生産技術センター

東芝の研究開発・技術

生産技術トピックス

LED電球の製品設計技術

  • 光応用・画像検査技術
  • 実装技術

LED(発光ダイオード)照明製品を高機能化しタイムリーに市場投入するため、CADモデルとの連携により、開発の初期段階で光・熱性能を同時に予測する解析技術を構築した。
LED電球の高出力化の実現には、低損失な光学系と電力増に伴う高発熱に耐えうる放熱構造が必要になる。この解析技術を用いて、これらが成立する構造として"トリプルアーチ放熱板"を立案するとともに、高効率で広配光となるよう形状及び実装構造を適正化した。
この技術を製品設計に適用し、LED電球として業界最高水準の白熱電球60W形相当の明るさ、かつ広配光の一般電球形10.6Wの製品化に寄与した。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
LED電球に適用したCADモデルと連携した解析技術

LED電球に適用したCADモデルと連携した解析技術

レアアースを用いないフェライト磁石使用モータの高出力化

  • 制御技術

ネオジム磁石が2011年度だけで3倍程度に高騰しており、高出力モータに安価な代替磁石の採用が求められている。しかし、フェライト磁石の残留磁束密度は、前者の33%程度であり、効率悪化を招く磁束量低下が避けられない。そこで、回転子積層コア内にフェライト磁石を埋め込む構造を採用し、磁石の数と配置を適正化することで、磁束量の改善を試みた。
結果として、直方体の磁石を1磁極当たり5個使用し、それぞれの端面を近接させて、磁極面から見て凹形状となるよう配置することで、ネオジム磁石に対して68%の磁束量が得られた。
今後は、家電や車載などの用途に展開を図る。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
開発モータと磁界解析結果

開発モータと磁界解析結果

X線CT装置のバランス調整技術

  • メカトロニクス技術

X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置の高速・高機能化に不可欠な稼働時の振動を抑制する回転バランス調整技術を開発した。
一般的な回転バランス調整方法(影響係数法)は、特定周波数成分に着目し回転体に適切なおもりを配置することで、回転アンバランスによる振動を低減する。新たに考案したアルゴリズム"影響波法"は、CT装置の振動モデル(影響波関数)を求め、振動全体が最小となるように最適解を探索するので、回転周波数成分とそれ以外の振動を低減できる。
この手法を製造工程のほか、据付・保守作業に適用し、より高品位な製品の実現及びその性能の維持に貢献した。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
影響波関数を用いたバランス調整のフローチャート

影響波関数を用いたバランス調整のフローチャート

インデント製品の生産管理高度化

  • 知識・情報システム技術

製品ごとに製造工程や工数が異なるインデント製品(受注生産品)では、受注や製造進捗状況の変動に合わせた生産計画の見直しが必要になる。製品ごとの生産計画は、工程担当者のノウハウで見直していたが、製品全体の計画の一元管理や適正化は困難なため、組立に部品加工が同期せず、製造リードタイムが長期化しがちだった。
そこで、ネック工程の負荷可視化と負荷平準化を行う計画修正機能を備えた組立計画システムと、組立計画の変更を自動的に判断しそれに同期した部品計画を自動的に立案する部品納期管理システムを開発した。
これにより、効率的な生産管理、及び組立と部品の同期による製造リードタイム短縮に寄与していく。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
インデント製品の生産管理高度化の概要

インデント製品の生産管理高度化の概要

車載レーダ用ミリ波送受信モジュールの開発

  • 実装技術

77GHz帯車載レーダに用いる小型で高性能なミリ波送受信モジュールを開発した。
ミリ波送受信モジュールの小型化のため、レーダ用半導体を実装したミリ波パッケージの表面実装化を行った。セラミック多層基板に導波路を内蔵したパッケージを新たに開発し、マザーボードに独自構造の接続回路を形成することで、ミリ波信号の伝送ロスを抑えパッケージの表面実装化を可能にした。
また、レーダの検知精度向上のため、業界最高レベルの低雑音シンセサイザを開発した。周波数掃引回路のデジタル化とQ値の高い共振器の適用により、線形誤差0.04%以下、位相雑音-95dBc/Hz(100kHzオフセット時)を実現した。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
車載レーダ用ミリ波送受信モジュール

