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問いの背景
私たちは普段、家や会社で分別してゴミを廃棄していますし、街ではリサイクル製品もよくみかけます。環境配慮の取り組みとして3R(リデュース、リユース、リサイクル)という言葉も使われてきました。
そういったなか、なぜ今サーキュラーエコノミーという考え方が注目されているのでしょうか? 資源を再利用するという意味ではリサイクルもサーキュラーエコノミーも同じような考え方のように思えます。
リサイクルや3Rとサーキュラーエコノミーとでは、何が違うのでしょうか?
リサイクリングエコノミー ⇒ サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーは廃棄を前提としない
リサイクルや3Rは、リニアな経済システムの中で発生する廃棄物を再資源化するという考え方がベースとなっています。一方、サーキュラーエコノミーはそもそも製品・サービス設計の初期段階から廃棄物や汚染が出ないようにする考え方のため、根本的に異なるものだとされています。
しかし、サーキュラーエコノミーを表す図の中にもリサイクルがあります。リサイクリングエコノミーで使われているリサイクルと、サーキュラーエコノミーのリサイクルは同じことを指しているのでしょうか?
出典: オランダ「A Circular Economy in the Netherlands by 2050 -Government-wide Program for a Circular Economy」(2016)を基に作図
サーキュラーエコノミーは使い続けることを重視し、リサイクルは最終手段
エレンマッカーサー財団の考え方によると、リサイクルはサーキュラーエコノミーでは最も優先順位が低い循環サイクルに位置付けられています。リサイクルは最終製品を原材料レベルまで戻すため製品価値が失われてしまううえ、リサイクルする活動自体に、材料・部品メーカーや加工・製造メーカーなどの多くの人が関わり、エネルギーや水が沢山必要となるためコストが高くなってしまうからです。
サーキュラーエコノミーでは、図では内側の矢印で表されたシェアリング/維持/長寿命化、再利用/再配分によって、価値をなるべく高く保ったまま使い続けることを重視しています。
長寿命化するとたしかに資源を有効に活用できそうですが、経済的にはどうなんでしょうか?
出典:エレンマッカーサー財団「Circular Economy Systems Diagram (Feb, 2019)」を基に作図
サーキュラーエコノミーは、環境負荷低減と経済発展の両立を目指すモデル
原料を廃棄しないサーキュラーエコノミーは、新たな資源の投入を最小化でき、投入した資源を使い尽くすことができます。つまり、環境負荷を抑えると同時に資源消費、資源への投資コストも抑えることができます。また、製品を売らずにシェアやレンタルを行うことで、製品から得られるデータを価値に変えるビジネス(シェアリングプラットフォーム、Product as a Service等)へと変革することができます。
サーキュラーエコノミーが注目されているのは、サステナビリティの側面はもちろん、新たな経済価値を産むモデルでもあることが理由かもしれません。投資の側面からみても、こういった環境と経済の両面を考慮する姿勢が評価されるようになってきたようです。
「経済発展」から「資源消費」と「環境負荷」の2つを切り離す「デカップリング」という考え方を表す図
出典: 国連環境計画「Decoupling Natural Resource Use and Environmental Impacts from Economic Growth」を基に作図
あなたが関わるビジネスでは、現在何を廃棄していますか?
もしそれらを廃棄せず使い続けなければならないとしたらどうしますか?
