生産技術トピックス
2014年
息を分析する「呼気分析装置」
- 光応用・画像検査技術
健康状態のモニタリングや病気の診断に有用な物質の検出を目指し、呼気中の微量ガスを計測できる「呼気分析装置」を開発しました。
本装置は半導体製造などの産業向けガス分析技術を、人間の呼気測定に応用したもので、呼気に赤外線レーザを照射し、その吸収スペクトルから微量ガスを成分ごとに分離して検出します。光源には、中赤外域(3~10um)に発振波長をもつ新型の半導体レーザ(量子カスケードレーザ)が採用されており、据置型質量分析装置と同等の測定精度を卓上ながらに実現しました。
関連論文
- 掲載誌名
- 2014年3月18日 プレスリリース
水銀ランプ代替100W級LEDランプ向け製品設計技術
- 実装技術
水銀ランプを代替するLED(発光ダイオード)ランプには、既存の器具に取り付けられる小型形状、水銀ランプと同等の発光分布、及びランプの向きによらずLEDの温度上昇を抑えることができる放熱性能が求められる。
これらの要求に対応するため、設計段階で光学性能と放熱性能を予測し、試作することなく構造を適正化する設計技術を開発した。また、この技術を用い、放熱性能に優れたピン型放熱器、輝度むらを低減したグローブ形状、及び発光部面積の最大化と発光部周囲の通気性確保を両立させる裏面連結構造を設計し、適正化した。
この技術に基づいて試作したLEDランプは、消費電力32Wで水銀ランプと同じ明るさ4,200lmを実現し、照明の低消費電力化と水銀フリー化に貢献することが期待される。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
半導体メモリセルの信頼性シミュレーション技術
- 薄膜プロセス技術
TCAD(Technology Computer Aided Design)技術を活用して、書込みや消去などの動作による半導体メモリセルの劣化をモデル化し、寿命を予測する信頼性シミュレーション技術を開発した。
半導体メモリセルの劣化要因の一つであるシリコン酸化膜の劣化は、主に動作時に膜に印加される電界の強さと、膜を通過する電子の数などによって決まることが知られている。この技術では、メモリセル動作時の電界と電子の数をTCADデバイスシミュレーションによって求め、これらの積算と絶縁膜寿命の関係から、メモリセルの絶縁膜が破壊するまでの動作回数(寿命)を求める。
この技術により、半導体メモリセルの構造や寸法の影響を考慮した信頼性の予測が可能となった。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
ガス遮断器の弾性変形を考慮した機構解析技術
- 機械構造・製造技術
ガス遮断器は、開路動作時に、強力なばねによって複雑な操作機構を高速に駆動させる。そのため、実機試験による性能評価だけでは、ガス遮断器全体の振動によって生じる各部品への負荷を定量的に把握して、強度設計へ反映させるのに時間を要する。
そこで、有限要素法を用いて弾性変形を考慮することで、ガス遮断器の振動挙動を高精度に予測できる機構解析技術を開発した。また、膨大な計算コストを削減するため、ベアリングの機能だけを抽出するなど、ばね操作機構の動作を適切かつ簡略にモデル化する技術を確立した。
これらの技術によって、ばね操作機構の開発期間を短縮することができた。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
SCiB™向け高速レーザ溶接
- 光応用・画像検査技術
アイドリングストップシステム向けの当社製二次電池SCiB™3Ahセル向けに、電解液を注入する注液口をレーザで高速溶接する技術を開発した。
SCiB™セルは溶接で完全封止する構造であるため、長期使用においても液漏れが発生しないなど、高い信頼性が求められる。しかし、SCiB™セルのケースに用いられるアルミニウムは溶接が難しく、従来は、出力の低いパルスレーザしか適用できなかった。
今回、出力が約10倍のkW級の連続発振レーザを用いて溶接を高速化する技術を開発し、生産性を改善した。更に、アルミニウムは溶接部に汚れがあると溶接欠陥が発生しやすいため、溶接前に汚れを除去する工程を追加して、信頼性を高めている。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
油圧駆動双腕ロボット