車載レーダ用ミリ波送受信モジュール

半導体デバイスの特性ばらつき予測技術

  • 薄膜プロセス技術

半導体デバイスの電気特性ばらつきを予測するシミュレーション技術を開発した。
はじめに、全加工工程を形状シミュレーションでモデリングし、量産時のNANDセル主要寸法(X)のばらつきを算出する。次に、デバイスシミュレーションと統計解析ツールを組み合わせ、各Xのばらつきを元に、電気特性(Y)の分布を予測する。
この技術を次世代NAND型フラッシュメモリの開発に適用し、NANDセル主要寸法の特性ばらつきへの影響度を明確化した。更に、影響度の大きい寸法に対して、特性分布仕様を満たすための寸法ばらつき制御指針を作成した。この制御指針に基づいて加工プロセス条件を確立し、量産時の歩留りを向上させた。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
電気特性シミュレーション手法

電気特性シミュレーション手法

半導体メモリの高速化を支える信号伝送路シミュレーション技術

  • 制御技術

次世代SDメモリカード規格のUHS (Ultra High Speed )-II に適用される最大3Gビット/sの高速シリアルバス規格に対応した信号伝送路シミュレーション技術を開発した。
UHS-IIは従来のUHS-Iに比べデータ転送速度が3倍になり、信号速度はGビット/sを超えるため、信号の反射・分岐配線部の共振といった現象が新たに問題になる。したがって、信号品質規格を満足するためには、基板の配線幅、間隔、長さや、配線分岐に関する基板設計条件を明らかにする必要がある。そこで電磁界シミュレーションにより、伝送路での反射や共振などの高周波現象を再現できる環境を構築した。
この信号伝送路シミュレーション技術を今後の製品開発に適用し、電磁ノイズに強い製品設計を目指す。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
UHS-IIカードブロック図と信号伝送路シミュレーション

UHS-IIカードブロック図と信号伝送路シミュレーション

枚葉ウエットエッチング処理装置

  • 薄膜プロセス技術

半導体デバイスの製造コストを削減するため、生産性の高いプロセス装置が求められている。今回、微細なパターンを高速で精密にエッチングする枚葉ウエットエッチング装置を開発した。
特長は、薬液の温度を上げてエッチング速度を高めるとともに、薬液吐出ノズルの改良とチャンバー内の雰囲気や気流の適正化を行なったことにある。これにより、ウエーハ全面を高速で均一にエッチングすることが可能となり、従来と比較してプロセス時間の約50%短縮を達成し、高い生産性を実現した。
この装置は、芝浦メカトロニクス(株)で製品化し、東芝四日市工場で稼動を開始している。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
高スループットを実現した枚葉ウエットエッチング装置

高スループットを実現した枚葉ウエットエッチング装置

SCiB™製造設備

  • メカトロニクス技術

東芝柏崎工場の二次電池SCiB™量産ラインに向けて、注液封口装置を開発した。組立が完了した電池セルに電解液を注入し、その後注液口を封止する装置である。
注液工程では、圧力制御を用いた注液プロセス技術を開発して高い電解液量精度を実現した。一方、封口工程では、独自のクリーニング技術とレーザを用いた高速溶接技術の採用により、封止信頼性と生産性の向上を両立させた。
この装置で製造された20Ah SCiB™セルは2011年7月から出荷を開始し、この電池が搭載された電気自動車が市場投入されている。

関連論文

掲載誌名
東芝レビュー 2012 Vol.67 No.3 2011年の技術成果
20 Ah SCiB™セルと製造設備

20Ah SCiB™セルと製造設備