気候変動による影響に対応する「適応策」

地球温暖化をはじめとした気候変動問題への対応として、温室効果ガス排出量を削減する「緩和策」を推進する一方で、気象レーダや雨水排水処理システム、防災情報システム、自立型水素エネルギー供給システムなど、気候変動の影響に備える「適応策」の面でも対応を進めています。

【事例】浸水などのリスク低減に貢献する雨水対策ソリューション

東芝インフラシステムズ(株)

近年、地球温暖化やヒートアイランド現象などの影響にともなう局地的大雨や集中豪雨により、浸水被害が発生する可能性が高まっています。
当社は、①下水管きょ内に設置した無線・バッテリー内蔵型水位計から収集した水位データと、公的機関などで計測・配信している気象データや地上雨量計データを基に、AI活用により、リアルタイムで浸水の可能性がある場所や水位を予測するリアルタイム浸水ハザードマップ提供システム、②ポンプ場への雨水流入量を予測し、それに基づいて雨水ポンプの起動・停止水位を動的に変動させることで、浸水リスクを低減させるとともに、雨水ポンプのメンテナンスコスト削減及びオペレータの負荷軽減を実現する制御技術を開発しています。
これらのシステムや制御技術を活用することにより、気候変動に適応するとともに、安心して住み続けられるまちづくりに貢献してまいります。

【事例】マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ

東芝インフラシステムズ(株)

近年、気候変動による局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)や竜巻による甚大な被害が大きな社会問題となっており、今後その頻度や規模が拡大していくと予測されています。国内ではこの状況を受けて2018年6月に気候変動適応法が成立しており、国や自治体、企業などが気候変動のリスクに備える「適応策」に積極的に対応することが強く求められています。
東芝インフラシステムズ(株)はSIP※1「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策に、研究グループの一員としてプロジェクトに参画し、世界初※2となる実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発しました。
MP-PAWRは、アンテナを従来の反射鏡型から最新のフェーズドアレイ型にしています。そのためアンテナを1回転させるだけで、地上から高さ15kmほどの空間の雨雲を半径60km内であれば30秒、半径80km内であれば1分で立体的にとらえることが可能です。また、高精度の降水観測機能を搭載した結果、従来型の気象レーダよりもゲリラ豪雨の兆候とその雨量を迅速に、かつ高い精度で観測できるようになりました。急速に発達する積乱雲を観測し、20~30分先の局地的大雨や竜巻危険度を高精度に予測することが可能なため、防災・減災の術として期待されています。

  • 戦略的イノベーション創造プログラム。科学技術分野におけるイノベーションを実現するために、内閣府/総合科学技術・イノベーション会議が2014年に創設した施策
  • 水平偏波と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能を有し、10方向以上を同時に観測可能なDBF(デジタル・ビームフォーミング)のリアルタイム処理機能を搭載した気象観測専用のフェーズドアレイレーダとして

 

レーダアンテナ装置

埼玉大学に設置されたMP-PAWRレドーム

【事例】蓄電池群制御による仮想の発電所バーチャルパワープラント(VPP)

東芝エネルギーシステムズ(株)

横浜市並びに東京電力エナジーパートナー(株)とともに、地域防災拠点に置かれた蓄電池を、平常時には小売電気事業者が電力需要の調整(デマンドレスポンス)を行うための仮想の発電所「バーチャルパワープラント」として活用し、非常時には通信設備を数日間維持するための防災用電源として活用するシステムの実証試験を行っています。この実証プロジェクトでは、10kWh程度の蓄電池を多数台群制御し、電力卸売市場価格の変動にリアルタイムで追従した充放電を実施しており、太陽光発電などの分散するエネルギーを余らせぬよう電力をタイムリーに活用することをめざしています。

なお、事業活動における適応策としては、洪水や台風などの災害発生時に向けた設備の床上げや、省エネと猛暑対策を兼ねた「緑のカーテン」の設置など、それぞれの拠点の地域特性に合わせた対策を進めていきます。