エネルギー供給にかかわる製品・サービス

エネルギー供給にかかわる製品・サービスによる貢献


2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」に向け、世界中の国や企業が、パリ協定に基づきCO2の排出削減目標を発表するなど、本格的な取り組みが始まっています。

東芝グループでは、再生可能エネルギー技術の開発や、発電プラントなどの電力インフラの効率を向上させることで、CO2排出量の抑制に貢献しています。2021年からの第7次環境アクションプランでは2023年度にエネルギー供給時の温室効果ガス排出量9.1%削減(2019年度比)をめざして取り組み、2022年度の実績は70.4%と目標を達成しました。
今後も、エネルギーを「つくる、おくる、ためる、かしこくつかう」を一貫して提供できる総合力と技術力を活かし、将来のエネルギーのあり方そのものをデザインする企業として、カーボンニュートラルの実現に貢献します。

■エネルギー供給による温室効果ガス排出量削減率(2019年度比)
■再生可能エネルギー導入による温室効果ガス削減量

エネルギーをつくる

「エネルギーをつくる」段階でCO2を発生しない再生可能エネルギー(水力、地熱、風力、太陽光、バイオマス発電など)を数多く納入しており、更なる普及促進に向けて、さまざまな技術開発(小型・軽量化、高効率化など)を推進しています。またCO2が発生する火力発電においても、排ガスからCO2を分離回収する技術によりCO2の排出抑制に貢献しています。

エネルギーをおくる・ためる

風力や太陽光発電は、天気や時間帯によって発電量が大きく変化するため、電力を安定供給するための技術が必須です。具体的には、蓄電池や水素(P2G)などの蓄放電機能をVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)技術により適切に制御することで、電力変動を抑えています。

エネルギーをためる・かしこくつかう

需要を上回るエネルギーがつくられた場合は、電力を水素に変換することで、多くのエネルギーを水素の形で「ためる」ことが可能となります。変換された水素は、再び発電のために使用したり、車や船などのモビリティの燃料として使用することが可能です。

【事例】フィルム型ペロブスカイト太陽電池

(株)東芝 研究開発センター、東芝エネルギーシステムズ(株)

当社は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いたフィルム型ペロブスカイト太陽電池において、新たな成膜法を開発することにより世界最高※1のエネルギー変換効率16.6%を実現しました。
この太陽電池は、今までの太陽電池にはない「軽い、薄い、曲がる、割れない」という特徴を有しているため、これまでの太陽電池では設置が困難であった低耐震建造物(工場、体育館、ビニールハウスなど)や、ビルの外壁、窓などへの設置も可能となります。

このエネルギー変換効率16.6%の太陽電池を、東京23区内の建物の屋上及び壁面の一部に設置した場合、原子力発電所2基分(東京23区の家庭内年間消費電力量の3分の2相当)の発電が見込めます※2。本成果の一部は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業の結果得られたものです。
今後は、変換効率20%以上と、更なる大面積化を実現し、早期の実用化をめざします。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池の
実装イメージ

【事例】Cu2Oタンデム型太陽電池

(株)東芝 研究開発センター、東芝エネルギーシステムズ(株)

亜酸化銅(Cu2O)を用いた透明なPVセルは、現在広く普及しているシリコン(Si)系太陽電池と重ね合わせてタンデム化することで、世界トップレベルの発電効率を実現した太陽電池であり、電気自動車(EV)など電動モビリティへの積載、自家発電システム及び分散電源への適用が期待されている太陽電池です。

本透過型Cu2O太陽電池単体での発電効率は、2021年末に公表した※18.4%から1.1ポイント更新し、世界最高※2の発電効率9.5%※3を達成しました。また、発電効率25%の高効率Si太陽電池に積層したCu2O/Siタンデム型太陽電池全体の発電効率は28.5%に到達すると試算でき、現在のSi系太陽電池の世界最高効率26.7%※4を超えるポテンシャルを有することを確認しました。

このCu2O/Siタンデム型太陽電池を電気自動車に搭載した場合、充電なしの航続距離は1日当たり約37kmと試算することができました※5。今後充電なしで長時間走行可能なEVの実現や、電車などそのほかのモビリティへの搭載により、「運輸の電動化」を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

本成果の一部は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業の結果得られたものです。

Cu2O/Siタンデム型太陽電池模式図

EVへの搭載イメージ

【事例】CCS(Carbon Capture and Storage:CO2分離回収・貯蔵)

東芝エネルギーシステムズ(株)

発電時に大量のCO2が発生する火力発電においては、排ガスからCO2を分離回収し貯蔵する(CCS:Carbon Capture and Storage)設備を導入することでCO2の排出を抑制することが可能です。

東芝エネルギーシステムズ(株)は、2020年10月より、(株)シグマパワー有明の三川発電所(福岡県大牟田市)において、CO2を分離回収する設備の実証運転を行っています。

