事業活動における気候変動への対応

東芝グループは、国内外の事業所・工場をはじめ、事務所などのオフィスにおいて積極的な省エネ施策を推進しています。電力などの使用にともなうエネルギー起源CO2排出量については、オフィスなどではこまめな節電を推進し、事業所・工場においては、生産効率の向上による省エネ施策の推進や、再生可能エネルギーの導入などによる削減活動をしています。特に、重電機器の絶縁用SF6(六フッ化硫黄)や、半導体製造用のPFCsガス(パーフルオロカーボン類)の回収装置・除害装置の設置を積極的に行い、更に生産プロセス改善施策を着実に進めることで、事業活動における温室効果ガス総排出量の削減に貢献しています。
2022年度の総排出量は77万t-CO2となり、目標の102万t-CO2を達成しました。またエネルギー起源CO2排出量原単位に関しては、2021年度比で87%となりました。
今後は、東芝グループの長期的な温室効果ガス削減目標に基づき、国内外拠点における再生可能エネルギー導入拡大などの施策を推進することで排出量の大幅な削減を進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。また、第7次環境アクションプランの新しい取り組みとして、リモート化・自動化・知能化などを実現する自社グループのデジタル技術を通じた温室効果ガス排出削減にも注力していきます。

  • 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)(=亜酸化窒素)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3

■温室効果ガス総排出量※

※電力CO2算定には、各電力会社より提供された排出係数を使用

■温室効果ガス総排出量の内訳(2022年度)

■エネルギー起源CO2排出量と活動量原単位※1改善率

■エネルギー起源CO2排出量の内訳(2022年度)

  • 原単位には、モノづくりにともなうエネルギー使用量と関係をもつ値(生産高、生産台数、人数、延床面積など)を使用しています
  • 2020年度を100%とした活動量原単位改善率

インターナルカーボンプライシング制度の導入


東芝グループは、事業活動により排出される温室効果ガス(Scope1・2)の削減に向けて、2022年12月より、インターナルカーボンプライシング(ICP、企業内炭素価格)制度を導入しています。温室効果ガス排出削減を目的とした設備投資が、将来事業に与える影響を経済価値換算し、それを投資の意思決定に利用することで、カーボンニュートラル化に向けた社内意識の醸成と行動変容を促進していきます。
なお、ICPは、IEA(国際エネルギー機関)が毎年公表する温室効果ガス排出コストの将来見通しを基に国別に設定し、定期的に見直すことで運用の強化を図っていきます。

  • 東芝グループ内炭素価格(ICP):<日本> 13,827円/t-CO2(2023年度) ※ICPは国別に設定
  • 対 象:温室効果ガス排出削減を目的とした設備投資
  • 適用方法:対象となる設備投資に対し、ICPを適用して温室効果ガスの削減量を「見なしの利益」として加味したものを、投資判断の材料として用いる

再生可能エネルギーの導入拡大


再生可能エネルギーは、総エネルギー(電力)消費量の20.8%を使用しています。
東芝グループの長期的な温室効果ガス削減目標に基づき、国内外拠点における再生可能エネルギー導入拡大などの施策を推進することで排出量の大幅な削減を進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

【事例】東芝グループ川崎本社の電力使用にて実質100%再エネ化を実現

(株)東芝

東芝グループの川崎本社であるスマートコミュニティセンター(川崎市)の電力使用に仮想電力購入契約(VPPA:Virtual Power Purchase Agreement)を導入し、FIT非化石証書の購入と合わせて、2023年4月から実質100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)化を実現しました。
本VPPAの再エネ発電量は約51万kWh/年(CO2削減効果244t/年)を見込んでおり、川崎スマートコミュニティセンター全体の使用電力量(2022年度見込み)の約7.3%に相当します。残りはすべてFIT非化石証書を充当することで、川崎スマートコミュニティセンターは、VPPAとFIT非化石証書を合わせ、実質100%再エネ化を実現することができました。
東芝グループでは、気候変動や循環経済への対応などグローバルな視野に立った長期ビジョンとして、「環境未来ビジョン2050」を策定し、活動を推進しています。同ビジョンの「気候変動への対応」でも「気候変動への対応」を重点項目として掲げており、2050年度までに当社グループのバリューチェーン全体でカーボンニュートラル実現をめざすとともに、その通過点として、2030年度までに温室効果ガス排出量を70%削減(2019年度比)することを目標としています。