廃棄できないとはいえ、いずれ使用期限は訪れます。しかしそれはどこかの誰かにとってはまだ価値があるものかもしれません。廃棄しないことを前提にすると、製品やサービスの設計は結構変わるのではないでしょうか。
関連する問い
参考
https://ideasforgood.jp/glossary/circular-economy/
(IDEAS FOR GOOD : サーキュラーエコノミーとは)
https://ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy-diagram
(エレンマッカーサー財団:バタフライダイアグラム)
https://www.resourcepanel.org/reports/decoupling-natural-resource-use-and-environmental-impacts-economic-growth
(国連環境計画:経済成長から資源利用と環境影響を切り離す)
問いの背景
2015年のCOP21でパリ協定が採択されたことを機に、財務情報だけでなく、環境(Environment)と社会(Social)、ガバナンス(Governance)の視点を取り入れて判断するESG投資の流れが加速。サステナビリティやSDGsは社会や環境の課題であると同時に経済の課題でもあることを国際社会が広く認識するようになりました。
また2021年のブルームバーグの調査では、2025年にはESG資産が53兆ドルに達する可能性があると発表され、それは世界全体の運用資産の3分の1に相当する額です。
利益か社会・環境への配慮かのトレードオフ ⇒ 利益も社会・環境も追求するトレードオン
ESG経営が重視されるようになってきた。
しかし、欧州では動きに変化も
社会変化や環境への関心の高まりを背景にESG投資などのサステナブル投資※1の拡大が続いています。世界のサステナブル投資の投資残高は2016年の約23兆ドルから2020年には約35兆ドルに増加しています。地域毎に見ると、米国では2016年の約9兆ドルから2020年には約18兆ドルに倍増。日本でも2016年の4740億ドルから2020年には約3兆ドルと増加しました。従来はトレードオフの関係とみなされていた経済価値と環境・社会価値ですが、サステナブル投資が加速することでトレードオンとして実現しやすくなったと言えるでしょう。
ところが先行していた欧州では、2016年の12兆400億ドルから2020年の12兆170億ドルと僅かに減少しています。それはなぜでしょうか?
※1:サステナブル投資とは、環境、社会、ガバナンス課題を考慮する、ESG投資やインパクト投資などのさまざまな投資を包括する言葉。
出典:グローバル・サステナブル投資白書2020 図表 1 を基に作成
「グリーンウォッシュ」という偽善への規制
EUでは、グリーンウォッシュ※2を問題視し、ESG投資の質の向上が進められてます。ESGの定義が厳格になり、より厳しく内容を問われることとなった結果、投資額が減少したとみられています。実際に欧州委員会による2020年の調査では、世界の様々な企業サイトの42%において「自社の取り組みはグリーンである」との主張が誇張されすぎている、虚偽である、または欺瞞的であるとのこと。このような表面だけ取り組んでいるように見せるグリーンウォッシュについて、EUをはじめ世界中の規制当局が取り締まる姿勢を強めており、中国も同様の動きを見せています。これにより全体的なESG投資額は減っていますが、ESGへの流れが途絶えたわけではなく、「真のESG投資」として真に環境・社会に寄与する企業へ資金が動くと見られています。グリーンウォッシュは裏を返せば、投資の判断基準にESGが浸透してきたことと、顧客の意識が変わってエシカル消費が浸透してきたため、とも言えます。
このようなトレードオンを後押しする動きは他にもあるでしょうか?
※2:グリーンウォッシュとは、環境をイメージさせる「グリーン」と、ごまかしや上辺だけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語。環境に配慮しているように見せかけ、実態はそうではないことを指す。
ユニコーン企業への過熱投資のアンチテーゼとして
「ゼブラ企業」という概念が出現
トレードオンへの流れはスタートアップでも起こっています。
ユニコーン企業とは、評価額10億ドル以上の非上場企業を指します。さらに巨額のお金を集めるデカコーン企業(評価額100億ドル以上)やヘクトコーン企業(評価額1,000億ドル以上)など、巨額の資金を集める企業も出てきました。
ですが、ユニコーン企業への過熱した集中投資へのアンチテーゼとして、サステナビリティを重視した「ゼブラ企業」が注目され、長期志向の投資家達の支持を得ているとのこと。ゼブラ企業とは「企業利益」と「社会貢献」の相反する二つを両立させていくころが白黒模様のシマウマにたとえられており、「持続的成長」「共生」「協力」「Win-Win」を価値観としています。(ちなみにゼブラ企業とはマインドセットを指し、企業の規模を問うものではないため、大企業でも共生する価値観を持っていればゼブラ企業といえる)
利益か社会・環境への配慮かのトレードオフではなく、利益も社会・環境も配慮するトレードオンの姿勢はここでも問われています。
出典: Tokyo Zebras Unite 「世界で注目される『ゼブラ』とは」を基に作図
真に社会・環境へ貢献できていない企業は、市場から締め出されるかもしれません。
利益も社会・環境も追求する「トレードオン」を目指して何をしていきますか?
