下水道展’24東京[展示会・イベント レポート]

本展示会では東芝グループブースにご来場いただき、誠にありがとうございました。
今回の展示の中から東芝グループ各社のトピックスをご紹介します。

今回の東芝グループブースは「ともに創る、水の未来」をテーマとして、東芝インフラシステムズ、東芝インフラテクノサービス、東芝テリーが出展いたしました。

東芝インフラシステムズの出展からは2点をピックアップいたします。

1点目は、回転繊維体を用いたOD法向け前処理装置「HabukiTM」です。

日本全国には約2,000の下水処理施設がありますが、そのうち地方都市に所在する中小規模施設約1,000箇所は、反応タンクに下水を流入して空気との撹拌を行い、微生物により有機物の酸化・分解を行う「オキシデーションディッチ法(OD法)」という処理方法を採用しています。

現在、各地方では人口が減少し、そのため下水処理施設の統廃合が検討されていますが、従来方式のままでは、複数地域の下水を集約するためには反応タンクの増築による処理能力の強化が必要となります。東芝インフラシステムズが開発した「HabukiTM」は、この反応タンクに流入する前段階の処理として活躍する、回転生物接触法を利用した新しい水処理装置です。コンパクトながら処理能力の高い回転繊維体によって、15分程度で下水中のBOD(生物化学的酸素要求量)を約70%も低減することができるため、その後の反応タンクでの処理負荷を大幅に抑え、既存の反応タンクのままで流入量の増加に対応することができます。

また、施設の統廃合がない場合でも、OD法の下水処理施設のうち約80%は稼働開始から20年以上が経過しており、老朽化対策や耐震補強のための設備更新が必要となってきています。特に反応タンクが1系列しかない施設では、日々運用されている反応タンクを止めることができないので、改修のために新たにもう1系列増築する、あるいは仮設で水処理を行う必要がありますが、「HabukiTM」を利用すれば従来よりも小さな反応タンクで処理が可能なため、増築スペースも小規模に抑えることができます。

「HabukiTM」は1分間あたり3~8回転と低速で運用するため消費電力量も少なく、非常にシンプルな構造なのでメンテナンスも容易。このように「コストを省く」「スペースを省く」「手間を省く」の「省く」から「HabukiTM」とネーミングされました。

2024年7月にリリースされ、今後各地の自治体・処理施設の様々な課題への対応に大きな期待が寄せられています。

※HabukiTM出口水の溶解性BODを測定した場合の見かけ低減率

2点目は、従来よりご紹介している上下水道統合プラットフォーム「TOSWACS-NestaTM」です。

どこに住んでいても、安全で良質な水を飲むことができ、適切な水処理によって衛生的な暮らしができるのが日本の特色ですが、その維持管理のためには、高齢化によるベテラン技術者の不足、老朽化設備の更新、年々高まる災害への危機管理対応などの多くの課題があります。東芝インフラシステムズの「TOSWACS-NestaTM」は、長年の豊富な知見と実績、技術とデータの力を組み合わせて、これらの課題解決のための最適なソリューションをご提案するアドバンスドプラットフォームです。

技術者の不足や危機管理対応の一つとして、下水処理プラント運転の自動化がありますが、現状では、「設定した数値・設定したタイミングの通りにプラントが動く」という仕組みが一般的です。ただし現状の、オペレータが状況を都度判断して制御設定する必要がある自動制御では課題解決には至りません。「TOSWACS-NestaTM」では、AIや制御技術を活用して処理水質とコストを最適化したプラント運転の自動化により、設備運用の省力化を提供します。その際、自動で決定された制御モードの選択や設定値などの決定プロセスを可視化し、わかりやすくオペレータへ提供することで、安心・安全なプラント運転の自動化を実現します。

基本の監視アプリケーションの他にニーズに応じて付加価値アプリケーションを自由に組み合わせられる「TOSWACS-NestaTM」。例えば施設診断ソリューションとしては、「異常兆候監視アプリケーション」や「ポンプ性能推定アプリケーション」で、多くのデータの蓄積・分析を元に、プラントや機器の異常兆候を早期に検出します。機器が故障してからの突発対応ではなく予防的な保守・更新を行えるので、無理のない人員手配(危機管理対応の省力化)や予算計画が可能となります。
付加価値アプリケーションはコストやセキュリティポリシーに応じて、オンプレミスでもオンプレミス+クラウドでも構築可能です。クラウドの場合は、インターネットを介して遠隔地からの監視・操作ができるので、より柔軟なかつ効率的な人材配置が可能です。

2024年7月に東芝インフラシステムズ電機サービスセンターと東芝トランスポートエンジニアリングが統合して新たに発足した東芝インフラテクノサービスは、今回、上下水道施設の運転管理・維持管理サービスの中から「設備台帳システム」を展示いたしました。

「設備台帳システム」は、ポンプを始めとした各種機器の諸元(型番、導入日、設置場所、点検記録、工事・修繕記録、部品在庫、部品交換記録等)を入力するブラウザベースの管理台帳で、機器ごとに配置図などの関連ドキュメントや画像のアップロードもできます。点検を行った際にはその診断結果(評価)を入力すると、データを蓄積して機器の状態(CBM値やTBM値)をグラフ化し、将来の更新目安をわかりやすく可視化。入力した各種データは機器単位でレポートとして出力できるほか、更新後経過年数や修繕履歴の一覧から今後発生する修繕・更新のコスト予測も可能なため、予算平準化などのアセットマネジメントに役立ちます。

東芝テリーの出展品からは、下水本管用自走式カメラシステム「iX001A / iX001A-S」をご紹介いたします。

日本国内の下水管は設置後50年以上が経過している箇所も多々ありますが、すぐに全てを交換することは難しいため、維持管理のためには日々の検査が欠かせません。カメラの下にタイヤが付いた自走式の本装置は、標準サイズと小型サイズの2種類のカメラの載せ替えで、人間が立ち入れない直径Φ150~800mmの下水本管の検査が可能。カメラのヘッドはリモートコントロールで左右に動かせるので、管の側面を近距離から撮影することができます。カメラと自走車は20m防水なので全体が水に浸かっても支障なく、また本体に重さがあるので水流の影響受けにくい構造となっています。

500mケーブルの付いた有線タイプで、制御装置本体とコントローラやタブレット操作盤、およびモニター・レコーダーなどの装置を作業車に搭載し、そこからカメラをマンホールの中に下ろして利用します。今回の展示会では、株式会社カンツール様ブースにて実際にワンボックスカーに本装置を搭載した様子も展示していただきました。

産業用カメラ製造で40年以上の実績のある東芝テリーの下水本管用自走式カメラシステムは、全国の数多くの自治体に採用されています。

これからも、培ってきた確かな技術と信頼を礎に、上下水道インフラの持続的な発展を支える東芝グループにご期待ください。