製品の化学物質管理

東芝グループの製品における化学物質管理の取り組み


東芝グループは電子デバイスからビル・施設関連機器、産業システム、電力・社会インフラ系製品まで幅広く提供しており、それぞれの製品にはさまざまな化学物質が使用されています。これらを適切に管理するために、東芝グループではWSSD※1などで提言・採択された「化学物質のもたらすリスクの最小化」を重要な取り組み課題と考え、管理すべき化学物質の特定、特定した物質の製品への使用の全廃(含:代替化)、含有量の削減などの取り組みを推進しています。また、特定した物質の情報を生産活動の各過程で共有することにより、これらの物質が人の健康と地球環境にもたらすリスクを最小化することをめざしています。

またビジネスのグローバル化にともない、製品含有化学物質の管理もグローバルに展開しており、世界各国の化学物質管理に関する政策・規制の最新動向を収集・評価し、グループの化学物質管理に反映させています。

更に東芝グループでは、「製品の部材・部品などの調達品への含有を禁止する物質(禁止物質(群))」と、「調達品での含有状況を把握し、削減・代替化などの環境負荷低減に努める物質(管理物質(群))」を定め、ビジネスパートナー様、及び調達取引先様にご協力いただきながら、環境負荷の小さい製品・部品・材料などを調達する「グリーン調達」を推進しています。
ランクA(禁止物質(群))は国内外の法規制で製品(包装材含む)への使用が禁止又は制限されている物質(群)であり、かつ国際電気標準会議(IEC; International Electrotechnical Commission)が作成した IEC 62474(Material Declaration for Products of and for the Electrotechnical Industry)のDeclarable Substance List(報告対象物質リスト)に掲載されている物質を対象としています。また、IEC62474報告対象物質リストに含まれる欧州REACH規則認可対象候補物質(SVHC; substances of very high concern)については、ランクB(管理物質(群))にて管理を行っています。

■東芝グループ環境関連物質リスト

区分 判断基準
ランクA(禁止物質(群)) 東芝グループにおいて、調達品(包装材含む)への含有を禁止する物質(群)。
国内外の法規制で製品(包装材含む)への使用が禁止又は制限されている物質(群)。
ランクB(管理物質(群)) 使用実態を把握し、削減・代替化などの環境負荷低減に努める物質(群)、
又はクローズドシステムで回収・無害化を図り環境への影響を抑制する物質(群)。
区分 判断基準
ランクA(禁止物質(群)) 東芝グループにおいて、調達品(包装材含む)への含有を禁止する物質(群)。
国内外の法規制で製品(包装材含む)への使用が禁止又は制限されている物質(群)。
ランクB(管理物質(群)) 使用実態を把握し、削減・代替化などの環境負荷低減に努める物質(群)、
又はクローズドシステムで回収・無害化を図り環境への影響を抑制する物質(群)。

注)業界動向などの事情から、東芝グループ各社により管理内容(物質群、管理レベル、閾値など)が異なる場合があります。

■世界各国の含有化学物質に関する規制動向の一例

  • WSSD(World Summit on Sustainable Development): 持続可能な開発に関する世界首脳会議
  • RoHS(The Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)指令: 電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令

フタル酸エステル代替化の推進


東芝グループは製品含有化学物質管理の重点施策として、4種フタル酸エステルの代替化を推進しています。

フタル酸エステルは塩ビやその他プラスチックの可塑剤として使用されており、電気・電子機器においても、コード類や内部配線で使用するケーブル被覆などや、各種パッキンなどの可塑剤として広く使用されています。しかしその生殖毒性への懸念から、昨今、フタル酸エステルへの規制が強化されており、電気・電子機器に関しても、2019年7月22日より、欧州RoHS指令にてEU域内市場に上市する電気・電子機器への4種フタル酸エステルの使用が規制されており、同様の規制が各国へも広がっています。

東芝グループでは、「東芝グループ グリーン調達ガイドライン」で4種フタル酸エステルを禁止物質として位置づけるとともに、当社で開発した高分子材料中のフタル酸エステル含有検査の簡易手法などの材料試験法の社内技術標準を整備することで、着実な製品含有化学物質管理を進めています。

  • フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル。主にプラスチック(ケーブル被覆など)の可塑剤などとして使用されており、人体への影響が懸念されている

【事例】フタル酸エステルの簡易スクリーニング法の開発

(株)東芝 研究開発センター

2019年7月より欧州RoHS指令の制限物質に追加された4種フタル酸エステルについて、調達品の受入検査や製造工程の品質管理をするためのスクリーニング法の一つとして「薄層クロマトグラフィ(TLC)法」を開発し、東芝グループ内での運用を図っています。
フタル酸エステルのスクリーニングに求められるスペックは使用者によってさまざまであるため、目的に応じて手法を選べることが重要です。スクリーニング法はいくつかありますが、それぞれに特徴があり、TLC法は低コストかつ簡便であるという点が特長です。国内外の電気電子業界においてフタル酸エステルの管理コストを低減させたいという要求もあることから、当社はスクリーニング法の選択肢の一つとしてTLC法の国際標準化を推進し、2023年5月にIEC 62321シリーズのフタル酸エステルスクリーニング法のひとつとして規格化されました。

  • 国際電気標準化会議(IEC)における製品含有化学物質試験法シリーズ。
  • 塩化ビニル、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムを想定
  • 薄層クロマトグラフィ