関連する問い
参考
https://japansif.com/top-html
(日本サステナブル投資フォーラム:最新の調査データ等)
https://japansif.com/archives/944
(日本サステナブル投資フォーラム:ESG投資の定義)
https://esgjournaljapan.com/world-news/22886
(ESG Journal:欧州規制当局、グリーンウォッシュ調査を開始)
https://www.profuture.co.jp/mk/recruit/strategy/41858
(MarkeTRUNK:ゼブラ企業とは?)
問いの背景
日常生活のなかでサステナビリティが話題に上ることが格段に増えてきました。企業の方針や戦略においても、CO2削減、カーボンニュートラルといった言葉が躍っています。
気候変動対策としては、再生可能エネルギー導入やEVシフト等、気候変動を緩和する策にスポットライトが当たりがちですが、気候変動によってすでに起こってしまっている被害を軽減するための適応策も大切だと言われています。
なぜ気候変動への適応が必要なのでしょうか。また、気候変動の緩和から適応へと視点を変えてみると何が見えてくるのでしょうか?
気候変動の緩和 ⇔ 気候変動への適応
なぜ適応が必要なのか?
日本では2022年の夏が記録的な猛暑となり、世界各地では熱波や干ばつなどの異常気象が相次ぎました。イラクでは2022年は例年の1/10の雨しか降らず、ドイツではライン川の水位が下がり船舶の運行に影響がでました。食糧に関しても、スペインやフランスで高温に弱い小麦、トウモロコシの生産が打撃を受けました。このように、現時点でもすでに様々な場所で気候変動による被害が出ています。
また仮に、気候変動の緩和策が有効だったとしても、気候変動の影響は過去の蓄積によって遅れてやってきます。そのため、今後しばらくは影響が続くことからも、緩和だけでなく適応も考えていく必要があります。
では気候変動への適応策として具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
共生するまちづくり
オランダは、洪水に対し堤防を高くして水と戦うのではなく、水と一緒に暮らすことを目指しています。川幅を広げ、川を深くすることで、洪水が発生したときに水が広がるスペースを増やし、被害や人命の損失を減少させようという適応策です。
韓国では、海面上昇の危機にさらされている沿岸都市を「まち自体を水面に浮かべる」世界初の水上都市にする構想を進めています。そこでは「ゼロエミッションと循環システム」や「クローズドループウォーターシステム」など、持続可能なシステムによるまちづくりも計画されています。
このように、気候変動による災害や変化する環境との共生を目指し、まちづくりから変えていく事例があります。一方で、気象や災害などの現象をデジタル化することで適応を試みる事例もあります。
デジタル化とデータ連携による共生
気温の上昇に適応するために様々なセンサーのデータから気温上昇を予測するものや、ウェアラブルデバイスから人体のデータを取得して危険を察知する取り組みがあります。また、災害の被害軽減のため、豪雨や降雪を予測・監視することで被害を未然に防ごうとする取り組みもあります。
さらに、被害の防止・軽減だけでなく、予測結果とインフラや様々な活動をつなぐことで、新たな価値を提供する試みもみられます。そうなると、今後、人や企業が自分に関するデータをどのように管理し、どれくらい誰と共有するようになるのか、そのあたりがポイントになりそうです。
デジタル化によって多様なデータがつながる社会が実現できれば、気候変動によって望ましくない環境の変化が起きたとしても、今よりも安心・安全な世界を創ることもできるのかもしれません。
気候変動による変化と共生する、変化を上手く利用すると考えてみると、
私たちにはもっとできることがあるのではないでしょうか?
CO2削減などの緩和策を最大限実施することは重要ですし、緩和を諦めて適応すればよいとは思いません。しかし、変化に適応してみよう、変化を上手に利用してみようと考えると、問題解決に新たな切り口が見つかるかもしれません。
関連する問い
参考
https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0019/topic101.html
(NHK:地球温暖化による水不足問題 世界各地で水を巡る攻防戦)
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/index.html
(A-PLAT : 気候変動適応プラットフォーム)
https://www.dutchwatersector.com/news/room-for-the-river-programme
(Netherlands Water Partnership : オランダの「川のための部屋」プログラム)
https://oceanix.com/busan/
(OCEANIX Busan:韓国の水上都市計画)
https://www.global.toshiba/jp/cps/corporate/kisyo.html
(東芝:気象データサービス)
問いの背景
VUCA※1の時代と言われるように私たちはこの数年で世界の有り様が大きく変わってしまうことを見せつけられました。コロナ禍やウクライナ侵攻に伴う世界情勢の変化、世界で相次ぐ大規模自然災害。いかに世界とつながっていたかを実感するとともに、突然孤立する可能性も感じます。
いざという時は、いつでも起こりうる。それが起こったとしても営みを継続していける仕組みへ、徐々に移行していくことが必要な時代になってきたのではないでしょうか。
※1:VUCAとはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字で、時代の特性を表す造語
効率に優れた集中型 ⇔ 再生の考えを取り入れた分散型
ある日突然つながりが断たれたら...
