生産技術センター

東芝の研究開発・技術

生産技術トピックス

「並列動作を考慮した知能化ロボットの状態管理技術の開発」で2024年度日本機械学会奨励賞(技術)を受賞

公開日 2025年6月5日

  • 知能化ロボット技術

 本賞は、一般社団法人日本機械学会において、「機械工業または広く産業社会に関わる主として技術上の業績をあげた個人」に与えられるものです。知能化ロボットにおいて、上位の管理モジュールに状態管理機能を持たせ、複数ハードウェアや機能モジュールの連携動作を実現する取り組みが評価され、本賞を受賞しました。被表彰者は、当社の茶谷晴利で、2025年4月24日に表彰式が行われました。以下に技術の概要を紹介します。
 物流分野での人手不足を解消するため、物流倉庫で人手のかかるピッキング作業をロボットにより自動化するニーズが高まっています。高速な動作と多様な商品への対応を両立するには、複数のセンサや多関節アーム、ハンドといった、様々なハードウェアの連携が求められます。これに対し、各要素で発生したエラーがシステム全体に影響してロボットが停止する問題がありました。そこで、知能化ロボットの並列動作を考慮した状態管理技術を開発しました。上位の管理モジュールに状態管理機能を持たせ、下位のハードウェア制御をサブシステム化することで、エラーが発生しても動作を継続することが可能なシステムを構築しました。また、システムの状態を考慮したハードウェアの連携動作により、複数のタスクの並列制御を実現し、高速で緻密な動作を生成できます。
 今後、より多様な知能化ロボットの動作生成へ展開し、幅広い現場での作業自動化の推進に貢献していきます。

関連部門・団体

株式会社東芝 セキュリティ・自動化システム事業部

掲載誌等

日本機械学会
ピッキングロボットと並列化されたシステムの概要

超音波カプラント液が不要なスポット溶接検査ロボットの開発で、SI2024優秀講演賞を受賞

公開日 2025年5月20日

  • 知能化ロボット技術

 本賞は、公益社団法人計測自動制御学会のシステムインテグレーション部門主催の第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2024)において、「優秀な研究講演を行った講演者」に対し与えられるものです。超音波検査におけるカプラント液の不要化という技術革新に関する講演が認められ、受賞につながりました。被表彰者は当社の齊藤真拡、東芝インフラシステムズ株式会社の岸伸享、東芝検査ソリューションズ株式会社の中村賢典で、2025年2月17日に受賞しました(所属は受賞当時のもの)。以下に技術の概要を紹介します。
 スポット溶接は自動車車体の組立に不可欠な接合方式です。従来、溶接部の接合状態の検査は、熟練作業者による破壊検査が主流でした。東芝では、超音波非破壊検査装置Matrixeye™とロボット制御技術を組み合わせた自動検査ロボットを開発し、検査の省人化と信頼性向上を実現しています。
 今回、自動検査ロボットにおいて、超音波の伝搬に必要な液状カプラント液に代わり、固体ゲル状の「ソフトシュー」を接触媒質として利用する技術を開発しました。これにより、カプラント液の塗布・除去作業が不要となるため、検査効率の大幅な向上が期待できます。
 ソフトシューは、Matrixeye™専用に開発されたウレタンゲル素材で構成され、カプラント液の代替として超音波伝搬を実現します。発表では、自動車製品部品であるホワイトボディを用いた評価実験により、ソフトシューの適用性を示しました。ソフトシューでは、カプラント液使用時と比較し、一部測定値のばらつきが増加するものの、多くの条件で実用性のある測定結果が得られました。
 今後、ソフトシューの形状や材質の改良を進め、さらなる実用性と信頼性の向上を図ります。

カプラント液が不要となるスポット溶接検査ロボット用ソフトシュー

ピッキングロボットシステムにおける対象物体の把持可否判定機能の開発でSI2024優秀講演賞を受賞

公開日 2025年5月20日

  • 知能化ロボット技術

 本賞は、公益社団法人計測自動制御学会のシステムインテグレーション部門主催の第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2024)において、「優秀な研究講演を行った講演者」に対し与えられるものです。ピッキングロボットシステムに関連する把持可否判定機能の開発に関する講演が認められ、受賞につながりました。被表彰者は当社の十倉征司、古茂田和馬、田中淳也、紺田和宣、大賀淳一郎、小川昭人で、2025年2月17日に受賞しました。以下に技術の概要を紹介します。
 近年、物流現場での人手不足を受け、作業の自動化や効率化が求められています。しかし、多種多様な物品を扱う物流現場作業においては全ての物品をロボットで扱うことが難しく、ロボットによる自動化を行う場合、ロボットで対応可能な物品と非対応な物品に仕分けする必要があります。そこで、本発表では倉庫内でのピッキング作業を対象に、ロボットが失敗する要因を分類し、分類結果を踏まえた多段式の判定方法を提案しました。加えて、一連の判定の一つである、ロボットに搭載したセンサで検知不可な要因に関する判定について、平易な質問文を利用者に回答してもらうことで簡易的に判定を行う機能を開発し、発表しました。
 今後は、より高い判定精度の実現に向け技術開発を行い、ピッキングロボットシステムの現場投入に貢献していきます。

