生産技術センター

東芝の研究開発・技術

生産技術トピックス

熱‐構造‐音響解析によるAl板の超音波接合挙動の予測技術開発で、Mate2025優秀論文賞(溶接学会)を
受賞

公開日 2025年3月5日

  • 実装技術

 本賞は、第31回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム(Mate2025)において、一般社団法人溶接学会より、「内容、実用性、発展性などの観点から総合的に優れた研究開発論文」に与えられるものです。従来、予測困難であった超音波接合挙動をシミュレーションにより予測する手法を提案した内容が評価され、今回の受賞となりました。被表彰者は当社の久保悠、相澤隆博、篠原勇人、東條啓で、授賞式は2025年1月29日に実施されました。以下に技術の概要を紹介します。
 超音波接合は、アルミニウムなどの材料を超音波振動と圧力を加えて接合する方法であり、半導体や二次電池産業で広く使用されています。しかし、接合部の良否判断が難しく、接合条件の適正化に課題があります。そこで、本開発では、接合状態を予測し、試作なしで接合条件を最適化するための熱-構造-音響解析技術を開発しました。2枚のアルミ板の積層構造をモチーフとして、熱-構造解析により超音波接合中の変形と温度分布を予測し、音響解析により接合率を予測する手法を提案しました。予測した接合率は実現象と同等になることを確認し 、開発した手法の妥当性を示しました。
 今後は、より実製品に近い構造に対する開発技術の適用を検討し、製品開発LTの短縮に貢献していきます。

関連部門・団体

なし

掲載誌等

Mate2025
提案した超音波接合挙動の予測技術

複数種類の時系列作業情報を統合的に扱う作業推定手法で、情報処理学会DICOMO2024優秀論文賞を
受賞

公開日 2025年2月17日

  • 生産エンジニアリング技術

 本賞は、情報処理学会が主催するDICOMO2024において、「学術・技術の普及に貢献する優秀な論文を表彰する」ものです。このたび、作業に関連する各種時系列情報から作業内容を高精度に推定する手法の優位性が認められ、受賞につながりました。被表彰者は当社の大島宏友、福田雅允と共同研究先の大阪大学の前川卓也教授、東京都立産業技術大学院大学の浪岡保男教授です。授賞式は2024年9月20日に開催されました。以下に技術の概要を紹介します。
 製造現場では、作業の進捗状況をタイムリーに把握し、計画に対する遅れの原因解明と改善施策により生産性を向上させています。しかし、複雑な組立作業では人手で行われる作業の進捗状況を自動で判定することは難しく、現状、作業者自身が進捗を記録するか、観測者を準備して進捗を記録しています。作業進捗を自動で把握することができると、作業者は作業に専念できるため、作業効率が向上します。また、観測者を準備する必要がなくなることで生産性の向上にもつながります。このため、作業内容を推定して進捗を自動で把握する技術の開発が求められています。
 そこで、作業現場を撮影した映像に対して、GNN(Graph Neural Network)およびLSTM(Long Short Term Memory)を組み合わせて、複数の作業情報の時系列遷移から作業内容を推定する技術を開発しました。GNNはグラフ構造を定義することで、それらのつながりを考慮した学習をすることができます。また、LSTMは時系列的に変化する特徴を捉えて学習することができます。このモデルは、作業者の骨格位置、製品の組付け状態、および製品に対する作業者の両手作業箇所の情報から、各グラフのつながり関係とその時間的な変化を統合的に学習して推定することが可能です。実際の組立工程で行われた作業を撮影したデータで本手法を評価し、作業内容の推定精度が90%を超えることを確認しました。
 今後、当社の国内外の工場に本技術・手法を適用し、生産性の更なる向上を図っていきます。

関連部門・団体

大阪大学、東京都立産業技術大学院大学

掲載誌等

情報処理学会 DICOMO2024
GNNとLSTMを組み合わせた作業推定手法の概要