集中型と分散型、双方の調和が大事
エネルギーや水などのインフラやサプライチェーンはつながっていることを前提につくられ、機能を集中させることで効率を上げているのものが多いですが、つながりが断たれた時には脆弱になり、機能しなくなる可能性もあります。自立・分散した仕組みも持ち合わせて、両方を調和させていくことが大事であり、それらをネットワーク化して状況を把握・予測し、最適化していくことがポイントとなります。
サーキュラーエコノミーを社会実装することは、資源枯渇を防ぐという観点だけではなく、資源をはるか遠方から調達する必要性が下げられる可能性もあることから、都市全体のレジリエンス(回復力)を高めることにもつながります。実際、欧州委員会ではコロナ禍を経たことにより、サーキュラーエコノミーは経済・社会の繁栄にとっても合理的なモデルであるとしてさらに評価が高まっています。
有名な事例としてはどのようなものがあるでしょうか?
原材料の100%循環を目指す都市
オランダのアムステルダムでは、サーキュラーシティ構想として2030年までに原材料の50%、2050年までに原材料の100%を循環させ、CO2を95%削減する都市になるという目標を掲げ、官民が連携してさまざまな事業のサーキュラー化を推進しています。
捨てているモノを資源として活用するだけでなく、汚染されて荒廃した土壌を植物によって回復させるなど自然の再生を目指しています。地域の生物多様性を高めながら、自然再生を図る取り組みは、住民のウェルビーイング※2にもつながるとして注目を集めています。
※2:ウェルビーイングとは、心身と社会的な健康、持続的な幸せを意味する概念
厚生労働省では「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」としている。
出典: 「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy」を基に作成
自然を模倣した水循環
その場に留めてゆっくりと浄化し活用へ
循環型・再生型の社会を構築する切り口として「バイオミミクリー(生物模倣)」にも注目が集まっています。自然界の仕組みを活かすという考え方は技術開発・商品開発などで取り入れられてきましたが、実社会でも適用が進んでいます。たとえば自然の水循環と協調するスポンジシティ構想です。下水道への過度な流入による被害を防ぐため、雨水を減速して緑地にとどめ、汚染物質を除去し、地下水を養い育てるスポンジシティは都市部の温度を下げる効果もあります。20年前位からドイツのベルリン東部にあった事例ですが、近年世界で頻発している集中豪雨などによる洪水被害や都市のヒートアイランド現象により注目を集め、日本をはじめ中国や米国でも大規模な都市計画に取り入れられています。
水循環の考え方以外にも、生活の中に自然界の仕組みを取り入れていくことが考えられそうです。
サステナビリティの先のリジェネレーションへ
積極的に「再生」していくことが大事に
サステナビリティは「環境負荷のできるだけ少ない方法で生活する」ことが考え方の中心となっています。人口増加に伴う地球資源の枯渇や、気候変動といった危機に直面する中、「このままの環境を維持する」という意味での「持続可能性」だけでは状況は好転していきません。
環境を良い状態に「再生」する概念としてリジェネレーション(Regeneration)という考え方が注目されています。リジェネレーションは、サーキュラーエコノミーにおける重要な原則のうちの一つで、人間を「自然の一部」として捉え、人間の活動を通じて環境を再生しながら、コミュニティも再生していく概念です。
上記の事例のように、レジリエンスを高めつつ、生活の中に自然の仕組みを取り入れ再生し、人の心身そして社会を、持続的に幸せに健康にしていくことが大事になっていくのではないでしょうか。
出典: William McDonough氏による「The Upcycle Chart」や講演内容、Bill Read氏による「Trajectory of Environmentally Responsible Design」を基に作成
私たちの生活を支える仕組みにどのような「再生」の仕組みを組み込めそうですか?
