加え戦略ツールとしても活用可能な「知財管理サービス」

 強みである界面制御技術を生かし、石油・輸送機産業や生活・健康産業、繊維産業などさまざまな業界に素材を提供している三洋化成工業株式会社。特許や商標など多数の知的財産を保有している同社では、これまでの個別最適化された知財管理から脱却し、知財情報の幅広い活用に向けた業務基盤の整備に成功した。この新たな基盤として採用されたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する特許業務ソリューション「知財管理サービス」だ。


Before

知財情報は知財部が保有するスタンドアロンのパソコンで管理され、研究者とのスムーズな情報共有が進まなかった。競合他社の審査経過の監視には別のシステムを使うなど、業務ごとに異なる仕組みが点在していた。また、手作業での入力など、現場の負担も大きく、省力化も望まれていた。併せて、知財情報を有効活用するための新たな仕組みづくりへの期待が高まっていた。

After

知財業務の基盤として東芝の特許業務ソリューション「知財管理サービス」を採用した。他社監視からスタートし、今後は自社の特許管理や商標管理、年金管理までトータルでの導入を予定している。審査経過情報の自動取り込み機能により手作業がなくなり、業務の効率化、情報の精度向上が実現した。社内での情報共有が進み、問い合わせ対応の削減や資料作成の手間も軽減した。将来的には知的財産の戦略ツールとしての活用を目指している。

利益に貢献できる知財を目指して


 1949年に三洋油脂工業株式会社として創業、1963年に三洋化成工業株式会社に社名を変更後、現在は中間材を中心とした化学メーカーとしてグローバルに事業を展開している同社。生活・健康産業関連製品、ウレタン樹脂や潤滑油添加剤などの石油・輸送機産業関連製品を中心に、生活のあらゆる場面になくてはならない、パフォーマンス・ケミカルス(性能・機能を発揮する化学品)を提供している。

 そんな同社において、自社および一部の子会社が保有する数多くの特許や商標などの知的財産を管理しているのが、研究業務本部 知的財産部だ。同社は、2030年のありたい姿に向けた経営方針「WakuWaku Explosion 2030」のなかで、“全部署がプロフィットセンター”となることを掲げている。この方針に沿って、知的財産部ではIPランドスケープ(知財環境分析に基づいた経営戦略)の実践によって競争優位を確立し、利益に貢献できるような知的資本の活用の推進に注力している。

情報の一元管理と活用しやすい環境整備を求めて


 知的財産部では、部内のスタンドアロンのパソコンで特許管理を行ってきたため、情報の社内共有に課題があった。「全社的な特許情報は知財部内にあるシステムでしか閲覧できなかったため、研究者が情報を確認したい場合には、知財部に依頼をする必要がありました。研究者自身がいつでも知財情報にアクセスできるよう、知財情報を可視化・共有し、うまく活用できる環境づくりが望まれていました」と同部 主任部員 谷岡 弘章氏は当時を振り返る。

 また、他社監視と、自社製品との紐づけや社内情報の管理もそれぞれ別のソフトを利用している状態だった。「各管理対象に最適だと思われる仕組みを使い、それぞれブラッシュアップを続けてきたので、部分最適化された状態ではありました。しかし、将来的には全体の特許情報を一元管理して活用につなげていく必要があると考えていました」と谷岡氏。
 また、出願情報などの入力を手作業で行っていたが、管理件数は増え続ける一方だったため、人為的なミス発生のリスクも増加していた。「管理グループとして正確な情報を入力、管理するのは当然ですが、やはりメンバーの負担も大きい。できれば情報管理の品質向上や効率化に向けて、できる限り自動化できる仕組みづくりを望んでいました」と谷岡氏は説明する。

 このような社内的な課題は以前から顕在化していたが、知的財産部のより戦略的存在価値を高めるため、具体的に新たな仕組みづくりへと動き出すことになった。

 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務が増えるなか、テレワーク中でも知財情報の管理や閲覧ができる仕組みを構築する必要が生じ、知財部内のパソコンでしか情報を把握できない状況への早急な対応も推進を後押しした。

三洋化成工業株式会社
研究業務本部 知的財産部 主任部員
谷岡 弘章氏

内製可能な画面と柔軟なカスタマイズ性を高く評価


 特許関連の情報を一元管理できる仕組みづくりに向け、推進をリードした谷岡氏。「出願から権利化、維持までの長いスパンで情報を管理する必要があるため、その間に担当者が変わったり、発明者が異動したり、退職したりするといったことも起こります。そのため、当時の担当者や発明者の想いをしっかりと伝承できるようにするには、1つのシステムで一元管理できるのが理想でした」。

 そこで注目したのが、東芝の特許業務ソリューション「知財管理サービス」だった。「特許関連の情報が一元管理できるだけでなく、それまでひとつひとつ手作業でおこなっていた国内外の他社監視に関する入力作業が、自動的に取り込めるなど、効率化の面でも我々が求めていた機能を持っていることが大きな魅力でした」と谷岡氏は振り返る。

