ニュースリリース

韓国KT・新韓銀行と、金融ネットワークのサイバーセキュリティ強化に向け
ハイブリッド量子セキュア通信を実証

2024年4月19日

東芝デジタルソリューションズ株式会社

 東芝デジタルソリューションズ(本社:神奈川県川崎市、取締役社長:島田 太郎、以下 当社)は、韓国における量子暗号通信事業の協業パートナーである大手通信事業者KT Corporation(以下 KT)、および大手銀行の新韓銀行と、量子コンピュータを用いたサイバー攻撃の脅威から金融ネットワークを保護するための、量子暗号通信(Quantum Key Distribution、以下 QKD)注1と耐量子計算機暗号(Post Quantum Cryptography、以下 PQC)注2を結合したハイブリッド量子セキュア通信の実証を行いました。

当社の量子鍵管理システムを用いて、量子鍵の配送速度(キーレート)と量子ビットエラーをモニターしているKTの技術者(KT提供写真)

 金融資産・取引などの金融データは個人や企業の高い情報セキュリティが求められる領域であり、暗号通信が情報通信ネットワークを支えていますが、将来量子コンピュータが実用化された際には、現在広く利用されている暗号通信で使われている暗号鍵が容易に解読されてしまう可能性が指摘されています。こうした中、韓国の金融業界でも量子コンピュータの脅威に対応するために量子セキュア技術の導入が進められています。

 本実証では、量子コンピュータの脅威に対応するための、エンド・ツー・エンドで耐量子セキュリティを持つ量子セキュア通信技術をハイブリッドで物理層・アプリケーション層のネットワーク層別に適用しました。KT、新韓銀行と当社が連携し、ソウルにある新韓銀行本店と江南別館の約22km区間を結ぶ実証網を構築し、盗聴をブロックし光回線の物理層を保護するQKDと、インターネットセキュリティプロトコルに適用してホームページログインなどのアプリケーションサービスを保護するPQC公開鍵アルゴリズムによるハイブリッド量子セキュア通信の評価を行いました。本実証網は韓国量子暗号通信セキュア制度に準拠し、設計されました。QKDは当社より提供したQKDシステムと、量子鍵管理システム(Q-KMS: Quantum Key Management System)を使用しました。PQCは、韓国の耐量子計算機暗号切替推進ロードマップに掲載され、FIPS注3標準化が進められている耐量子計算機暗号アルゴリズムを使用しました。

 また、本実証には韓国企業のCoweaverとDream Securityが技術協力を行いました。Coweaverは、KTから技術移転を受けた量子通信対応回線暗号装置(Encryptor: ENC)注4を本実証網に適用し、当社のQKDシステムで生成された秘密鍵を受けてデータを暗号化し、物理層のデータ伝送を保護しました。Dream SecurityはKTと連携し、アプリケーション層保護のためのPQCサービスを提供しました。

 本実証について、当社 取締役常務、ICTソリューション事業部長 月野 浩は、「当社は、KTと2022年から協業を進めてきました注5。本実証は、韓国における量子セキュア通信のエコシステムの発展と、量子セキュア通信市場の拡大にはずみをつけるものです。引き続きKTとの協業を進め、量子暗号通信事業のグローバル拡大を加速していきます」と述べています。


 当社は今後も、量子暗号通信の産業界への早期展開に向け、パートナー企業との協業関係を強化し、量子暗号通信事業のグローバル展開を加速してまいります。

注1:暗号鍵を光の最小単位である光子(光の粒子)にのせて送る安全な通信を行うための技術
https://www.global.toshiba/jp/company/digitalsolution/articles/tsoul/38/004.html

注2:量子コンピュータを使用しても暗号化データの解読が困難な暗号アルゴリズム
https://www.nttdata.com/global/ja/-/media/nttdataglobal-ja/files/news/topics/2023/100301/100301-01.pdf?rev=cb4cf978ab4e4cecb8cec45f75ffc8be 

注3:米連邦情報処理標準規格

注4:通信回線区間の両端に設置し、通信回線を流れるデータを暗号化する専用装置

注5:2022年3月28日ニュースリリース「東芝グループと韓国KT、量子暗号通信の実証プロジェクトを共同で実施」
https://www.global.toshiba/jp/company/digitalsolution/news/2022/0328.html

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