新たな付加価値創出に向けた特許業務全般の効率化を実現
ゲーム業界における知財DXを強力に推進する知財管理サービス

 ゲームというエンターテインメントを通じて「遊文化」をクリエイトする株式会社カプコン。知財情報を蓄積する事務管理用としてのみ利用していた知財管理の仕組みから脱却し、特許事務所との緊密な連携を可能にする仕組みを構築。少数精鋭でも運用できる特許業務基盤を整備し、新たな付加価値を創出する基盤固めに成功した。そこで採用されているのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)がクラウドサービスとして提供している特許業務ソリューション「知財管理サービス」だ。


Before

従来利用していた他社の知財管理業務パッケージは、知的財産情報の蓄積、管理のみに使用しており、情報の有効活用には至っていなかった。また、事務担当者は単調な入力業務に追われ、特許実務に携わることができなかった。そのため、知財業務のDX推進に向けて、特許管理の社内業務だけでなく特許事務所を始めとした外部パートナーと情報共有可能な連携業務の効率化を図るための基盤づくりを求めていた。

After

外部パートナーと情報共有可能な特許業務基盤をクラウドで整備。データ入力をすること自体が目的になってしまっていた状況を見直し、特許業務全体をデザイン思考の手法も取り入れて、ユーザである実務担当者を中心として再構築し、業務全体の効率化を実現した。入力業務に追われていた事務担当者の工数を半減できたことにより、特許実務に携わる時間を創出し、よりクリエイティブに活躍できるように。さらに蓄積された貴重な情報を有効活用する取り組みを開始した。

案件の発掘から権利保護まで幅広い知財実務を担当する知的財産部


 1983年の創業以来、世界屈指のソフト開発力を強みに数々の人気ゲームコンテンツを創出し、ゲーム業界を強力にけん引している株式会社カプコン。事業戦略である「ワンコンテンツ・マルチユース戦略」のもと、ゲーム以外のメディアにも積極展開するなど、収益向上とリスク分散を両立させる事業ポートフォリオを構築している。

 そんな同社のブランド価値の向上、維持に向けて、特許や商標、著作権など知的財産全般の出願から権利保護までを担うのが知的財産部だ。「知的財産部は、特許、商標、著作権それぞれを担当するチームと、それら知的財産全般の事務作業や業務の効率化を進める知財管理チームで構成されています」と紹介するのは法務・資産管理統括 知的財産部 副部長 奥山 幹樹氏だ。
 同社では、特許案件の検討は、知的財産部主導で行われている。知的財産部が事前にゲームタイトルの企画書や仕様書を読み解き、そのなかから特許出願可能な発明をピックアップ。開発部門へのヒアリングや、事前調査、資料のとりまとめなど全てを知的財産部が担っている。

皆が楽しく働ける環境と、情報を有効活用するための基盤を目指して


法務・資産管理統括 知的財産部 副部長
奥山 幹樹氏

 知的財産部で以前利用していた知財管理システムは、旧来の仕組みだったこともあり、画面のカスタマイズの自由度が限られていることからも活用が進まなかった。知財管理の事務担当者が、特許事務所から送られるデータ類を入力、蓄積しても社内で有効活用されない状態にあった。

 「仕事は楽しくしたい。楽しくない仕事があれば何かそこに課題があるはずなのでやり方を変えた方が良いと思っています。またデータ入力だけに従事する事務担当者のキャリアプランも考えると、特許実務の専門的な経験も積ませてあげたいという思いもありました」。そこで奥山氏は働き方改革推進の一環として、より戦略的で創造性の高い業務に取り組める環境づくりに向けて、既存環境を刷新することを決断した。

 導入にあたり、これまで同じ基盤で管理していた特許と商標を分け、特許管理に絞ったシステムを導入することにした。「当時導入していた知財管理の仕組みでは、特許と商標を一緒に管理していました。しかし、対応する法律や用語なども異なり、特許担当者と商標担当者で知財管理システムに対する改善要望も異なるなど使い勝手の悪さもあり、UX的な視点で考えるとそれぞれ別のプラットフォームで管理すべきだと判断したのです」と奥山氏。
 そこで候補に上がったのが、株式会社発明通信社から紹介された東芝の知財管理サービスだった。

特許事務所との連携強化とカスタマイズ可能な画面設計


 新たな環境では、パートナーである特許事務所との連携強化を重視。「特許出願の支援をお願いしている特許事務所でも、我々が活用できていなデータを共有したり、我々の要望に合わせたデータ名で個別にPDFを作成するなど、依頼によって作業負担も大きくなっていました。お互いの負担や無駄を減らすには、クラウド上でデータを共有できるプラットフォームを用意することが理想的だと考えたのです」と奥山氏。

 また、特許事務所との効率的なコミュニケーション環境も求めていた。「これまではメールでやり取りしていたため、過去の履歴が担当者本人しか確認できませんでした。担当者が変わっても案件ごとにやりとりの履歴が統合できるものが理想でした。また、データをメールに添付して送受信するのではなく、クラウド経由で共有したかった」と奥山氏。さらに、これまで表計算ソフトで管理していた案件ごとの進捗が同一システム上で管理でき、利用するメンバーごとにUIを変えられるなど、最適なUXを提供できる仕組みを希望したという。