レジリエンスの観点からもウェルビーイングの観点からも再生(リジェネレーション)は重要になりそうです。
子供・孫世代に誇れる、生活を支える仕組みとはどんなものでしょうか?
関連する問い
参考
https://www.amsterdam.nl/en/policy/sustainability/circular-economy/
(アムステルダム市:「Policy: Circular economy」)
https://ideasforgood.jp/glossary/sponge-city/
(IDEAS FOR GOOD:スポンジシティとは)
https://mcdonoughpartners.com/william-mcdonough-scientific-american-designing-city-tomorrow/
(William McDonough氏 ウェブサイト)
https://www.sustainablebrands.jp/community/column/detail/1196565_2557.html
(サステナブル ブランド ジャパン:サステナビリティから「リジェネレーション」の時代へ)
問いの背景
「カーボンニュートラル」。ここ数年でよく耳にするようになりました。産業革命以降、経済発展に比例してCO2排出量が増加し続け、「このままでは取り返しのつかないことになってしまう。」とCOP※1による国家間レベルの制度作りやカーボンニュートラルに関する技術への投資が加速しています。国家や企業の取り組みだけでなく、私たちの価値観や生活はどのように変わっていく、変えていくべきなのでしょうか。
※1 COP:「締約国会議(Conference of the Parties)」の略称。「気候変動枠組条約」の加盟国が、地球温暖化に対する具体的政策を定期的に議論する会合を指す。
国や企業レベルでの対策 ⇔ 個人レベルでの行動変化
カーボンニュートラルへの
関心の高まりとその対応策
「カーボンニュートラル」の検索数が2020年後半から急増し、国や企業レベルで技術革新によりカーボンニュートラルを実現する動きが加速しています。技術革新がもたらす恩恵は計り知れないものがありますが、これに頼るだけでなく、私たち自身の価値観や生活が変わっていく、変えていく必要は無いのでしょうか?
※2 SAF:「持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)」の略称。
原材料の生産・収集から燃焼までの過程で、CO2の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料。
CO2排出量が可視化されることで変わる価値観
ノルウェーのオンラインスーパーでは、レシートに食品ごとのCO2排出量を表示する取り組みを進めました。その結果、環境負荷の高い家畜肉を避けて環境負荷の低い代替肉にシフトする動きが見られ、代替肉の購入が80%増加したそうです。これは見えなかったことが可視化されることで、私たちの行動や価値観が変わっていく兆しといえるのではないでしょうか。
しかし、CO2排出量が可視化されることだけで、誰もがその行動や価値観を変えることが出来るのでしょうか? むしろ、環境への意識が高い人、そうでない人との差が浮き彫りになってしまうのではないでしょうか?
出典:ELEMINIST「レシートにCO2量表示で代替肉の購入が80%増 海外スーパーの新しい取り組み」を基に作図
誰もがCO2排出枠を意識した生活に
2023年現在、「CO2排出枠」は主に国家レベルで持つものですが、私たち個人個人が「CO2排出枠」を持つ未来もそう遠くはないかもしれません。
その兆しとして、スウェーデンでは世界初のCO2制限付きクレジットカードが登場。年間のCO2排出上限を超えると使用停止になってしまうそうです。様々なもの・ことのCO2排出量がデータ化され、日常の買い物で購入額とCO2排出量を両天秤にかけて悩む・・・。CO2排出枠を日常的に意識する未来になると、私たちの生活(消費行動)は大きく変わるかもしれません。
出典:Think the Earth「世界初のCO2制限付きクレジットカード 買い物でCO2排出量を超えると使用不可に!」を基に作図
カーボンニュートラル達成後には、私たちの価値観や生活はどのように変わっているのでしょうか?
あなたの顧客がカーボンニュートラルを最優先させたとき
あなたはビジネス、サービス、商品をどのように変えていきますか?
また、どのような新たなビジネスが生まれるのでしょうか。
関連する問い
参考
https://eleminist.com/article/1908
ELEMINIST記事:レシートにCO2量表示で代替肉の購入が80%増 海外スーパーの新しい取り組み
https://www.thinktheearth.net/think/2020/03/058co2limitcard/
Think the Earth記事:世界初のCO2制限付きクレジットカード 買い物でCO2排出量を超えると使用不可に!
