多岐にわたる契約種別を一元管理
柔軟なカスタマイズで確実な契約管理業務に貢献する「契約管理サービス」

 iPS細胞の製造や品質評価などの技術を研究機関や企業に提供している公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団。他機関との様々な契約を表計算ソフトで契約種別ごとに管理していたが、契約情報や期限管理などを一元化した効率的な運用を目指し、新たに東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する「契約管理サービス」を導入した。

提供:公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団


Before

他機関との間で交わされた多岐にわたる契約を、表計算ソフトで契約種別ごとに管理していた。1つの取引先の契約が複数の種別にわたるケースも多く、契約内容の確認には横断的な情報抽出が必要で、都度手間と時間がかかっていた。また、締結手続きまで完了した契約を管理するファイルと各案件担当者が自身の受け持つ案件の進捗を管理するファイルが独立して存在し、すべての案件の進捗が一目では見づらい状況にあった。契約更新作業など期限管理も煩雑で、業務負担が大きかった。

After

東芝が提供する「契約管理サービス」を導入し、契約に必要な情報の登録や管理に加え、過去の履歴を参照することで、案件の種別や契約先ごとなどの情報が把握しやすくなり、確実な一元管理が可能になった。また、各契約案件の進捗が可視化され、契約更新の抜け漏れを防ぐアラートが配信されるなど、担当者の実務面だけでなく心理的負担も大きく軽減。より確実かつ充実した契約管理業務を進められる環境整備が実現した。

iPS細胞技術を大学から産業界へ


 京都大学iPS細胞研究財団は、大学と産業界の橋渡し役を担うため、国立大学法人京都大学iPS細胞研究所から分離する形で設立され、2020年4月に公益財団法人として活動を開始した。主な事業として、iPS細胞の製造や品質評価などのサービスを、再生医療の研究開発を行っている企業などに対して、良心的な価格で提供している。こうした活動を通じて、将来、企業によってiPS細胞が実用化された時に、必要とする患者さん全てが受けられる医療となることを目指している。

 同財団において、iPS細胞の製造や品質評価などの受託サービスや、他機関との共同研究や秘密保持等に関する各種契約の締結業務を担当する重要な役割を担うのが、企画部門 契約管理室だ。「第三者との契約手続きや受託した契約サポートなど多岐にわたる業務を担当しています。付加価値の高い契約業務をご提供できるよう努めています」と同管理室 契約管理室の 吉田 あづさ氏は語る。

企画部門 契約管理室
吉田 あづさ氏

増加する契約案件の一元管理による業務の効率化とスリム化を目指して


企画部門 契約管理室
阜山 梓氏

 これまでは、多岐にわたる契約種別ごとに表計算ソフトで管理する中で、主に3つの課題が顕在化していた。まず、「以前は契約種別ごとに別のファイルで管理していたので、同じ相手先の契約が複数の種別にわたっている場合に、各ファイルから情報を抽出し、まとめる際の手間がかかっていました」と、同室 阜山 梓氏は振り返る。

 2つめの課題は、案件進捗管理ファイルは担当者ごとに管理しており、担当者がいない場合すぐに対応できないことだった。「当時も、全員が閲覧できるフォルダで管理してはいましたが、確認するにはファイルを1つずつ開いて内容を見ていかなくてはならず、すべての案件状況をすぐに把握できる環境をつくる必要を感じていました」と吉田氏。

 3つめの課題は、契約案件が増えるにつれて生じた、契約終了などの期限管理の煩雑さだった。期限の終了時期が重なる年度末には、対象案件の抽出やメールでの契約延長の要否確認などの業務が重なり、負担はさらに大きくなっていた。「契約数は変動するものの、常に数百件以上の契約を管理しています。期限管理など、抜けや漏れがないように常に気を配る必要があり、担当者には大きな負荷がかかっていました」と阜山氏は説明する。

 さまざまな課題が顕在化するなか、組織として契約業務全体のスリム化を推進することになり、契約管理における課題解決に向けた環境整備に動き出すこととなった。

自らカスタマイズ可能でデータ活用の効率化ができる点に注目


 新たな環境づくりで重視したポイントは、「多岐にわたる契約種別の管理に必要な情報や項目を自分たちで適切に追加、管理できること。そして、データ活用の観点から入力した情報を簡単に出力できる仕組み、という点から検討しました」と吉田氏。また、これまでに蓄積してきた情報を新しいシステムにスムーズに取り込めることも条件だったという。

 複数社を候補にする中、東芝が提供する「契約管理サービス」は、自分たちで画面の設計やカスタマイズができ、さらに蓄積した情報が活用しやすいという特徴と、システムからの自動メール発信や他部署の担当者との情報共有が容易になるなど、今後の業務効率化に役立つ可能性があることから、採用された。

