生産技術センター

東芝の研究開発・技術

生産技術トピックス

多様な顧客ニーズに短納期で対応できる製品バリエーション抑制手法

  • 知識・情報システム技術

 多様な顧客ニーズへの対応として,仕様が近い過去の製品をベースに最適設計を行うと,リソース不足で設計リードタイムが増大し,機会損失が発生する一因となる。このため,低コスト・短納期で対応するには,顧客価値を損なわずに設計バリエーションを抑制して設計工数を大幅に削減し,提案型で営業する業務プロセスにシフトする必要がある。
 この課題を解決するため,知識ばらし™を併用した階層型クラスター分析による仕様集約に加え,営業情報とのひも付けによる競争力の高い市場の選別で,論理的に製品戦略を決定する手法を確立した。
 この手法を用いて列車空調事業での戦略策定を実施し,国内・海外298機種を15グループに集約して生産高とひも付け,一括企画により標準空調装置のラインアップ整備を進めた。更に,戦略策定及びラインアップ整備と並行し,標準機を前提とした業務プロセス改善も進め,提案型営業へのシフトを実現した。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
顧客接点における製品バリエーションの抑制

顧客接点における製品バリエーションの抑制

製品バリエーション抑制手法の概要

製品バリエーション抑制手法の概要

業務知識を有効に蓄積・活用する知識ばらし™データバンク

  • 知識・情報システム技術

 業務遂行に関わる知識やノウハウは,形式化して表現することが難しく,属人化や擦り合わせ不足による業務の後戻りなどが生じている。
 今回,知識やノウハウを構造化する知識ばらし™と,構造化された知識情報をデータベースに格納し,知識間の関連付け機能により再利用性を高める知識ばらし™データバンクを開発した。知識ばらし™は,戦略策定や,発想支援,知識継承といった目的に合わせ,記述内容や順序をテンプレートとして定義することで,作業効率と視認性を高めている。また,知識ばらし™データバンクは,専用RDF(Resource DescriptionFramework)スキーマを用いて意味付けした知識ばらし™のデジタルデータを蓄積する。更に,蓄積した複数の知識情報間で類似語を関連付ける言語処理により,個人の知識だけでは得られない気付きを促すような可視化も行える。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
知識やノウハウを蓄積・活用する仕組みの概要

知識やノウハウを蓄積・活用する仕組みの概要

ダイカスト鋳造法の品質と生産性の向上を支援する製造IoT技術

  • 機械構造・製造技術

 ダイカストは,溶かした金属を金型に注入・固化させ,高精度な部品を大量生産できる製法であり,近年,ダイカストマシンのプロセスパラメーターや稼働状態(品質など)といったプロセスデータをモニタリングして生産管理を行うことが一般的になってきている。製造ロス削減や歩留まり向上のためには,プロセスデータを分析して早期に改善することが重要だが,経験豊富な技術者でも,不良分類や,要因分析,対策立案などに長い時間を要することがあった。
 そこで,ダイカスト製造で品質不良があるとき,過去のプロセスデータの中で相関のあるものと結び付けて分析する製造IoT技術を開発した。この技術を使えば,製造工程での不良をいち早く検出して対策できる。今回,製造現場での実証実験を行い,プロセスデータによる品質管理の有効性を確認できた。
 今後は,取得したプロセスデータを活用したシミュレーションを行うことで,現象を予測して良品を製造できるプロセスパラメーターを導出する自動制御技術などへ発展させていく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
ダイカスト工程における製造IoTの概要

ダイカスト工程における製造IoTの概要

既存機器のIoT化を可能にするCPSエッジツール

  • メカトロニクス技術

 生産現場では,既に稼働中のロボットやレガシーな自動化機器のデータをネットワークで収集し,最適なCPS(サイバーフィジカルシステム)を構築することが求められている。
 そこで,多様な機器に対し,センサーを簡単に後付けしてデータ収集を手軽に始められる,CPSエッジツールを開発した。これにはセンサーや,ネットワーク接続用のコネクターパネル,簡易見える化画面などが搭載されている。収集したセンサーデータに生産情報をひも付けるワークトラッキング機能を備えることで,品質向上や稼働率向上のための分析能力を高めた。また,機器に設置され,デジタル出力機能がないメーターをカメラで撮像してデータ化する機能も搭載した。これは,カメラ視野内でメーターの位置,大きさ,及び傾きが変化した場合でも,表示データを安定して読み取ることができる。
 今後,社内工場にCPSエッジツールを展開し,生産現場の効率向上や予防保全への活用を進めていく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
既存機器をIoT化できるCPSエッジツールの概要