 また、クラウドサービスであるため、研究者自らがアクセスし、他部署の発明情報を容易に把握できるようになることも大きなポイントだった。「自社の発明は、同じ課題に対しても分野によってアプローチの方法が異なります。他部署の発明を参考にできると、開発のスピードアップにも大きく貢献してくれる。どこからでもセキュアにアクセスできる知財管理サービスはまさに我々にぴったりなソリューションでした」と谷岡氏。

 さらに大きかったのは、画面を自由にユーザー側でカスタマイズできるという点だった。「活用していく中で、使い方が変わってくる可能性もあります。活用方法の変化に合わせて、自ら柔軟にカスタマイズできるという点も大きかった」と谷岡氏。「実際に複数の特許関連ソリューションを比較検討したところ、他社ソリューションだとカスタマイズには大きな費用が必要であるが、東芝の知財管理サービスは内製化に向けた基盤として、カスタマイズを前提に考えるとコストパフォーマンスが非常に高いと判断し、導入の決め手となった」と谷岡氏は語る。

完全内製化で知財業務の統一基盤の整備に成功


 2021年11月にまずマスター移行の負担が軽く、社内手続きが少ない他社監視から運用をスタートし、現在は自社の特許、商標、年金までの管理運用の本格稼働に向けて最終調整中だ。「今後は、特許出願から出願審査請求、権利化、年金管理など各ステップに応じたワークフローを整備し、運用する計画です。いずれは400名を越える研究者全員が活用する基盤として活用対象の業務を拡大させていきます」と谷岡氏。過去の出願も含めると1万件を超える件数を管理することになる。

 知財管理サービスの導入で、業務の効率化、省力化が図られただけでなく、情報の精度が向上し、アラート設定で抜けや漏れが防げるようになるなど、現場からも導入効果を高く評価する声が寄せられている。もちろん、個別に管理されていた環境が統合でき、さらにクラウドサービスのため、システム管理面の運用負担も大きく軽減された。「各部署からの問い合わせ対応や資料をまとめたり転記したりする作業がなくなりました。情報を可視化しやすく、サービス側で業務を支援する設定も可能になるなど、効率化に大きく貢献しています」と構築を担当した同部 平井 真由子氏は評価する。

 コロナ禍での導入プロジェクトだったこともあり、週に1度、オンラインで打ち合わせを実施、東芝から基本的なレクチャーを受けながら、全て内製化で構築を進めた。実際に画面の作り込みを担当した平井氏は「画面構成がシンプルで、直感的に作り込むことができました。わたしたち自身が利用しやすいシステムを作り上げるために、権限範囲や編集可否といった多くの項目を自ら細かく設定できるなど、使い方に合わせてカスタマイズできる点がとても魅力的です。」と評価する。

 東芝については、サービスに関するサポートはもちろんのこと、特許関連の知見も豊富で、迅速で的確な対応を高く評価している。「我々自身で内製化ができるのも、何かあればすぐに相談でき、的確な回答がもらえているからこそ」と谷岡氏。設計にあたっては、東芝からのアドバイスを受けながら、蓄積された情報の有効活用を意識した項目設定などを進めたという。

管理ツールから戦略ツールとしての活用


 今後については、一元化された知財情報の活用をさらに加速させていきたいという。「これまでは蓄積された情報管理のための仕組みという側面が強かったのですが、これからは、売り上げデータなどとも連携させ、新たな開発につなげるなど、知的財産における戦略ツールとして積極的に活用していきたいと考えています。売上にも結びつく知財を目指した環境が整備できたことは大きい」と谷岡氏は評価する。情報活用が進むことで、点として存在していた発明が、線や面で捉えていけるようになると期待を寄せている。「設定画面にはさらに改善していきたい部分があります。これからも東芝さんにサポートをいただきつつ、運用しやすいよう進化させていきたいと思っています」と、平井氏もさらなる意欲を見せる。

 東芝の知財管理サービスは、同社の知的財産部が推進する、豊富な知財情報を生かしたプロフィットセンターとしての活動をこれからも強力に支えていく。

SOLUTION FOCUS

知財管理サービス

知的財産戦略の業務遂行を強力に支援する東芝の「知財管理サービス」ソリューション。
知的財産に関わる様々な情報をクラウド上で一元管理。
お客様独自の管理項目や画面、帳票、業務フローを用途・目的に合わせて柔軟に設定可能。
ノンカスタマイズで柔軟性の高いシステムを実現し、業務効率化の推進、権利の有効活用まで特許管理業務をトータルにサポートします。

この記事の内容は2022年9月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
三洋化成工業株式会社

創立
1949年11月1日

代表者
代表取締役社長 兼 執行役員社長 樋口 章憲

本社所在地
京都市東山区一橋野本町11-1

事業概要
化学品(パフォーマンス・ケミカルスの開発・製造・販売)

URL
https://www.sanyo-chemical.co.jp/