資源循環・カーボンリサイクルの取り組み

東芝グループでは、循環経済への対応の一環として、事業活動、製品・サービスの両面で、限りある資源を効率的な利用で循環させることに取り組んでいます。

資源循環の取り組み


設計・調達・生産・流通・使用・回収の各フェーズにおいて、省資源化やプラスチックの資源循環量の拡大などに貢献する技術や取り組み事例をマッピングしました。将来的には、製品ごとに資源循環の輪をつなげることをめざしています。

※ピクトグラムをクリックすると事例をご覧いただけます。

資源投入の抑制(調達フェーズ)

【事例】世界初 最高出力2MWの軽量・小型・高出力超電導モーター

東芝エネルギーシステムズ(株)

モビリティ業界においてもCO2などの温室効果ガス削減に向けEV(Electric Vehicle)の導入が進んでいる折、東芝エネルギーシステムズ(株)は、この度航空機にも適用可能な軽量・高出力密度・高速回転を実現する小型高速超電導モーターの試作機を開発しました。

この試作機は、最高出力が2MWある一方で、外径約50cm、全長約70cm(シャフトを除く)と、同出力の一般的なモーターと比べてサイズ、重量が「10分の1以下」と小型軽量化を実現しており、このような大出力の高速超電導モーターでは、世界初の事例となります。

当社は、今後航空機への実装に向けて更なる軽量化・高信頼性を進め、モビリティ業界との連携を進めながら2020年代後半の実現をめざします。

  • 当社調べ(2022年6月23日時点)
  1. モビリティ向け軽量・小型で大出力の超電導モーター試作機を開発(東芝エネルギーシステムズ(株))
  2. 超電導モーターこそ、カーボンニュートラルの救世主【後編】 ~次なる目標は、超電導モーターで空を飛ぶ!(Toshiba Clip)

【事例】既設器具を再利用 LEDベースライトTENQOOシリーズ リニューアルキット

東芝ライテック(株)

LEDベースライトTENQOOシリーズ リニューアルキットは、東芝ライテック(株)が販売する自社の既設蛍光灯器具本体を流用し、LED 器具へのリニューアルを容易に実現できる製品です。
蛍光灯器具本体を流用することで、省資源で照明のLED化を実現できます。また、器具ごと交換するよりも製品の廃棄量を削減することが可能となります。例えば、器具本体(1.8kg)と反射板(2.3kg)、合わせて4.1kgの既設蛍光灯器具の場合、リニューアルキットを用いると反射板だけの破棄で済み、器具ごと蛍光灯設備を破棄するよりも、廃棄量を約40%削減することができます。また、破棄費用(運搬を含む)の削減にも貢献します。

TENQOOシリーズ リニューアルキットの構造

【事例】既設部品のリユースによる資源循環性の向上と省エネ・長寿命化 エレベーター・エスカレーターのリニューアル

東芝エレベータ(株)

資源投入量及び廃棄物量の削減のためには、既設部品をリユースすることが重要な施策の一つです。東芝エレベータ(株)では、エレベーター・エスカレーターのリニューアルを行う際に、既設部品のリユースを行っています。リニューアル商品にはさまざまなラインアップをそろえており、商品ごとにリユース量も変化しますが、最大88%の既設部品をリユースする商品の提供が可能です。部分更新としてリニューアルしていただくことで、導入設備の長寿命化につながり、資源投入量及び廃棄物量削減を抑制できるうえ、最新制御方式の採用により省エネルギーも実現します。

<2022年度実績>
①国内リユース量※1:3,800トン
②リユース率※1(国内リユース量/国内全売上機種資源投入量):15.5%
③リニューアル前後の製品使用時のCO2排出抑制量※2:14,105 t-co2

  • リユース量・リユース率は、実測値ではなく、算出基準となる仕様(階床・積載量など)を決定し、その使用に基づき算出した数値となります
  • 2022年度リニュアル前製品使用時のCO2排出量からリニューアル後製品使用時のCO2排出量を引いた値で効果を算出しています
  1. リニューアル(東芝エレベータ(株))

高効率モノづくり(生産フェーズ)