問いの背景
企業は私たちの個人情報をさまざまな形で収集しています。30代以降の世代では、データ収集に対して不利益を感じることが多い一方で、10代や20代はデータ収集と引き換えに利便性を享受することを前向きに捉えていることがわかっています。一方で、自らの意思で個人情報を共有するケースがあります。今や若者世代や子育て中の親にとって、自分や子どもの写真をSNSに共有することは当たり前になりつつあります。また、位置共有アプリは若者で広く普及し、自分が今どこにいるのか、どこに向かって移動しているのか、もう寝ているのかといった情報を友人と24時間共有し続けています。私生活を共有することに前向きな人とそうでない人は良好な関係を築くためにどのようなコミュニケーションを取るべきなのでしょうか?
個人情報を共有しない ⇔ 個人情報を共有して「利便性」を得る
若い世代は、個人情報と引き換えに「利便性」を得ていることを、前向きに考える傾向がある
企業が個人に関するデータを収集することに対する人々の意識について、国際大学GLOCOMがおよそ6000人を対象に大規模調査を行いました。調査により30代以降の世代では企業のデータ収集に対して自らが享受できる利点が少ないために不利益を感じ、否定的な声が大きくなっていることがわかりました。ところが、10代、20代では、データ収集に肯定的な声が大きいという、対称的な結果となりました。若い世代は、企業によるデータ収集と引き換えに「利便性」を得ているため、データ収集を前向きに捉える傾向が見られました。
みなさんは個人情報の提供と享受する利便性を比較したとき、どのような考えをお持ちですか?
SNSはすべての世代で広く浸透している
SNSはFacebookやTwitter、Instagram、Tiktokなどの総称として用いられています。総務省の令和3年度インターネット利用状況では、全体の約7割の人々がSNSを利用しています。最も利用率が高いのが20代で約9割が利用し、10代、30~50代も約7割が利用していることから、SNSは世代に問わず広く浸透していることがわかります。いま自分が何をしているか、どこにいるのか、など自身のプライベートを他人と共有する文化が定着しつつあります。
これからのコミュニティ形成において、SNSは必要不可欠なツールになるのでしょうか?
この1年以内にSNSで子供の写真や動画を投稿したことがある親は4割超
弁護士ドットコム株式会社が、弁護士ドットコムの一般会員328名を対象に、子供の写真や動画をSNSに投稿することに関する実態・意識調査を行ったところ、この1年以内にSNSに子供の写真や動画を投稿したことがある保護者は全体の約4割にのぼることがわかりました。投稿したことがある人のうち過半数がインスタグラムを利用していたことも明らかになっています。このように自分や家族の私生活や個人の情報をSNSに投稿する人は一定数いることが伺えます。ただし、子供の写真などをSNSに投稿している保護者の17.7%は、子供の顔や撮影場所が特定できないよう気をつけていることも調査でわかりました。
自分が属するコミュニティで本人の情報だけでなく、家族の情報もSNSへ投稿することは許されるのでしょうか?
若者中心に浸透する位置共有アプリ
今や24時間、他者と位置情報を共有するという、私生活を友人と共有しあう文化が10代の若者の間で流行しています。STRATEが2021年に行ったアンケート調査では、全国の15歳~29歳の男女のうち、Zenly等の位置情報共有アプリで恋人・パートナーの位置情報を互いに共有している10代は30%で、20代は16.5%となり、10代の若者を中心に利用されていることがわかります。位置情報を共有することで、恋人と待ち合わせに困ることが無く、友人との偶然の出会いが増えたり、近くにいる友人をすぐに探し出せるため、急遽遊びに誘えるなど、コミュニティ形成に役立てています。今後、位置共有を当たり前だと考える人々が増えてくるかもしれません。一方で、位置共有アプリによって位置が特定され、犯罪に巻き込まれるケースも増えています。コミュニティに入るために位置情報を共有することが必須になるとき、みなさんならどうしますか?
個人情報を共有して利便性を享受しようと前向きに考える人々と、
不利益を受けないように個人情報を共有しない人々が、
良好な関係を築くためにはどのようなコミュニケーションが求められるでしょうか?