環境負荷低減の取り組み


【事例】事業所内の蒸気供給最適化による省エネ活動

(株)ジャパンセミコンダクター 大分事業所

大分事業所では、車載向けアナログ半導体などを製造しており、原油換算で80,241kl/年のエネルギーを使用する第一種エネルギー管理指定工場です。エネルギー使用のうち、9割強が電気であるため、これまで主に電力使用量削減の省エネ取り組みを行ってきましたが、今回、原油換算で5,689kl/年を使用する都市ガスの省エネに重点的に取り組みました。
具体的には、放熱ロス最小化のため、事業所内棟間の蒸気供給系統を見直し、蒸気の所要予測をいっそう精緻に行ったうえで水管ボイラと新設した小型貫流ボイラの併用による運転の最大効率化、更には蒸気供給圧力の適正化などです。
取り組みの結果、都市ガス消費量を原油換算で520kl/年(従来比9.1%)削減することができました。この取り組みは、2022年度省エネ大賞の省エネ事例部門において、省エネルギーセンター会長賞を受賞しました。

「2022年度省エネ大賞」授賞式の様子

【事例】電力を「H」減らす・「T」創る・「T」蓄める、HTT推進活動

東芝インフラシステムズ(株) 府中事業所

東京都では、都民・事業者等への働きかけを通じて、電力のHTT(「H」減らす・「T」創る・「T」蓄める)を推進し、ゼロエミッション東京の実現に向けた対策を進めています。
東芝インフラシステムズ(株)府中事業所では、社内ポータル(デマンドEYE)による電力使用量の見える化や、省エネ特別対策の実施を構内放送にて周知するなどの対応により、従業員全員で電力量削減に取り組んでいます。このような取り組みが、電力需給の危機回避や脱炭素社会の実現に貢献したと評価され、東京都から表彰を受けました。
また、府中事業所は、東京都の温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)において、温暖化対策の取り組みが特に優れた「トップレベル事業所」に認定されています。当事業所は、1940年竣工の大規模事業所として、太陽光発電や高効率な生産設備の導入、自然照明の導入やその運用等により、ピーク電力や電力量の抑制を行っている点が評価されました。
今後も、環境性能に優れた事業所運営を行い、環境との共生と生産効率向上をめざしていきます。

※ 東京都が、都内の大規模事業所を対象に2010年度より始めた温室効果ガス排出量削減のための制度。各事業所に温室効果ガス排出削減義務(キャップ)を課すとともに、他の事業所が削減義務以上に削減した温室効果ガスを売買する排出量取引(トレード)によっても義務履行ができる仕組み。
トップレベル事業所に認定されると、認定期間(2024年度まで)の削減義務量が2分の1に軽減され、より多くの超過削減量が確保できる。

【事例】ボイラ設備の更新と燃料切り替えによる環境負荷低減

東芝インフラシステムズ(株) 三重工場

変圧器を製造している三重工場では、車両用変圧器や小型油入変圧器の中身(コイル+鉄心)の乾燥処理をするために小型貫流ボイラ設備を設置しています。設置から14年が経過し、老朽化が進行していたため、3台の小型貫流ボイラを新たな設備に入れ替えました。これにより、作業負荷に合わせた適切な運転制御ができるようになり、消費電力を従来の状態に比べて25%削減することができました。これは、ボイラの効率向上やエネルギー管理の改善によるものであり、コスト削減にもつながりました。更に、使用している燃料を灯油から都市ガスに切り替えることで燃焼効率が向上し、CO2排出量を約23%削減することができました。今後も、環境に配慮し、持続可能な取り組みを継続していきます。

新規導入した小型貫流ボイラ設備

【事例】東芝グループでカーボンニュートラルLNG導入

(株)東芝

東芝グループは、「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」に加盟し、府中事業所及び小向事業所でカーボンニュートラルLNG(以下、CNL)をグループとして初めて導入しました。CNLは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、生物多様性や新興国の貧困問題に寄与するプロジェクトにより生み出されたCO2クレジットで相殺(カーボン・オフセット)し、燃焼させても地球規模ではCO2が発生しないとみなすLNGです。東芝グループは、CNLの利用拡大を通して気候変動をはじめとする社会課題に対応し、持続可能な社会の実現に貢献します。