【事例】工場内設備の機械油投入量及び廃油量の削減

東芝ジェイエスダブリュー・パワーシステム社

東芝ジェイエスダブリュー・パワーシステム社では工場内の設備において使用する機械油の清浄度をモニタリングし、不純物や水分を除去することで繰り返し使用していますが、一定の汚染度を超えると、設備の能力上、十分な除去ができないため、廃棄物として処理していました。そこで従来以上に不純物と水分の除去が可能なフィルターユニットを新たに設置することによって、機械油の再使用期間を延長し、新油の投入量を削減する取り組みを行いました。この取り組みによって、2022年度は2021年度と比較して、新油投入量(廃油量)35%削減を実現しました。

【事例】生産プロセスのデジタル化ソリューションによる資源の有効利用

東芝デジタルソリューションズ(株)

循環型の事業活動では、生産プロセスにおいて生産ロス抑制は重要であり、生産ロス抑制のための歩留まり管理は、製造現場が最も注力する管理事項の一つです。歩留まり管理は製造コストの抑制に加え、資源の有効利用の観点でも、部材使用の適正化により廃棄物発生を抑制します。
東芝デジタルソリューションズ(株)の Meister MES™は、次世代ものづくりとして必要な自動化生産機能や汎用インターフェース機能、ビッグデータ分析連携を搭載し、歩留りや生産性の向上が図れます。製造現場の歩留まり管理を支援し、リデュースによるお客様の資源の有効利用に寄与することで、社会課題である資源循環の実現に貢献します。

  1. 参照元:循環型の事業活動の類型について(経済産業省・環境省(令和2年6月24日))

Meister MES™の機能概要

梱包材削減(流通フェーズ)

【事例】包装材見直しによる資源循環性向上及び製品の積載効率改善における環境負荷低減

(株)東芝 電池事業部、東芝ホクト電子(株)、SBS東芝ロジスティクス(株)

東芝グループでは、製品を輸送する際の包装において、包装材の資源循環性の向上や製品の積載効率改善による環境負荷低減に貢献する取り組みを行っています。

(株)東芝 電池事業部は、積水化成品工業(株)様及びSBS東芝ロジスティクス(株)との共同検討により、欧米などで要求される包装廃棄物の特定重金属規制事項を満たす100%リサイクル発泡スチロール(EPS※1)を使用し、かつ、輸送時の安全性確保のための高い包装試験基準を満たす緩衝材を開発しました。同時に従来品に比べ20ft海上コンテナの積載数を 25%向上させ、輸送 CO2排出量を20%削減しました。

東芝ホクト電子(株)は、精密機器である工業用マグネトロンにおいて、DFL※2の考え方を用いて製品仕様を製品企画・設計段階まで遡って見直し、包装箱をすべて段ボール化しました。これにより、コンパクト化・軽量化も実現しました。結果、緩衝材プラスチック100%減(脱プラ)、梱包材ライフサイクル全体におけるCO2排出量25%減、作業工数30%減を達成することができました。

両社の取り組みは、SBS東芝ロジスティクス(株)と共同で「2022 日本パッケージングコンテスト」、及び「第24回物流環境大賞」でそれぞれ受賞しています。

  • Expanded Polystyrene:ビーズ法発泡スチロール
  • Design for Logistics:物流を配慮した製品・包装設計のこと

■(株)東芝 電池事業部

100%リサイクル発泡スチロール採用かつ、積載効率向上による省資源化を実現したリチウムイオン電池包装

■東芝ホクト電子(株)

オール段ボール化にすることで、コンパクト・軽量化による省資源、脱プラスチック化による環境負荷低減に寄与する工業用マグネトロン用包装材

【事例】包装材の脱プラスチックによる環境負荷低減

東芝ライテック(株) 今治事業所

産業用ランプはガラス製品であり、これまで海外を含む客先までの輸送は、品質保証の観点からプラスチック製緩衝材を使用した厳重な梱包を行っていました。
近年、海洋プラスチック問題をきっかけとして多くの企業が脱プラを掲げており、東芝ライテック(株)でも製造業として同じ観点で取り組むべく、緩衝材をプラスチック製(エアーキャップシート及びマユ型緩衝材)から段ボール製へ仕様変更しました。
仕様変更後もJIS規格の約2倍相当の落下試験をクリアし、品質を維持しながらも、プラスチック製緩衝材の使用を年間482kg削減、環境負荷の低減に貢献することができました。

