利便性向上と商圏分析で顧客理解へつなげる
ポイント・顧客管理の中核に選ばれた「PointArtist®」
首都圏と近畿圏を中心に261店舗を展開する株式会社ライフコーポレーションでは、顧客サービス向上のためのポイントシステムを2000年に導入、2012年にはバッチ処理での運用が中心だったポイントシステムをリアルタイムな環境に移行した。そして今回、ネットスーパーなどとのポイント共通化や自社電子マネーを含めたキャッシュレス決済に取り組み、そのポイントを付与する顧客管理システムとして採用されたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供するポイント顧客システム「PointArtist®」だ。
Before
バッチ処理によるポイント付与システムだったため、利便性を向上させるための仕組みづくりとID-POS(購入者を識別できるPOSデータ)によって購買履歴と顧客情報から商圏分析のための基盤構築を計画。さらなる利便性向上に向け、ネットショップとのポイント共通化やキャッシュレス決済の仕組みを検討。
After
リアルタイムなポイント付与システムを導入することで、顧客の利便性向上を実現。購買履歴を収集することで商圏分析も可能となり、販促活動に生かすことができる基盤の構築に成功。キャッシュレス決済に対応することで、利便性のさらなる向上とレジスタッフの負荷軽減にも貢献している。
「PointArtist ®2」へ移行しました。
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顧客の立場に立って行動するために
「志の高い信頼の経営を通じて社会の発展向上に貢献する」を経営理念として、食品スーパー「ライフ」を中心に国内261店舗を展開している株式会社ライフコーポレーション。多くの人々に親しまれている「ライフ」に加えて、健康を意識した品揃えが中心の「ビオラル」や、高感度な情報発信を行ない日々の買い物に楽しみを提供する「セントラルスクエア」など、新業態の展開にも注力している。そんな同社では、「お客さまの立場で考え行動する会社」を風土改革の1つとしており、実際にお客さまの声を聴きながら品揃えや売り場を改革していこうという試みが行われている。そこで重要なのが顧客にポイントを付与していく仕組みだ。
同社のポイントサービスは、「ライフポイントカード」をベースに2000年からスタートしている。このポイントシステムがあることで、商圏の傾向が分析でき、お客さまが求める声をとらえることができるようになっていた。
リアルタイムなポイント付与に刷新することを計画
経営企画本部長 兼新規事業担当 常務取締役
森下 留寿 氏
しかし、この長年運用してきたポイントシステムは、実は従来の仕組みではデータが夜間にバッチ処理される運用となっていた。「当時はポイントを獲得してもその場で活用できず、後日店舗に設置してあるポイント照会機で累計ポイントをご確認いただき、そこでポイントを発券していただく必要がありました」と常務取締役 経営企画本部長 兼 新規事業担当 森下 留寿氏 は当時の課題について振り返る。そこで、2012年にはリアルタイムにポイント情報が反映される仕組みを構築し、顧客の利便性をこれまで以上に向上させている。
また、店舗にお越しいただけない方を掘り起こすための施策として、ECサイト「ライフネットショップ」や店舗の商品をネットから発注できる「ライフネットスーパー」を運営しているが、ネットショップで獲得できるポイントを店舗でのポイントと共通化することも、利用者の利便性を高めるためには必要だった。さらに、レジで小銭を取り出す手間を減らすことで顧客の利便性を高めながら、人材確保が難しいレジスタッフの省力化を目指して、キャッシュレスによる決済が可能な仕組みも検討することになっていった経緯がある。「シニアのお客さまも増えていく中で、少しでも便利にご利用いただけるよう、クレジット決済や独自の電子マネーの導入などを通じて、キャッシュレス決済を実現したいと考えるようになりました」(森下氏)。
顧客管理の中核システムの「PointArtist」
ポイントシステムの刷新以降、ネットショップで獲得するポイントとの共通化を目指すオムニチャネル化、そしてキャッシュレス決済までの一連のプロジェクトにおいて、重要な役割を果たしたのが東芝だった。「最初に行ったポイントシステムの刷新では、以前から利用してきた東芝テックのPOSレジとの親和性、システム連携が柔軟に行えることが大きな要件でした。そこで今回もグループとしての総合力を考慮し、東芝が提供するポイント管理のシステムを選択しました」と語るのは、システム企画部 部長 山根 康裕氏だ。この仕組みが、従来バッチ処理でしか行えなかったポイント付与をリアルタイムに行えるポイント顧客システム「PointArtist」だったのだ。
要件として東芝に提示したのは、400店舗、800万人ものカード会員に規模が拡大した場合でも対応可能なキャパシティを持っていること、そして膨大な数のトランザクションに迅速に対処できる性能を有していることだった。「リアルタイムなポイント付与だからこそ、レジでお客さまがポイントを利用する機会が増え、障害発生が大きく業務に影響してきます。しっかり冗長性が担保できるものも必要でした」(山根氏)。また顧客の情報を一元的に管理することになるため、強固なセキュリティ環境が確保できるかどうかも重要なポイントだった。「東芝にはグループウェアの導入から運用まで見てもらっていたので百貨店や小売店など豊富な実績やコストの面でも評価できたのです」と同部 担当課長 中島 和也氏は語る。
