店頭での商品説明やプレゼンテーションの場で、いろいろなロボットが登場し始めています。人とロボットが力を合わせて共に活躍する。そんな新しい社会がまた一歩、実現に近づきました。株式会社FRONTEOコミュニケーションズ(以下、FRONTEOコミュニケーションズ)の人工知能搭載ロボット「Kibiro(キビロ)」に、東芝デジタルソリューションズのコミュニケーションAI*「RECAIUS(リカイアス)」の音声認識・音声合成技術を搭載。RECAIUSによって、人の声を聞く、人に語りかけるといった能力が大きく改善されたKibiroは、人の心をくすぐり、ロボットへの親近感を促す、人とロボットの共生社会にふさわしいパートナーとして大きな注目を集めています。ここでは、AIロボットとRECAIUSとの共創事例を通じて、人とロボットのコミュニケーションにより広がる世界をご紹介します。
* AI:Artificial Intelligence (人工知能)
未来を感じさせる
人工知能搭載ロボット「Kibiro」
かつては映画や小説、漫画の中での夢物語だったロボットが、徐々に現実の暮らしや仕事に入り込み始めています。長い間、ロボットといえば、工場などでものを生産するために使われる産業用ロボットが主流でした。危険性が高かったり、スピードや正確性が求められたりするような人の作業を代替。生産効率の向上に寄与し、製品コストの低減や品質の向上に重要な役割を果たしてきました。
これに対して現在は、人との共生や人の手助けを目的にしたロボット技術への取り組みが活発です。接客やサービスの領域をはじめ、医療や介護、農業といった分野における人との接点、さらにはスマートホームのデバイスとしてイノベーションを創出し、少子高齢化など社会が抱えるさまざまな課題を解決する起爆剤としての可能性に、大きな期待が寄せられています。
かつての未来が確かな現実へと進化していくための鍵を握っているのが、人とロボットとのコミュニケーションの技術です。話を聞きながら相手の想いをくみ取り、自然な話し言葉で瞬時に受け答えをする。まるで家族や友達、同僚に相対しているような親近感を与え、人が感情移入してしまうようなコミュニケーションのシステムが、人とロボットが共に生きる新しい社会には必須であるといえるでしょう。
人工知能やデジタルコミュニケーションの分野などで数多くのイノベーションを実現してきたFRONTEOグループでは、ロボットが持つ無限の可能性に早くから着目されていました。「人々の暮らしに溶け込み、共に過ごすことで日常を豊かにする」をコンセプトに、2015年、同社初の人工知能搭載ロボット「Kibiro」の開発に着手することを発表。内蔵したスピーカーやマイクで言葉のやり取りを通じて収集したデータをクラウド上で分析し、相手の趣味嗜好(しこう)にマッチした会話を提供するという画期的なものでした。
2016年から本格的に提供されはじめたKibiroは、生まれ持ったコミュニケーション力に、可愛らしいルックスと愛らしい動作の魅力も相まって高い評価を獲得。家庭や、企業、商業施設などに、順調に導入が拡大されていきました。
RECAIUSから2つの技術を提供
高品質な会話と最適なコストを両立
コミュニケーションロボットの先駆けともいえる地位をいち早く確立したKibiroでしたが、FRONTEOコミュニケーションズではある課題を抱えていました。世の中のニーズを見据えながら柔軟な市場展開を図りたい同社では、多言語化への期待が大きくなっていました。
2016年11月に開催されたイベントでKibiroに出会い、そのポテンシャルの高さを十二分に実感していた東芝デジタルソリューションズは、同社の課題を知り、東芝コミュニケーションAI「RECAIUS」を紹介しました。RECAIUSが持つ、業界トップクラスのメディアインテリジェンス技術からなる多種多様なサービスの中から、「RECAIUS音声認識サービス」と「RECAIUS音声合成ミドルウェア ToSpeak」を、柔軟な料金体系で提供。FRONTEOの人工知能技術と連携させることで、コミュニケーションのさらなる高品質化を図りながら、コストの最適化の実現を目指しました(図1)。
同社は、これらサービスおよびミドルウェア製品のベンチマークテストを実施。「話し言葉」の認識に強く、辞書のチューニングが容易でカスタマイズ性に優れているRECAUIS音声認識サービスのテストでは、その強みがいかんなく発揮され、高い評価をいただきました。一方、RECAIUS音声合成ミドルウェア ToSpeakは、表現力豊かで自然な、まるで人間のような発話と良好な音質を、小さな容量のメモリで実現。この技術は、カーナビゲーションで国内8割を超えるシェアの実績において培われたもので、現在、スマートフォンやタブレット端末のアプリケーションソフトなどにも組み込まれています。豊富な実績に裏打ちされた高度な技術力が、FRONTEOコミュニケーションズの評価でも存分に証明され、KibiroにRECAIUSを搭載することが決定したのです。
ロボットとの連携で、
産業や社会に豊かさを広げていく
私たちが長年培ってきたRECAIUSの技術が、初めて商用ロボットに採用されたというニュースは、社内外から大きな反響を持って迎えられました。RECAIUSの高度な音声認識・音声合成技術を搭載したKibiroは、FRONTEOの人工知能技術と連携しながら、より自然で親しみやすい、人間らしい、人を想うロボットへと進化していくことでしょう。人の話を聞き、考え、TPOに応じて声色や抑揚を変えながら、相手の立場に立って小気味よく語りかけてくる。そんなKibiroの姿は、人が感情移入できる、親近感が一層深まるロボットとして高い期待を集め、接客や介護、教育といったコミュニケーションが重視される分野で既に導入が進んでいます。
しかし今回の採用は、FRONTEOコミュニケーションズと私たちが新しい世界を切り拓く、ほんの第一歩に過ぎません。
同社と私たちは今後も共創を続け、ロボットの持つ可能性をさらに引き出して、Kibiroが活躍する場を拡大していこうというビジョンを共有しました。金融・流通や、官公庁、社会インフラ、エネルギーなど、東芝グループが事業を展開し、その強みを発揮できる分野における各種システムとKibiroとの連携です。例えば、HEMS*とつながったKibiroが「そろそろエアコンの温度を下げますね」と可愛らしく話しかけてきて、自ら温度を調整してくれる。そんなシーンは想像するだけで微笑ましく、スマートホームの魅力をぐんと押し上げてくれます。東芝グループの技術とKibiroとのつながりは、先進のテクノロジーによる快適さを人々にわかりやすく伝え、豊かな社会を広げる大きな原動力となるはずです。
* HEMS:Home Energy Management System
東芝デジタルソリューションズは、今後もFRONTEOコミュニケーションズや他社パートナーとの共創に積極的に取り組んでいきます。RECAIUSで進化したロボットは、私たちが幅広いフィールドで培った技術と融合し、産業や社会のさまざまな領域で人とロボットの共生による新たな価値を次々と創出していくことでしょう。
※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年11月現在のものです。
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