生産技術トピックス
2015年
QCLを用いた小型呼気分析装置
- 光応用・画像検査技術
健康意識の高まりや急増する医療費の抑制のため、予防医療の重要性が高まってる。予防医療で必要とされる、痛みを伴わない簡易な検査を実現するため、呼気中の微量ガスを分析する呼気分析装置を開発した。
新装置では、赤外波長の量子カスケードレーザ(QCL)を用いた吸収分光法により、据置型質量分析器と同等の測定精度であるサブppmを卓上サイズで実現した。この装置を用いることで、呼気中のアセトンやアセトアルデヒドなどを簡易的かつ高速(1分程度)に検出できる。
学校法人 早稲田大学など外部機関との共同研究により、呼気分析の有用性のエビデンスを取得したものから順次事業化を進めていく。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
コードレスクリーナー用モータ制御技術
- 制御技術
使いたいときに、使いたい場所で手軽に使えるスティックタイプのコードレスクリーナー用の新型モータに適した制御技術を開発した。
新型モータは、このタイプのクリーナー向けに新たに開発された、小型軽量性と高効率性を兼ね備えたブラシレスモータである。このモータの性能を最大限引き出すように、始動時は短時間で回転数を上昇させ、定常時は可能な限り高速回転させる制御とした。
この制御技術は、2014年2月にリリースされたサイクロン式のコードレスクリーナーVC-CL100に搭載され、業界トップクラスの最大回転数100,000rpmの実現に貢献している。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
エアコンの省エネ化技術
- 制御技術
エアコンの省エネ化のために、もっとも電力を消費するコンプレッサモータの消費電力を低減するモータ制御技術を新たに開発した。
コンプレッサモータは、インバータに搭載されているマイコンにより、モータに流れている電流に基づきモータの回転位置を推定し、電圧を印加することで運転している。従来のモータ制御では低速運転に限界があったため、新しいモータ制御技術を考案し、従来以上の低速運転を可能にした。この結果、使用頻度の高い小能力時の消費電力を、冷房能力が7.1kWクラスのエアコンで従来の60Wから45Wに低減した。
この技術は、2014年11月にリリースされたルームエアコンSDRシリーズのインバータに搭載され、業界トップクラスの省エネ性能の実現に貢献している。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
エアコンで発生する伝導性ノイズのシミュレーション技術
- 制御技術
インバータエアコンでは、伝導性ノイズ規格に適合するための開発期間の短縮、及びノイズ対策部品のコスト低減が課題である。そこで、伝導性ノイズの予測とノイズフィルタの効果検証ができるシミュレーション技術を開発した。
この技術は、ノイズ伝搬経路となる圧縮機や冷媒配管などの電気特性を等価回路としてモデル化し、これとノイズ源のインバータデバイスを模した電圧源を接続した回路をシミュレーションする。スペクトラムアナライザによる伝導性ノイズの実測データとシミュレーション結果はよく一致しており、その有効性を確認することができた。
今後、この技術をエアコンの新規開発に活用していく。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
チップスケール応力シミュレーション技術
- 薄膜プロセス技術
半導体デバイスの微細化及び高集積化に伴い、構造レイアウトに起因した不良が顕在化している。そこで今回、チップスケールの大規模解析を可能にする応力シミュレーション技術を開発した。
TCAD(Technology CAD)形状シミュレーションによる高精度なデバイス形状予測と、仮想複合材料化を用いた大規模応力シミュレーションを連成させることにより、チップスケールの応力不良を予測できる。
この技術を次世代半導体デバイスのレイアウト設計に適用し、開発の初期段階でレイアウト危険点を抽出して不良抑制のための指針を提示することにより、開発コスト低減と歩留り向上に寄与している。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
光-熱連成解析による白色LEDパッケージの設計技術
- 実装技術
照明用白色LED(発行ダイオード)パッケージの明るさ向上には、放熱性を高めてパッケージの温度上昇を抑える必要がある。そのためには、開発初期段階の構造案においてパッケージ温度の予測が必要になる。パッケージの最大の発熱源は蛍光体層であり、その発熱はLEDの青色光を白色光に変換する際に生じる。その光変換効率は温度上昇により変化するため、蛍光体層の到達温度の予測は困難であった。そこで、光学解析と熱解析を連成させた温度予測技術を開発した。
蛍光体の光変換効率を温度の関数でモデル化し、蛍光体層の実測の放熱性を解析に反映することで、予測誤差を従来に比べ50%低減した。
この技術を、1.0Wクラスの照明用白色LED TL1Lxシリーズの構造設計に適用した。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