これらの要件をクリアし、PointArtistが同社の仕様にマッチしたため、新たなポイント管理の基盤として採用されたのである。
システム企画部 部長
山根 康裕 氏
顧客の利便性向上を実現し、商圏分析のための基盤を整備
システム企画部 担当課長
中島 和也 氏
現在は約260すべての店舗に新たなポイントシステムと連携可能なPOSレジが導入され、その数は3,500台を超える。インターネット上に展開するECサイトやネットスーパーでの顧客情報からポイント管理まで、その中心にPointArtistがある。実店舗におけるポイント会員は400万人を数え、ネット会員では約10万人あまりをPointArtistの顧客DB上で管理している。「実際のトランザクションは、ピーク時にはおよそ1時間あたり10万件をゆうに超えます。レスポンスの遅延もなく安定した稼働を続けているので安心です。また、東芝の柔軟な対応も良かったです」と山根氏は評価する。
新しいサービスとしてキャッシュレス決済のために対応したクレジットカード「LCカード」や独自の電子マネー型ポイントカード「LaCuCa(ラクカ)」の運用を2016年7月から開始している。それぞれのカード会社やインテグレータが複数介在しており、マルチベンダによるシステム導入だった。「プロジェクト的にバラバラになりがちですが、最終的にデータが集中するのは、顧客情報を管理しているPointArtistです。今回導入した「LCカード」「LaCuCa」も会員情報とポイントをPointArtistで一元管理しています。プロジェクトを積極的に主導していただき、うまくまとめていただくことができました」と中島氏も評価する。
今回のプロジェクトを通じて、どんな商品がどの店舗でどれだけ売れたのかが把握できるID-POSの仕組みを整備し、PointArtistが持つ顧客情報と紐づけることで商圏ごとの詳細な情報を分析できる基盤整備ができた。「店舗ごとの商圏分析も進めており、売り場のラインナップを店舗ごとに変更するといったことも可能になりました」と森下氏。また、「リアルタイムなポイント付与についても安定したレスポンスが維持できており、レジスタッフの心理的な負担は以前に比べて軽減されていると思います」と森下氏は笑顔で語る。
プロジェクトを主導した東芝については、「インフラを含めたシステム基盤をきちんと構築していただけて感謝しています。システムにも精通しており、何かあればエンジニアの方が前面に出て対応してくれるため、とても助かっています。提案内容やシステムの実装力なども良く、とても信頼できる会社だという印象です」と中島氏は評価する。
AIも含めた業務効率化の仕掛けにも期待
現状は、リアルな店舗での顧客情報やネットショップ、ネットスーパーの顧客情報はPointArtistによって管理されるようになったので、これらを統合的に管理できる統合顧客データ基盤の構築など、新たな展開も視野に入れている。また、実際の来店履歴や購入履歴からクーポンを発行するなど、より効果的な販促施策への取り組みも今後加速させていきたいという。
AIなどの技術を応用し、最適なお客さまサービスにつながるような未来も山根氏は描いている。「店舗ごとにサービスを考えるのではなく、AIなどがうまく活用できるとうれしいですね。その部分では東芝の技術力に期待しているところです」。また、将来的には欲しい情報をスマートフォンに登録しておき、商品のあるエリアに近づくとポップアップで知らせるなど、ITを活用した活動にも取り組んでいきたい考えだ。「不特定多数の人に不特定な情報を伝えるのではなく、よりお客さま個人に寄り添った情報を提供していきたいですね」と森下氏。
もちろん、他の領域にも新たな仕組みを考えたいと森下氏は語る。「これからは労働力の不足という課題の中でいかに業務を効率良くするか検討しなければなりません。最終的には人の判断が介在しますが、AIを含めたさまざまな技術で効率化していく仕組みは今後も検討したい。ぜひ新たな提案も楽しみにしています」と東芝に期待を寄せる。
また、「過去の情報に基づいた判断材料があるということは私たちの大きな強みとなります。商圏に対するきめ細かな分析が、これまで以上に行えるようになるのが楽しみです」と森下氏は今後を明るく語る。
PointArtistが持つ顧客情報を起点に、同社はこれからも新たな施策に挑戦していく。そのための提案や新たな仕組みの実装に、東芝グループの技術力が今後も生かされていくことだろう。
山根 康裕 氏(左)、森下 留寿 氏(中)、中島 和也氏 (右)
この記事の内容は2016年7月19日に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
株式会社ライフコーポレーション
設立
1910年
代表者
代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者) 清水 信次
本社所在地
大阪市淀川区西宮原2-2-22(大阪本社)
東京都台東区台東1-2-16(東京本社)
事業概要
首都圏と近畿圏を中心に261店舗を展開するスーパーマーケットチェーン