長寿命化(使用フェーズ)

【事例】現場管理のデジタル化ソリューションによる生産設備の長寿命化

東芝デジタルソリューションズ(株)

循環型の事業活動では、利用プロセスにおけるメンテナンスによる製品の有効活用、設備の運転効率や稼働率の向上、長期利用の実現が必要です

東芝デジタルソリューションズ(株)が提供する「現場管理のデジタル化ソリューション Meister AR Suite™」は、 設備のオペレーションやメンテナンスでの現場業務の効率化や、熟練者からの技術継承などの課題を、ARを活用したデジタルコンテンツで解決します。効率的なオペレーションやメンテナンスによる設備の長寿命化は、更新頻度の抑制により廃棄物発生の抑制効果が期待できます。製品ライフサイクルの観点における循環型の事業活動に寄与し、循環経済(サーキュラーエコノミー)の達成に貢献します。

  1. 参照元:循環型の事業活動の類型について(経済産業省・環境省(令和2年6月24日))

現場設備の保守業務

リサイクル(回収フェーズ)

【事例】国内資源循環とプラスチック選別システムの導入

東芝環境ソリューション(株)

海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題などへの対応を契機として、プラスチック資源循環をいっそう促進する重要性が高まっています。

2022年4月には、プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般で、あらゆる主体におけるプラスチック資源循環の取り組みを促進することを目的に、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行されました。

これまで途上国に輸出された廃プラスチック類は、リサイクル過程の洗浄排水によって水質汚濁を引き起こしています。また不適切な処理によるプラスチック残渣の海洋流出も指摘されています(図1)。このため途上国も廃プラスチック類の輸入に規制をかけるようになりました。更に2021年1月にはバーゼル条約附属書が改正され、汚れた廃プラスチックが規制対象として追加されることになり、「有害な廃プラスチック」「特別の考慮が必要な廃プラスチック」を輸出する際には相手国の同意が必要となりました。

図1 リサイクル施設から放流される未処理の排水(左)、リサイクルに適さないプラスチックの投棄(右)の例
(環境省「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準(1.21MB)」より)

このような国際的動向をふまえ、当社では2019年にプラスチック選別システムを導入しました(図2)。使用済み家電製品を解体し破砕すると、複数種類のプラスチックが混ざったミックスプラスチックが発生します。これらをプラスチック選別システムで、素材別に高度な自動選別を実施します。単一素材のプラスチックで構成され、無色透明又は単一色といったバーゼル条約の規制対象外に相当する品質にまで高度選別を実施することで(図3)、途上国の輸入規制開始後は廃棄していたミックスプラスチックが、再生利用可能となりました。その結果、プラスチック選別システムを導入した2019年以降の使用済み家電製品の再資源化率は改善し、2022年度は再資源化率が87%となりました。当社は今後も、資源循環の促進に貢献していきます。

図2 プラスチック選別システム

図3 家電由来のプラスチックの規制対象外の判断例
 (環境省「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準(1.21MB)」より)

カーボンリサイクルの取り組み


サーキュラーエコノミーと同時にカーボンニュートラルを実現するため、温室効果ガスの一つであるCO2を合成燃料や化学原料などの新たな用途として再資源化させる「カーボンリサイクル(CO2の資源化)」の実用化にも取り組んでいます。

【事例】P2CによるCO2再資源化

東芝エネルギーシステムズ(株)

燃焼時の排気ガス、あるいは大気中から回収したCO2を、再エネ由来の電力(グリーン電力)でCOに電気分解し、そのCOをグリーン電力による水の電気分解で生成したH2(グリーン水素)と化学合成することで、最終的に付加価値の高い化学製品(SAF、化学原料、プラスチックなど)に再生することが可能になります。
このグリーン電力を利用したCO2の再資源化技術のことをP2C(Power to Chemicals)と呼んでいます。
CO2はこうして再資源化され、化学製品のなかに炭素原子として固定されることとなり、資源としての利活用(サーキュラーエコノミー)と同時に、脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現にも貢献することができます。

  1. SAF:Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)