既存機器をIoT化できるCPSエッジツールの概要

個別受注設計製品に対応する生産計画自動立案ツール

  • 生産エンジニアリング技術

 個別受注設計製品は, 製品ごとに要求仕様が異なるため,受注後に製品設計と工程設計が必要になる。更に,その生産計画では,顧客との納期調整や,各工程での内製/外製の判断,部材手配なども必要になる。このため,従来の生産計画立案は,担当者のノウハウに依存する部分が大きかった。
 このような背景から,営業部門が管理する案件情報や製品仕様に合わせた工程設計データなどを一元管理することで,設計・製造・試験工程の計画を自動で立案できる生産計画立案ツールを整備し,業務への適用を開始した。このツールを活用することで,製造工程ごと,あるいはサプライヤーごとの長期的な負荷見込みが可視化できるようになり,関連部門間の計画調整時間や生産管理担当者の計画立案時間を削減できた。
 今後,製品の多様化への対応力強化を目指してモジュール化を進めている設計データとの連携強化を図るとともに,蓄積された設計データや製造実績データを用いたAIを活用し,効率的な生産計画を短時間かつ高精度に導出する手法を開発していく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
個別受注設計製品の生産計画自動立案ツールの概要

個別受注設計製品の生産計画自動立案ツールの概要

目視検査を自動化するAI画像検査技術

  • 光応用・画像検査技術

 多くの工場では,製造工程における目視検査の自動化が課題となっている。高度な分析が可能なディープラーニングを用いたAIを適用するには,学習に必要な大量のデータ,特に不良データを準備する必要がある。また,判定結果の信頼性も求められる。
 これらの課題を解決するため,学習データの拡張技術と判定根拠を可視化する技術を開発した。学習データの拡張では,CG(コンピューターグラフィックス)合成などの画像処理技術により,様々なパラメーターをランダムに変化させることで,数万枚の学習用画像データの生成を可能にした。また,判定根拠の可視化では,AIの特徴マップから欠陥候補の特徴だけを取り出すことで,欠陥位置を強調する可視化を実現した。
 今後,この技術を利用して,製造現場へのAI画像検査技術の導入を加速させていく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
AIで目視検査を自動化するためのデータ拡張・判定根拠可視化技術

AIで目視検査を自動化するためのデータ拡張・判定根拠可視化技術

パワーデバイスの開発効率を向上させる高精度な電力損失シミュレーション

  • 制御技術

 回路に搭載された状態のときに,最高の性能となるパワーデバイス製品を開発している。今回,開発の後戻り防止や性能向上のため,デバイスが搭載される回路を模擬して高精度に電力損失を分析できる回路シミュレーション環境を開発した。
 開発したシミュレーション環境は,回路部品で生じる損失を精度良く算出できる等価回路モデルと高精度なデバイスモデルを組み合わせた電気回路モデル,及び任意の負荷に適切な電力を供給するための制御モデルで構成した。電圧・電流を自由に観測できるため,電力損失の詳細分析や実際の回路では測定が困難な現象の評価が可能である。
 このシミュレーション環境を活用することで,試作・実験の試行回数の削減が期待でき,低損失なデバイスを早期に市場展開できる。今後は,多様な顧客ニーズに対応するため,回路の種類を拡充していく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
パワーデバイスを搭載する回路の電力損失シミュレーション環境

パワーデバイスを搭載する回路の電力損失シミュレーション環境

製品バリエーション抑制手法の概要

製品バリエーション抑制手法の概要

ニアライン向けHe充填HDDの高品質封止を実現するレーザー溶接封止自動化ライン

  • メカトロニクス技術

 業界最大(注)容量(16 T(テラ:1012)バイト)のストレージサーバー用ニアライン向け3.5 型He(ヘリウム)充填HDD(ハードディスクドライブ)のレーザー溶接封止自動化ラインを開発した。
 HeをHDD内に閉じ込めるため,東芝グループ内の様々な製品のものづくりで培ったレーザー溶接封止技術を活用した。He充填HDDのアルミダイカスト製筐体(きょうたい)に合わせてレーザー溶接プロセスを最適化することで,高品質な封止を実現した。更に,高速・低衝撃なHDD搬送システムや,高速・高精度位置決め機構,インラインでの全数溶接自動検査機能などを備えることで,溶接品質を保証しつつ,生産性も向上させた。
 今後も,安定したHe充填HDDの供給に向け,順次設備を展開していく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
He充填HDD用レーザー溶接封止自動化ライン

He充填HDD用レーザー溶接封止自動化ライン

複数ラインを移動しながらパレタイジングできる移動式パレタイザー

  • メカトロニクス技術

 製品の入った段ボールをパレット上に積み上げる従来のパレタイズ作業では,作業者が段ボールをパレットに積み上げるか,固定されたロボットで積み上げることが多い。このため,必要な人数の作業者の確保やロボットの複数台設置によるコスト高が問題となっていた。
 今回,AGV(無人搬送車)にロボットを搭載した移動式パレタイザーを開発した。これにより,ロボットで段ボールを移載し,AGVで複数ラインを移動できるため,作業者を介さずに自動パレタイズできる。電源は,急速充電が可能なSCiB™を採用し,充電に伴う停止時間を短縮した。AGVに搭載したロボットは,労働安全衛生規則の産業用ロボットに該当するため,安全柵又はそれに相当する安全システムが必要になる。そこで,パレットごとに安全監視エリアを分割し,移動式パレタイザーとパレット取り出し作業者とを分離できるように制御することで,パレタイジングの効率を低下させることなく,安全に作業できるようにした。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2020 Vol.75 No.2 2019年の技術成果
移動式パレタイザー

移動式パレタイザー