USBメモリ筐体開発へのDFM適用
- 機械構造・製造技術
メモリ事業では、自社ブランドUSB(Universal Serial Bus)メモリ製品の多品種化により製品競争力の強化を進めており、開発期間の短縮、部品品質の向上、及び生産コストの低減が必要である。これを実現するため、USBメモリの筐体(きょうたい)開発に対しDFM(Design for Manfacturability)を適用し、設計段階で樹脂部品の製造性を考慮できる仕組みを構築した。
設計ガイドラインや、各開発プロセスに合わせたチェックリスト、設計標準などを整備することで、業務プロセスを改善した。
設計者を支援するこれらの仕組みによって、不良が発生しにくい設計が可能になり、製造プロセスマージンが確保され、部品品質低下のリスクを低減できるとともに開発の後戻りも防止できる。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
重量物搬送ロボット
- メカトロニクス技術
従来、重量物製品の分野では、部品や製品の搬送はクレーンなどによる人手作業が多く、ラインの省人化が困難であった。今回、重量物製品の製造工程での省人化に向けて、重量物搬送ロボットを開発した。
開発したロボットは、部品や製品を持ち上げるためのアクチュエータには油圧サーボシリンダを使用し、その他の軸には電動サーボモータを使用した複合タイプで、130Kgまでの重量物をハンドリングできる。
このロボットをベースにした重量物搬送ロボットを、社会インフラ製品の製造ラインに適用して省人化に貢献するとともに、様々な重量物製品の組立製造ラインにも展開していく。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
サーバ用3.5型HDD製造ライン
- メカトロニクス技術
今後の市場拡大が予想される大容量ストレージサーバ用のニアライン向け3.5型大容量HDD(ハードディスクドライブ)製造工程で、構成部品をドライブに組み付ける製造ラインを開発した。
クリーン多機能ロボットを活用することで品種変更への柔軟性を確保しながら、加工点の完全自動化を達成した。これにより、クリーンルーム内の作業人員を大幅に削減することができ、品質と生産性を向上させることができる。
現在、初号ラインが海外生産拠点で稼働を開始しており、今後の増産スケジュールに合わせてタイムリーに製造ラインの増設を進めていく。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年の技術成果
薬液使用量の削減を実現する電解硫酸技術
- 薄膜プロセス技術
半導体デバイスの製造コストを低減するため、硫酸を電気分解する電解硫酸技術を金属膜除去工程に導入した。
金属膜除去工程では、活性な過硫酸(ペルオキソ一硫酸やペルオキソ二硫酸)を使用する。従来の硫酸と過酸化水素水の混合液を用いる過硫酸の生成方法では、過酸化水素水が金属と反応して分解してしまうため、薬液の寿命が短いという問題があった。これに対し、電解硫酸は、ホウ素ドープダイヤモンド電極を搭載した電解槽で硫酸を電気分解して過硫酸を生成する。過酸化水素水を使用しないため、金属のエッチングでも薬液は安定で、薬液の長寿命化が可能になる。
当社では、四日市工場にこの電解硫酸技術を導入し、金属膜除去工程の過酸化水素水使用を全廃するとともに、硫酸使用量の大幅削減を計画している。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年のハイライト
電動パワーステアリング用電子制御装置の量産化
- 実装技術
車載分野では、近年、環境配慮に基づく燃費向上や車両全体の電子化が進むなかで、油圧でなく電気モータを用いる電動パワーステアリング(EPS)の要求が高まっている。EPSには、ハンドル操作力に見合った適切なアシスト力を算出し、モータに電力を供給する電子制御装置(ECU)が搭載されている。今回、EPS用ECUの量産ラインを東芝信息機器(杭州)有限公司(TIH)に構築し、EPSを製造している日本精工(株)への量産出荷を2014年1月から開始した。
EPS用ECUは、ハンドル操作に直接影響する重要保安部品であり、高度な安全性や信頼性が求められる。そのためTIHの製造ラインでは、サプライヤー管理の徹底や、不良の混入、発生、及び流出を防ぐ自工程完結型の製造ライン構築、工程内不良を予防するSPC(Statistical Process Control)の仕組み構築、工程内のプロセス情報及び検査結果を記録するトレーサビリティシステム構築、車載製造に携わるメンバー全員への品質教育の徹底などを実施し、品質確保に努めている。
このEPS用ECUの特長は、FET(電界効果トランジスタ)のベアチップと銅コネクタによる、業界初のベアチップ一括表面実装構造を採用することで、小型化と低コスト化を実現していることである。また、東芝製機能安全マイコンを搭載し、冗長なプロセッサ構成なしでフェールセーフを実現した。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2015 Vol.70 No.3 2014年のハイライト