システムで契約管理を一元化、業務効率化や負担軽減に貢献


 現在は契約管理室のメンバー7名が、それぞれの担当案件を契約管理サービスに登録し、進捗状況に応じて情報を更新するという運用をしている。担当者がシステムを立ち上げるとはじめに現在自分が担当している案件内容がすぐ確認できるようになっている。

 管理項目には、契約先の企業や担当者、契約条件、契約締結日、契約終了日などを設定、備考欄にはやりとりのポイントや留意点などを記入し、他のメンバーにも当時の状況や履歴を把握できるようにしている。「今ではシステム内を検索すればすぐに過去の契約案件を確認できるようになりました。また備考欄に細かく情報を記入できるため、以前に比べて情報管理の精度が格段に向上しました。履歴情報は次の契約の参考になるので、情報共有としても大変役立っています」と阜山氏は評価する。必要な情報にアクセスする場合、設定された項目だけでなく、入力したテキストも全て検索できるため、新規契約案件に対応する際も、過去の似たような契約形態やキーワードを抽出して、履歴を確認できることも便利だという。

 これまで、担当者が手作業で行ってきた契約終了日の確認は、システムから確実にアラートが通知されるため、心理的な負担が大きく軽減されたという。「手作業だと、確認漏れがないか、ミスがないかという不安が常につきまといます。契約管理サービスを導入したことで、安心してシステムに任せられるようになり、業務量・作業時間が減っただけでなく、安心して業務を進められるようになりました」と、吉田氏はそのメリットを語る。

 この契約管理サービスの導入にあたっては、東芝とのオンラインミーティングを毎週実施し、画面設定方法などについてレクチャーを受け、全て自分たちで設定したという。「私たちにはシステム開発の経験はなかったのですが、コロナ渦でしたので、定期的にオンラインで勉強会の開催をお願いし、システムの仕組みから、項目追加のカスタマイズ方法といった基本的なノウハウまで、東芝さまからしっかり教えていただきました。そのため、半年ほどで、自分たちの力で使いやすい仕組みを作り上げることができました」と阜山氏。吉田氏も、「オンラインミーティングのたびに皆の不安や疑問が都度解消され、とても心強く感じました」と語った。

 稼働後も、東芝には運用上の疑問点や使い方を質問したり、定例勉強会で確認したり、継続的な支援を受け、誰もが使いこなせる環境づくりを共に進めてきた。「東芝の手厚い支援のおかげで、メンバーが誰一人取り残されることなく、毎日、当たり前にシステムを利用して業務を進められるようになったことが、このシステムの使いやすさを表していると思います」と、吉田氏は評価する。メンバーからもこのように使いたい、改善したいといった要望も積極的に出て、よりよいシステム運用に向けて日々取り組んでいるところだ。

契約管理の基盤として今後も拡張を続け、確実なシステム運用へ


 2021年7月の運用開始から1年ほどが経過し、現在は年度末に迎える契約更新に関する発信をすべてシステムから確実に案内ができることを目標としている。次のステップとしては、システム主導で契約更新業務を進められるようにしていきたいという。「自由度の高いシステムだけに、段階的に拡張していきたいと考えています。最も多くの作業が重なる年度末に、混乱なく正確に契約更新の案内ができた段階で、次のステップに進んでいきたい」と吉田氏は期待を寄せる。

 また、現在、契約終了日の3ヵ月前になると、自動的に更新の案内をメール送信できる仕組みになっているが、今後は契約締結時の案内も含めて、システムから自動連絡できるような環境作りにも取り組んでいきたいという。将来的には、契約管理室以外の他部署への情報共有も含め、契約情報の活用のすそ野を広げていくことも視野に入れている。

 これからも、東芝の契約管理サービスは、重要な契約情報の管理と情報共有を効率的に行える基盤として、臨床応用の推進に貢献する同財団のきめ細やかな契約業務をしっかりとサポートしていく。

SOLUTION FOCUS

契約管理サービス

東芝の特許業務ソリューションに関連して提供している「契約管理サービス」は、特許業務に限らず、契約全般の一元管理を実現するサービスとしてクラウドで提供しています。過去の類似契約の検索性が高く、期限管理、更新アラート等の設定で契約の更新漏れを防止。
管理項目は契約の標準項目に加えて、項目の変更や自由な追加が可能で、より柔軟なカスタマイズ性が効率的かつ確実な契約管理を実現します。

この記事の内容は2022年9月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

ORGANIZATION PROFILE

組織名
公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団

理事長
山中 伸弥

所在地
京都市左京区聖護院川原町53番地

事業内容
細胞製造、品質評価、細胞保管管理及び細胞調製施設の管理・運営。研究開発及び臨床応用に対する総合的支援。教育訓練及び人材育成。産学官及び国際交流等を通じた情報共有及び情報発信など。

https://www.cira-foundation.or.jp/j/