 これらの要件を満たしていたのが、東芝が提供する特許業務ソリューション「知財管理サービス」だった。
 特に、利用者が各自で画面を変更、調整して使いやすいようにカスタマイズできるという点が大きかったという。また、「プロセスごとにフォルダを分けて管理できるので、シンプルで使いやすく、刷新後の運用がイメージしやすかったこともポイントとなりました」と奥山氏。

 そこで、社内と特許事務所、そして審査請求などの知財事務サポートを行う外部パートナーで活用できる特許業務の共通管理基盤として、東芝の知財管理サービスが採用されることになった。

 今回の導入にあたっては、東芝のパートナーである株式会社発明通信社が、知財管理サービスの提案から導入までを支援し、既存環境からのデータ移行はもちろん、業務を理解したうえで要件の交通整理をするなど、東芝との橋渡し役を務め、手厚いサポートを提供した。「新しい機能の話を聞いて、使えるか相談したときにも、我々にとって本当に必要な機能なのかを我々目線で考え、アドバイスしていただけた。そのおかげで、短期間でとてもスムーズに移行することができ、大変感謝しています」と奥山氏。

特許業務全体の効率化と一歩進んだデータ解析も可能に


 知財管理サービスは、知的財産部と、特許事務所や知財事務サポートを行う外部パートナーに導入され、特許業務の共通管理基盤として40名弱が利用している。年間170件にのぼる出願に対して、社内の特許チームは4名の担当者で運用している状況だ。公報検索システム連携や審査経過情報取込などのオプションを利用し、特許の出願から権利維持までの手続きを効率化。同社が描く知財DX推進に役立てている。
 「我々の業務だけを効率化するのではなく、パートナーを含めた全体の業務体験としてのUXを最適化するなど、全体を俯瞰して業務をデザインすることを意識しました。事務担当者の入力業務などを極力減らせたことで、全体の工数が50%削減できました。また、運用における課題や実務担当者の要望に対して、プロトタイプをフォルダごとに作成できるため、導入後においても我々にて検証と改善を繰り返し行えることも評価しています」と奥山氏は高く評価する。同時にクラウド環境となったことで、サーバー管理の負担も減ったことも大事なメリットだ。

 さらに、入力作業のみに従事していた事務担当者が新たに特許実務にも携われるようになった。「これまでできていなかったデータメンテナンスはもちろん、実際にゲームをプレイしてレポートを作ったり、IPランドスケープのためのデータを解析したり、特許実務に関連した業務に関わってもらえるようになりました」と奥山氏。出願数の増加や実務担当者に求められる業務範囲が拡大する状況においても、少数精鋭で同様の業務レベルを維持できるようになった点も見逃せない。また、クラウド環境に移行したことで情報が知財管理サービス内に集約でき、各人の業務の進捗が確認でき在宅ワークにもスムーズに対応できるようになったことも評価の1つに挙げている。

蓄積された知財情報を開発力の向上や人材育成に役立てたい


 今後は、知財管理サービス内に蓄積された情報を有効活用できる仕組みづくりに取り組んでいきたいという。その一環として業務効率化を図るため、データ分析ツールとして活用できるウイングアーク1st株式会社のBIダッシュボードMotionBoardを導入。「データハンドリングに優れたMotionBoardを支払処理の自動化、分析にも役立てています。併せて、本来のデータ分析ツールとして特許情報の解析も進めています。知財管理サービスとMotionBoardを組み合わせて担当者ごとの進捗状況や実績(評価)を可視化するといったことにもトライして、さらなる業務の効率化および適切な評価を進めていきたい」と奥山氏。

 特にデータ活用に関しては、これまでに蓄積された貴重なアイデア(無形資産)の情報をうまく活用し、開発メンバーの新たな発想につながるきっかけづくりに役立てたいという。「知的財産部の役割として、データ分析した結果を社内の開発メンバーと共有するなど、開発のヒントや新規事業の種にできるような情報提供をしていきたい。そして、知財情報をうまく活かすことで、新しいアイデア(事業)を考え出せる社員が育ち、その社員が生み出したアイデアを出願していくといった良いサイクルをつくりたいと考えています」と奥山氏は将来を見据えた展望を語る。

 特許業務の効率化を強力に推進することで、データ活用も含めた知財戦略のDXへの取り組みを加速させている同社。今後も東芝が提供する知財管理サービスをうまく活用し、新たなビジネス創出に向けた活動を続けていくことだろう。

SOLUTION FOCUS


知財管理サービス

知的財産戦略の業務遂行を強力に支援する東芝の「知財管理サービス」ソリューション。
知的財産に関わる様々な情報をクラウド上で一元管理。
お客様独自の管理項目や画面、帳票、業務フローを用途・目的に合わせて柔軟に設定可能。
ノンカスタマイズで柔軟性の高いシステムを実現し、業務効率化の推進、権利の有効活用まで特許管理業務をトータルにサポートします。

この記事の内容は2022年3月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
株式会社カプコン

創業
1983年6月11日

代表者
代表取締役社長 最高執行責任者 (COO) 辻本 春弘

本社所在地
大阪市中央区内平野町三丁目1番3号

事業概要
家庭用テレビゲームソフト、モバイルコンテンツおよびアミューズメント機器等の企画、開発、製造、販売、配信ならびにアミューズメント施設の運営

URL
https://www.capcom.co.jp/