生物多様性の保全

東芝グループでは、生物多様性保全活動を水資源や化学物質の管理に並ぶ、「生態系への配慮」項目における重要な施策の一つとして推進しています。推進にあたっては、業界団体、行政、自治体、他企業などを含めた関係主体とも積極的な連携を行い、生物多様性の「主流化」に貢献していくことをめざしています。

東芝グループ生物多様性ガイドライン


東芝グループは生物多様性の保全と持続可能な利用を進めていくうえでの考え方をまとめた「東芝グループ生物多様性ガイドライン」を策定しており、本ガイドラインに則った事業活動を推進しています。

基本方針


東芝グループは、生物多様性の保全及び生物多様性の構成要素の持続可能な利用のため、次の取り組みを行う。

  • 事業活動が生物多様性に及ぼすかかわりを把握する。
  • 生物多様性に配慮した事業活動などにより、生物多様性に及ぼす影響の低減を図り、持続可能な利用を行う。
  • 取り組みの推進体制を整備する。

具体的な取り組み


  1. 工場の立地や再配置において、生態系の保護などに配慮する。
  2. 地方公共団体や民間団体などとのコミュニケーションを図り、連携した活動を行う。
  3. 持続可能な社会の一員として、継続的な社会貢献活動を行う。
  4. 環境対策による生物多様性を含む種々の環境側面への影響・効果を評価する。
  5. 資源採掘までを視野においたサプライチェーンにおける生物多様性保全への取り組みを推進する。
  6. 事業活動に由来する資源の消費や環境負荷物質の排出による影響を評価する。
  7. 自然の成り立ちや仕組みに学び、事業の特性に応じて、技術による貢献をめざす。

地域と連携した従業員参加型活動の推進


東芝グループは、「ネイチャーポジティブ」の実現に貢献していくことをめざし、グローバル約60拠点で生物多様性保全活動を推進しています。活動テーマは、新しい世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(2021年当時の「ファーストドラフト」)の23個のターゲットを参照したうえで設定し、「生態系ネットワークの構築」「希少種の保護、生息域外保全」「海洋プラスチック問題への対応」「気候変動への対応(緩和・適応)」「水の保全」の5つとしました。これらの活動テーマのもと、拠点敷地内や周辺地域において、それぞれの地域の特性や課題に応じた取り組みを地域のステークホルダーの皆様とともに行っています。また、活動の際には、「連携」「広報」「教育」の視点を盛り込み、活動の拡大・深化をめざしています。従業員自らが企画又は参加する活動が中心となっており、拠点内の環境意識向上、活動の継続的展開につながっています。

■5つの「活動テーマ」と3つの「拡大・深化ツール」

活動テーマ

テーマ 1 生態系ネットワークの構築

ビオトープの構築、同構築を目的とした植樹

テーマ 2 希少種の保護、生息域外保全

事業所内外における希少な動植物の保護

テーマ 3 海洋プラスチック問題への対応

事業所周辺・海岸・河川の清掃、食堂や売店などでの使い捨てプラスチックの削減など

テーマ 4 気候変動への対応(緩和・適応)

気候変動の緩和、防災・減災を目的とした植樹、堰づくり、緑のカーテン設置など

テーマ 5 水の保全

海岸や河川の清掃、植樹による水の涵養など

拡大・深化ツール

ツール 1 連携

行政、NPO/NGO、地域住民、従業員などさまざまなステークホルダーとの協働による、取り組み内容の拡大・深化

ツール 2 教育

近隣学校への出前授業、市町村主催勉強会、社内教育における活動事例紹介など

ツール 3 広報

社内外ウェブサイト・レポートでの活動紹介、社外表彰・認証への応募、行政・団体主催による各種プログラムへの登録など

■活動事例

①活動テーマ1「生態系ネットワークの構築」
「事業所内ビオトープの設置」/東芝インフラシステムズ(株) 三重工場

②活動テーマ2「希少種の保護、生息域外保全」
「兵庫県絶滅危惧種カワバタモロコ、フジバカマの保護活動」/東芝エレベータ(株) 姫路工場、東芝デバイス&ストレージ(株) 姫路半導体工場

③活動テーマ3「海洋プラスチック問題への対応」
「従業員への海洋プラスチック問題啓発活動・社員食堂でのプラスチック製カトラリーやレジ袋の使用中止」/東芝テック シンガポール社

④活動テーマ4「気候変動への対応(緩和・適応)」
「『加賀東芝の森』での森林整備・保全活動」/加賀東芝エレクトロニクス(株)

⑤活動テーマ5「水の保全」
「従業員向け水資源保全啓発」/東芝テック マレーシア製造社

その他の東芝グループ活動事例は以下の特設サイトで紹介しています。

「30by30目標」への貢献


「昆明・モントリオール生物多様性枠組」には「2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する」という目標があります(ターゲット3、通称「30by30目標」)。世界規模の土地に関する取り組みとなり、保護地域や、OECM(Other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外の生物多様性保全に貢献している場所)の拡大をめざすものです。日本では、日本国内のOECMを拡大していくことを目的として「生物多様性のための30by30アライアンス」が設立され、2023年度からは、民間などの取り組みにより保全が図られている、又は保全を主目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している場所を「自然共生サイト」として認定し、OECM国際データベースに登録する制度が開始されています(事務局:環境省)。東芝グループはグローバルに事業拠点を展開しており、土地の持続可能な利用は重要な課題と認識していることから、「30by30目標」への直接的な貢献の第一歩として本アライアンスに参画しました。今後、国内拠点の敷地内及び周辺地域の自然保護活動などを通じ「自然共生サイト」の拡大に貢献していくとともに、海外拠点での貢献方法についても情報収集及び検討を進めていきます。

【事例】環境省「自然共生サイト」認定を取得(2023年10月)

東芝ライテック(株)今治事業所

愛媛県にある織田ヶ浜海岸では、愛媛県絶滅危惧1B類の「ウンラン」を始めとする多くの希少植物が自生しています。
同海岸の近隣に位置する今治事業所では、地域に根付いた生物多様性推進活動を目指しており、近隣住民、自治体、NPO団体、動植物専門家の皆様と連携し、海岸の整地活動や、小学生を対象とした環境学習会を継続的に実施しています。
その活動が評価され、東芝グループで初となる「自然共生サイト」の認定を取得しました。

織田ヶ浜海岸での整地活動

小学生を対象とした環境学習会

愛媛県絶滅危惧1B類「ウンラン」

生物多様性の評価


東芝グループは国際的な評価ツール「IBAT」を使い、グローバル各拠点周辺の保護地域やその他の生物多様性の保全において重要な地域の情報、絶滅危惧種の棲息状況に関する情報などを収集し、生物多様性に関連する評価を実施しています。今後は評価結果をもとに、地域の実情に沿った生物多様性保全活動を推進していきます。 

IBAT評価例

  • Integrated Biodiversity Assessment Toolの略。国連環境計画(UNEP)や国際自然保護連合(IUCN)などが参加する生物多様性プロジェクト「IBAT Alliance」が提供する、世界各地の生物多様性や重要生息地に関する具体的情報を提供するツール Integrated Biodiversity Assessment Tool (IBAT)