事業活動における化学物質排出量の削減

環境に直接及ぼす影響が大きい化学物質を「削減対象物質」とし、排出量の削減に努めています。

2022年度は、排出量で上位を占める洗浄や樹脂工程で使用される溶剤の対策に取り組み、使用物質の代替化、生産性向上やプロセスの改善による原材料使用量の削減、管理強化によるVOC(揮発性有機化合物)蒸発の抑制などを進めました。その結果、活動量原単位は2021年度比で91%となり、目標達成となりました。

入り口での対策として物質の代替化、プロセス改善による材料効率の向上を行い、出口での対策として除害装置や回収装置の導入拡大を進めていきます。

■削減対象物質の排出量と活動量原単位※1改善率

■ 削減対象物質の排出量の内訳(2022年度)

  • 原単位には、モノづくりにともなう化学物質排出量と関係をもつ値(生産高、生産台数、人数、延床面積など)を使用しています
  • 2020年度を100%とした活動量原単位改善率

【事例】色付きコーキング材の使用による塗料使用量削減

北芝電機(株)

VOC(揮発性有機化合物)は、塗料などに多く含まれている化学物質であり、大気中に放出されると浮遊粒子状物質や光化学オキシダントなどの大気汚染の原因の一つとなることから、北芝電機(株)では、VOCの使用量削減に取り組んでいます。変圧器を組み立てる際、合わせ面の防錆のためにコーキング材を使用しています。これまでコーキング材の色が外装の色と異なることから、コーキング材の上にハジキ防止剤を塗布し、その上に外装色で仕上げ塗装を行っていました。

今回、色付きコーキング材を導入し、ハジキ防止剤と仕上げ塗装をなくしました。その結果、代表的な変圧器1台当たり、約5kgの塗料使用料を削減することができました。今後、色付きコーキング材の適用できる範囲を広げ、更に塗料使用量の削減を図っていきます。

色付きコーキング使用部分
色付きコーキング使用部分

【事例】半導体製造工程における化学物質の使用量削減

(株)ジャパンセミコンダクター 大分事業所

(株)ジャパンセミコンダクターでは、MCU製品※1、ASIC製品※2、アナログ製品※3など、幅広い半導体製品の製造を行っています。半導体製品のような量産品の品質を維持するためには、製造過程における工程能力の継続的な確認が欠かせません。そこで、大分事業所では、シリコンウエハ表面の成膜装置を対象に、品質維持と生産性向上の両立を図りながら、工程能力の確認頻度の最適化に取り組みました。その結果、頻度を抑えることで、能力評価過程で使用するシランガスを年間37.5%削減し、化学物質の使用量削減を実現しました。

  • MCU製品(Microcomputer unit):電子機器を制御する半導体。応用製品例:TV、電話、冷蔵庫などの家電製品や産業機器全般、車のエンジンコントロール、カーナビなど
  • ASIC製品(Application specific integrated circuit):特定の顧客の用途に合わせて特別に設計・製造される半導体。応用製品例:プリンタ、ゲーム、電子楽器など
  • アナログ製品:センサーで取り込んだ光や熱(温度)、音声、振動などのアナログ信号をデジタル信号に変換したり、またその逆を行うなど処理・制御する半導体。応用製品例:家電製品、カーオーディオ、無線給電など

【事例】マルチスポットフロー導入による化学物質使用量・排出量の削減

テックインドネシア社

東芝テックグループでは、環境負荷低減施策の一つとして、製造工程での化学物質の適切な管理及び使用量・排出量の継続的な削減を行っています。通常の基板製造工程では、はんだづけの前処理としてIPA(イソプロピルアルコール)を使用し、基板全面の洗浄を行いますが、基板によっては部分塗布による洗浄が可能なことから、部分塗布を行いIPA使用量及び排出量を削減できるはんだ装置「マルチスポットフロー」を採用し、環境負荷低減に取り組んでいます。
本設備は既に中国などの当社製造拠点に導入され一定の効果を得ていますが、2019年度にはテックインドネシア社でも設備導入を行い、基板製造工程でのIPA使用量を25%削減しました。また、部分的に実装することで、はんだを溶かすためのエネルギーを削減し、地球温暖化防止にも貢献します。

テックインドネシア社のマルチスポットフロー