- メカトロニクス技術
重量物のハンドリングなど高難度組立作業の自動化に適した油圧駆動双腕ロボットを開発した。
人手による作業を自動化する場合、小型で器用な作業が可能な、電動モータのアクチュエータを使用したロボットが活用されているが、小型ロボットでは重量物のハンドリングが困難であった。今回開発したロボットは、アクチュエータに油圧サーボシリンダを使用することで、人と同等のサイズでありながら、最大50kgまでの重量物をハンドリングできる。また、電動の手首機構とステレオカメラによる位置検出機能を搭載し、双腕を使った器用な作業を実現した。
今後、様々な製品分野で、組立製造ラインへの適用をめざす。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
エレベーターの板金パネル部品自動製造ライン
- メカトロニクス技術
エレベータのかごや乗り場ドアを構成する板金パネル部品に、補強材を自動で組み付ける製造ラインと製造設備を開発した。
板金パネル部品の剛性、強度、及び組立精度を損なうことなく、自動化に適した製造プロセスと構造の設計、及び設計の標準化による板金パネル部品と補強材の品種削減を、製品設計部門及び製造部門との協調により実現した。こうした製品開発と多関節ロボットを活用した新たな組立技術の開発により、生産性向上、製造リードタイム短縮、及び人員削減を同時に実現できる自動製造ラインを構築した。
この製造ラインは、現在、東芝エレベータ(株)府中工場で稼働中である。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
拠点配置設計サポートツール
- 生産エンジニアリング技術
最適化手法を活用し、販売を見込む各市場へのコスト最適な供給拠点の選択(拠点配置)を、生産能力などの制限を考慮して効率的に実施する技術を開発した。
事業のグローバル化により市場や供給拠点候補が拡大しており、拠点配置の選択肢が増加している。選択肢の絞込みには、拠点配置案のコスト計算とともに、各種制限を満たしているかを確認することが必要となる。このような作業は、ノウハウのある経験者しかできない暗黙知の作業であり、選択された配置が最適かどうかの判断も難しい。
このように非常に多くの選択肢の中から有力案を絞り込む作業を自動化することで、幅広い可能性を考慮したベンチマークの実施が可能になる。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
半導体生産制御のための高速シミュレータ
- 知識・情報システム技術
半導体の生産では、需給や生産の変動に対応しながら、生産数量を高水準に保つ必要がある。変動に応じて生産計画を変更するために、短期間で生産シミュレーション結果を提示する必要性が増している。そこで、流体モデルを適用した高速シミュレータを開発した。
既存のシミュレータはロットごとに工程の流れを詳細に計算するのに対し、開発したシミュレータはロットを流体として捉え、近似的に計算することで計算速度の向上を実現している。
当社の半導体生産規模において計算速度を約15倍向上させたことで、月単位の長期シミュレーションも可能となり、ボトルネックとなる設備の抽出など、マクロ的な生産状況の把握に活用されている。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果
A19nmNAND型フラッシュメモリ向け高精度プロセス制御技術
- 薄膜プロセス技術
NAND型フラッシュメモリの微細化により、配線寸法の1nm程度のばらつきでも歩留りに大きな影響を及ぼすようになってきた。このため、量産ラインを急激に立ち上げるには、配線寸法のばらつきをどこまで低減できるかが課題となっている。
この課題に対し、加工後の寸法測定結果や前工程の情報を加工条件に反映させるなどのプロセス制御技術を高精度化してきた。初期では制御パラメータは一つであったが、寸法ばらつきと相関のある因子を多変量解析によって抽出し、影響度の大きい複数の因子を制御パラメータとすることで、寸法のばらつきを大幅に低減できた。
最新のA(Advanced)19nm NAND型フラッシュメモリの製造にもこの技術を適用し、歩留りと生産の安定性向上に寄与している。
関連論文
- 掲載誌名
- 東芝レビュー 2014 Vol.69 No.3 2013年の技術成果