アナリティクスAIサービスのさらなる高品質化を目指してノウハウを形式知化
東芝アナリティクスAI「SATLYSTM」は、東芝の「ものづくり」の実績から得た知見をAIの設計に活かし、高精度な識別、予測、要因推定、異常検知、故障予兆検知、行動推定などを実現します。お客さまとの共創を通して、AIモデルの設計・学習およびAI推論サービスの構築を行い、検査データ、センサーデータ、業務データ、行動データなどの解析により、生産性向上や業務効率改善を行います。SATLYSTMのサービスプロセスを図1に示します。
AI(機械学習)モデルは、学習データから帰納的に構築します。そのため、AIのプロジェクトにおいては、学習がどれくらいうまくいくか、テストデータや運用時の未知のデータに対する推論性能がどれくらいになるかなど、「実際にやってみないと分からない」という難しさがあります。AIのプロジェクトは、設定した課題の解決アプローチを仮説として立案し、検証するという仮説検証型の進め方となります。この仮説検証は、ビジネスレベルの効果検証というマクロなスコープもあれば、実装レベルの実現性調査といったミクロなスコープも考えられます。
お客さまとAIの共創プロジェクトを進める際には、このような多くの活動の選択肢の中から、次に取り組むべき仮説検証テーマを協議、選定するとともに、取り組みをステップごとに分解して、段階的に合意しながら進めます。しかし、様々なスキルセットを持つAI技術者が、個々のお客さまに合わせてプロフェッショナルサービスを提供すると、サービス品質にばらつきが出てしまうおそれがあります。そこで当社は、独自の「SATLYSサービス提供ガイドライン」に則ることで、担当者によらない高い品質のサービスを提供しています。「SATLYSサービス提供ガイドライン」は、製造、社会インフラドメインなどのAIの共創活動で蓄積したノウハウからエッセンスを抽出し形式知化したもので、図1に示したフェーズごとに整備しています。
例えば、デジタルコンサルテーションフェーズのガイドラインでは、ものづくり現場におけるワーク不良要因分析や、製造設備異常検知などをモチーフに挙げながら、検証すべき仮説を立案するにあたってのポイントを解説しています。アセスメントの結果、検証すべき仮説が明確にならない場合においては、状況次第で「データ分析やAIモデル開発のフェーズに進むべきでない」といった提言も行うようにガイドしており、お客さまの最終的なビジネス効果を共通の目的として、ミッションクリティカル領域への適用に向けた合理的な共創となるように方向付けしています。AI導入準備フェーズでは、図2のようなコンテンツ群としてガイドラインを整備しています。データ分析やAIモデル開発で行うべき作業やその進め方を標準化して、共創の効率化を目指しています。
これらの「SATLYSサービス提供ガイドライン」は、当社所属の約4,000人が閲覧可能なアナリティクスAI社内サイトに掲載しています。アナリティクスAI社内サイトでは、「SATLYSサービス提供ガイドライン」のほかにもAI適用事例などの関連情報を集約し、アナリティクスAI関連知見の社内共有を促進しています。今後も、「SATLYSサービス提供ガイドライン」の改善・浸透をはかっていくことで、お客さまにいつでも高品質なサービスを提供し、お客さまのビジネスでのAI活用を実現してまいります。
- [1] 東芝アナリティクスAI ”SATLYS” のディープラーニングモデル開発プラットフォーム(東芝レビュー) (株式会社東芝)