関連する問い
参考
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2019/06/story/story_19061201/
(サイカルジャーナル記事:個人データ収集はOK?~世代間で分かれる声~)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242120.html
(総務省:令和3年度インターネットの利用状況 第2部 基本データと政策動向)
https://www.bengo4.com/corporate/news/article/ntsw1b605gh
(弁護士ドットコム プレスリリース:子どもの写真投稿に関する実態調査 5割が子どもの写真をSNSに投稿経験あり、Instagramが最多という結果に。)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000055302.html
(Zenly プレスリリース PRTIMES 配信:コミュニケーションアプリ「Zenly」が新機能「Going」リリース!)
問いの背景
近年、世代、人種、国家、経済、宗教や文化など様々な「断絶」から起因する深刻な社会課題が発生しています。サステナブルな社会を目指すうえで、社会全体のシステムを広く捉え、その相互関係を理解し、利害関係者と共に、より良いインパクトを自らの視点や立場から起こすことが大切です。企業活動においても、ある世代や自国だけの利益になる活動は敬遠され、世代や国を超えた価値、幸せやウェルビーイングを創出する事が求められます。
現在の世代や自国の欲求の満足 ⇒ 世代や国を超えた欲求の満足
サステナビリティとは?
1987年の国連によるブルントラント報告書では、サステナビリティについて、「将来の世代がその欲求を満たす能力を損なうことなく、現在の世代の欲求を満たす」ことであると説明されています。将来の世代とは、30年後の世界で主役となるミレニアル世代やZ世代、α世代、まだ生まれていない次の世代、そして、さらにその先の世代を指します。利害関係者の持つ多様な価値や幸せに寄り添い、それらを毀損することなく、未来におけるサステナブルな価値について、企業としての考えや行動が求められます。
サステナブルな価値を考えるには、どうすればよいのでしょうか?
サステナビリティとは将来の世代と繋がることが前提
急激なグローバリゼーションは経済格差をもたらし、中間層の衰退による二極化が進み、地方と大都市、若年層と高齢者層、また知識層と労働者層など、社会において、様々な断絶を生みだしています。この影響を大きく受けているのが、ミレニアル世代やZ世代、α世代などの将来世代であり、格差問題や気候変動などの社会問題にも高い興味・関心を持っています(ジェネレーション・レフトとも呼ばれます)。社会の断絶を乗り越え、サステナブルな価値を創出するカギは、今後の大きな原動力となる「サステナビリティ・ネイティブズ」とも言われる将来世代と繋がることであり、広い視野で多様な価値観を理解する事が、今、企業に求められています。
社会の断絶に対して、企業は何をするとよいでしょうか?
将来の世代の視点から企業価値創出を
企業は、将来世代の価値観を理解した上で、将来世代の視点から新たな企業価値を創出することが求められます。短期的な経済的価値だけにとらわれず、長期的な視点で社会的・環境的価値と企業の経済的価値(発展可能性)のバランスを取るトレード・オンの戦略を将来世代も巻き込んで考え、世代や国を超え、社会の断絶を乗り越えられる新たな価値創出が望まれます。これら価値の具体例として、多様な人々が集まり、価値観の違いを調和させ長期的に繋がる組織作りや、自社の従業員だけでなくバリューチェーン全体に関わる利害関係者の生活水準を高める事業など、世界の先進企業で検討が進められています。
私たち企業はどのような未来の従業員と共に働きたいですか?
どのような将来の利害関係者と共に、新たな価値を創出しますか?
サステナビリティは、現在の世代だけでなく将来の世代とも繋がり、利害関係者全体の考えを理解する事が大切です。その上で、将来の従業員や顧客も惹きつける長期的な価値をいかに創るか企業の手腕が求められます。
関連する問い
参考
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/sogo/kaihatsu.html
(外務省:持続可能な開発(Sustainable Development)とは)
https://ideasforgood.jp/glossary/generation-alpha/
(IDEAS FOR GOOD:アルファ世代(ジェネレーションα)とは)
https://ideasforgood.jp/glossary/generation-left/
(IDEAS FOR GOOD:ジェネレーション・レフトとは)
https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1207098_1532.html
(サステナブル・ブランド ジャパン:サプライチェーンの労働者に「生活賃金」を支払う欧州企業の取り組み)
https://www.unilever.co.jp/planet-and-society/
(ユニリーバ : ダイバーシティ、インクルージョンに関する取り組み)