三川発電所は、ヤシ殻を主燃料とするバイオマス発電を行っているため、バイオマス発電所から排出されるCO2を分離回収する、世界初の大規模BECCS(Bio-Energy with Carbon Capture and Storage:CCS付きバイオマス発電)対応設備であり、「カーボンニュートラル」を超えた「カーボンネガティブ」の実現に向け、実証運転を進めています。

CO2分離回収技術

大規模BECCS対応設備

【事例】自然由来ガス72kV/84kVガス絶縁開閉装置 AEROXIA™

東芝エネルギーシステムズ(株)

発電所や変電所に設置されているガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgear)の絶縁媒体は、一般的に絶縁性能が高いSF6ガスが用いられていますが、このガスはCO2ガスに比べて25,200倍の高い地球温暖化係数※1を有しており、欧州及び北米を中心に電力用SF6ガスの環境規制が具体化しています。

2022年4月には、欧州連合のフッ素化ガス規制※2の改定案が公開され、その中では自然由来ガス機器が実用化されれば、SF6ガスをはじめとした地球温暖化係数の高いガスを用いた製品の新規販売を禁止することが提案されました。今後、定格電圧に応じて2028年以降から順次規制をかけることが提案されており、自然由来ガスを用いた機器の需要は今後ますます高まることが予想されます。

この状況を見据え、東芝エネルギーシステムズ(株)では、安全性が高く漏えい時の地球温暖化への影響がない、自然由来ガスを用いた開閉装置の研究開発を15年以上行ってきており、この度国内初※3となる自然由来ガスを用いた電力会社向けのGIS※4を納入しました。今後も、環境調和性の高い自然由来ガスを用いたGISの高電圧・大容量化をめざした開発を積極的に進めていきます。

  • 二酸化炭素を基準にして、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した数字のこと(GWP:Global Warming Potential)
  • Regulation (EU) No 517/2014 on fluorinated greenhouse gases
  • 当社調べ(2022年7月12日時点)
  • 東京電力パワーグリッド株式会社向け72kV GIS

自然由来ガス72kV/84kVガス絶縁開閉装置

【事例】VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)

東芝エネルギーシステムズ(株)

風力や太陽光発電は、天気や時間帯によって発電量が大きく変化するため、電力を安定供給するための技術が必須です。

東芝エネルギーシステムズ(株)は、風力や太陽光発電を束ね、電力をためる蓄電池と併せて制御して、電力の需要と供給をバランスさせることで、あたかも一つの仮想の発電所(VPP:Virtual Power Plant)とみなして取り扱うことができる技術を開発しており、この技術を導入することで、風力や太陽光発電の導入促進につなげることが可能になります。

日本では、FIT制度(固定価格買取制度)のもと再生可能エネルギーの導入が進んできましたが、再生可能エネルギーの主力電源化を見据えて、FIP制度(発電事業者が市場価格で売電する場合に一定のプレミアムを上乗せする方式)へ移行されました。再エネ発電事業者は、FIP環境下では、正確な発電量予測に基づく計画値同時同量の責務が課されるため、自社の発電設備などの発電量の予測精度の向上が求められています。

東芝エネルギーシステムズ(株)は東芝ネクストクラフトベルケ(株)と、再生可能エネルギーの発電事業者への支援サービスとして「再エネアグリゲーションサービス」を開始し、計画値同時同量業務と取引業務を行っています。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、再エネ普及を後押しするとともに、安定的かつ効率的な電力システムの実現にも貢献していきます。

VPPの構成要素

【事例】P2G(Power to Gas)、 P2C(Power to Chemicals)ソリューション

東芝エネルギーシステムズ(株)

太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、気象状況による発電量の変動が大きく、コントロールが困難です。変動する発電量に応じて需給のバランスを調整し、かつ電力エネルギーを無駄なく、必要な時、必要な場所、必要な目的で利用できるように水素に変換することで、多目的用途で使用を可能にするのがP2G(Power to Gas)ソリューションです。このP2Gにより転換されたエネルギー由来の水素は、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の燃料や、工業プロセスなどさまざまな分野で使用され、CO2排出量低減に貢献します。

当社は、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R:Fukushima Hydrogen Energy Research Field)で、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業として、世界有数規模の水電解装置によって水素製造を行っています。ここで製造された水素は、2020年東京オリンピック・パラリンピックの際にも使用されました。

また、CCS(Carbon Capture and Storage:CO2分離回収・貯蔵)技術などで得られたCO2を電気分解し、水素と化学合成することで、航空機の燃料や化学製品などの新たな用途として有効活用するP2C(Power to Chemicals)ソリューションによって、CO2リサイクルを実現し、カーボンニュートラル社会に向け貢献します。

  • 本事業は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」の一環として実施しています

水素ソリューション(P2C)

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)