事業活動における水受入量の削減

世界的な水問題への関心の高まりに対応し、持続可能な水資源管理を推進しています。各拠点では水受入量の削減を年間計画に盛り込み、具体的な施策の立案とフォローを継続的に実施しています。工場内の排水の再生使用や雨水を利用するシステムの導入などの設備改善など、多面的な取り組みを進めています。

2021年度水受入量は20.0百万m³で、活動量原単位は前年度比91%となり、目標を達成しました。

また、当社グループでは水リスクの比較的高い東南アジアに複数の製造拠点をもつことから、水不足問題への対策として排水の再生使用、雨水利用の推進、水害対策として主要設備の床上げ実施など、地域ごとの問題に適切に対処するためのリスク管理にも注力していきます。

■ 水受入量と活動量原単位改善率
■ 水受入量の内訳(2021年度実績)

【事例】製造現場手洗い場改善による水使用量削減

東芝エレベータ(株)姫路工場

水資源の有効利用推進を図るため、東芝エレベータ(株)姫路工場では製造現場9か所の手洗い場の横水栓を自動水栓に切り替えることで、年間22㎥の水使用量を削減することができました。

本取り組みにより、水資源の有効活用だけでなく、浄水時などのエネルギーや自動水栓の使用電力など、CO2削減効果もあり資源・地球温暖化の両面で貢献出来る取り組みとなりました。また、自動水栓の導入により、人が蛇口に触れる機会がなくなることで、新型コロナウイルス感染リスク低減にも貢献しました。

※年間削減量:▲22㎥/年は以下にて試算。
▲0.5リットル×手洗い回数(3回/日)×62人×20日×12か月

自動水栓全体
蛇口部分

【事例】雨水の有効利用による水使用量の削減

東芝ジェイエスダブリュー・パワーシステム社

東芝ジェイエスダブリュー・パワーシステム社では、雨水の利用や処理水のリユースにより水使用量を削減しています。
雨水は、池に溜め、構内の植栽への散水や製造工程における冷却水、トイレ用水などに利用しています。
雨水貯水池は定期的に清掃を行い、水質の維持に努めています。また、工場建屋の屋根に降った雨水は雨水専用の貯水槽に一旦貯め、貯水槽に監視モニタを設置し、水が溢れ出ないタイミングで池へ移送することにより、ムダなく雨水を回収しています。この雨水の利用により、年間15,000m³の水使用量を削減できました。

清掃の様子
貯水用の池
雨水貯水槽

年間水削減量:約15,000m3

【事例】洗浄水の再利用による水使用量削減

東芝ホクト電子(株)

東芝ホクト電子では、基板の純水洗浄槽で排水を同機のスクラバー(臭気対策用)の散水用に再利用することにより、水の使用量を減らしています(東芝マテリアル(株)と共同の技術成果になります)。

水リスクへの取り組み


多くの水を必要とする生産拠点及び水リスクの高い地域に立地する拠点の把握と管理強化を図っています。水リスクの高い地域の把握には、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いることにより、流域単位の物理的な水資源量に加えて、排水による汚染リスクや周辺地域の水問題への関心の高さなど、種々の視点を考慮しました。

工場立地地域における水リスク評価


MS&ADインターリスク総研(株)と連携して、水使用量が多い拠点や水リスクが高そうな地域など8拠点を抽出し水リスク評価を実施しました。工場が立地する河川流域について、水需給(現在、将来傾向)、水災、水質汚濁への脆弱性(公衆衛生、生態系)について多面的な評価を行いました。これらの情報を基に今後の水リスク対策を検討していきます。

■水リスク評価結果(例)

  水需給 水災 水質汚濁への脆弱性 総合評価
現在 将来傾向 公衆衛生 生態系
A工場(日本) B A A+ A- A+ A-
B工場(フィリピン) B C+ A+ B- A+ B+
C工場(インド) C+ A- A+ B- B B
  水需給 水災 水質汚濁への脆弱性 総合評価
現在 将来傾向 公衆衛生 生態系
A工場(日本) B A A+ A- A+ A-
B工場(フィリピン) B C+ A+ B- A+ B+
C工場(インド) C+ A- A+ B- B B
  • A+(リスクが低い)~ C-(リスクが高い)の9段階評価

工場立地地域の降水量と水使用量の相関分析


また、各工場における月次の水受入量と立地地域の降水量との相関分析を進めています。降水量が少ない月を水リスクが高い時期と想定し、水受入量を少しでも抑えることで周辺地域の水資源対策に貢献できればと考えています。

■ 水受入量と降水量の推移(例)

※薄い水色の囲みの月は水受入量が多いが降水量も多い。一方で濃い水色の囲みの月は降水量が少ないため水使用量を抑えた方がよい。

このような分析を各工場で実施することによって、水リスクが高い地域における対策に役立てるのはもちろんのこと、水リスクが低いと評価された地域の工場でも水資源に対する意識を高めたいと考えています。

【事例】装置待機時の純水使用量の削減

加賀東芝エレクトロニクス(株)

加賀東芝エレクトロニクスでは小型電子機器や自動車・産業機器などに搭載している半導体製品を製造していますが、製造工程や空調設備に多くの水を使用しており、環境・コスト面の重要な課題となっています。そこで、製造工程の一つであるウエハ洗浄における純水使用量の削減に取り組みました。
ウエハ洗浄では、ウエハ上のゴミを薬液と多量の純水を使用して除去しますが、目に見えないほどの微小なゴミでも製品に影響を及ぼすため、水質を保つことがとても重要です。製品品質に影響なく純水の使用量を削減できないか検討するなかで、ウエハ洗浄装置の待機時に着目しました。ウエハ洗浄装置は待機中も、水質の劣化やバクテリアの発生を防ぐために常に純水を供給していますが、技術部・製造部が一体となって純水供給量の見直しに取り組んだ結果、水質を保ちつつ、年間で約1,800m3の純水使用量を削減できました。