関連部門・団体

株式会社東芝 セキュリティ・自動化システム事業部

掲載誌等

第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2024)
把持可否判定機能開発の取組み概要

熱‐構造‐音響解析によるAl板の超音波接合挙動の予測技術開発で、Mate2025優秀論文賞(溶接学会)を
受賞

公開日 2025年3月5日

  • 実装技術

 本賞は、第31回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム(Mate2025)において、一般社団法人溶接学会より、「内容、実用性、発展性などの観点から総合的に優れた研究開発論文」に与えられるものです。従来、予測困難であった超音波接合挙動をシミュレーションにより予測する手法を提案した内容が評価され、今回の受賞となりました。被表彰者は当社の久保悠、相澤隆博、篠原勇人、東條啓で、授賞式は2025年1月29日に実施されました。以下に技術の概要を紹介します。
 超音波接合は、アルミニウムなどの材料を超音波振動と圧力を加えて接合する方法であり、半導体や二次電池産業で広く使用されています。しかし、接合部の良否判断が難しく、接合条件の適正化に課題があります。そこで、本開発では、接合状態を予測し、試作なしで接合条件を最適化するための熱-構造-音響解析技術を開発しました。2枚のアルミ板の積層構造をモチーフとして、熱-構造解析により超音波接合中の変形と温度分布を予測し、音響解析により接合率を予測する手法を提案しました。予測した接合率は実現象と同等になることを確認し 、開発した手法の妥当性を示しました。
 今後は、より実製品に近い構造に対する開発技術の適用を検討し、製品開発LTの短縮に貢献していきます。

関連部門・団体

なし

掲載誌等

Mate2025
提案した超音波接合挙動の予測技術

複数種類の時系列作業情報を統合的に扱う作業推定手法で、情報処理学会DICOMO2024優秀論文賞を
受賞

公開日 2025年2月17日

  • 生産エンジニアリング技術

 本賞は、情報処理学会が主催するDICOMO2024において、「学術・技術の普及に貢献する優秀な論文を表彰する」ものです。このたび、作業に関連する各種時系列情報から作業内容を高精度に推定する手法の優位性が認められ、受賞につながりました。被表彰者は当社の大島宏友、福田雅允と共同研究先の大阪大学の前川卓也教授、東京都立産業技術大学院大学の浪岡保男教授です。授賞式は2024年9月20日に開催されました。以下に技術の概要を紹介します。
 製造現場では、作業の進捗状況をタイムリーに把握し、計画に対する遅れの原因解明と改善施策により生産性を向上させています。しかし、複雑な組立作業では人手で行われる作業の進捗状況を自動で判定することは難しく、現状、作業者自身が進捗を記録するか、観測者を準備して進捗を記録しています。作業進捗を自動で把握することができると、作業者は作業に専念できるため、作業効率が向上します。また、観測者を準備する必要がなくなることで生産性の向上にもつながります。このため、作業内容を推定して進捗を自動で把握する技術の開発が求められています。
 そこで、作業現場を撮影した映像に対して、GNN(Graph Neural Network)およびLSTM(Long Short Term Memory)を組み合わせて、複数の作業情報の時系列遷移から作業内容を推定する技術を開発しました。GNNはグラフ構造を定義することで、それらのつながりを考慮した学習をすることができます。また、LSTMは時系列的に変化する特徴を捉えて学習することができます。このモデルは、作業者の骨格位置、製品の組付け状態、および製品に対する作業者の両手作業箇所の情報から、各グラフのつながり関係とその時間的な変化を統合的に学習して推定することが可能です。実際の組立工程で行われた作業を撮影したデータで本手法を評価し、作業内容の推定精度が90%を超えることを確認しました。
 今後、当社の国内外の工場に本技術・手法を適用し、生産性の更なる向上を図っていきます。

関連部門・団体

大阪大学、東京都立産業技術大学院大学

掲載誌等

情報処理学会 DICOMO2024
GNNとLSTMを組み合わせた作業推定手法の概要