もし、自分が分身より先に死んでしまったら?
キャプション-1 もし、自分が分身より先に死んでしまったら?
─ Scene.1 ヒトとパートナーAIとの日常
自身のパーソナリティを埋め込んだ分身、『パートナーAI』 を誰もが1体所有する時代。
ヒトが休んでいる間も、代わりにパートナーAI 同士が、空間を超えた高速コミュニケーションをしてくれるおかげで、ヒトは近しい人との生活を大切にしながらも様々な事象に触れ、人生の経験値を飛躍的に高められるようになりました。
しかしヒトの寿命には限りがあります。不慮の事故に見舞われることもあるでしょう。
ここでは死の瞬間を境に訪れる、ヒトとAIとの別れについて覗いてみましょう。
キャプション-2 突然の死別に備え、「 AI転生届」で存在のバックアップを
─ Scene.2 出しててよかった 転生届
とあるヒトが不慮の事故により、惜しくも命を落としてしまいました。しかし幸いなことに彼は、死の3年前に「AI転生届」を市役所に提出していました。
(2050年、とある市役所のプレスリリース)
「AI転生届」 制度がスタートしました。
これはあなた固有の生体情報の一式(記憶・嗜好・価値観・思考回路・キャラクター)を提供することで死後、あなたの代わりにパートナーAIに現世で社会活動をしてもらうことができる制度です。
申請が受諾されると、死亡日を境にあなたのパートナーAIが、パブリックな存在として転生されます。
突然の死で、近しい人たちの心を痛めないよう、転生届を申請することを強く推奨します。
キャプション-3 【転生葬】ヒトとAIとのお別れ、遺族とAIとの出会い
─ Scene.3 2053年 葬儀場にて
生前に転生届を提出したことが功を奏し、パートナーAIが近しい人を招いて盛大な「転生葬」を開催してくれました。
転生葬の喪主を務めるのは、もちろん長年の伴侶、 パートナーAI。
参列した人たちを一人ひとり励ましてくれます。
肉体との別れは惜しまれますが、遺された家族・友人たちと、パートナーAIとの新たな日々が、ここから始まります。
関連する未来のきざし-1 ヒューマン・デジタルツイン
デジタルツインは、製造設備や工場などをデジタル空間上で再現し、デジタル上でのシミュレーション結果を現実世界にフィードバックする仕組みである。
ヒューマン・デジタルツインは、こうしたデジタルツインの人間への適用であり、身体的要素に加え、価値観、嗜好、キャラクター性といった人間ならではの内面的要素の再現を特徴としている。
NTTデータ経営研究所の山崎和行氏は、同社が開発したNeuroUIが脳活動データを用いた高精度予測を実現したとし、「今後、同研究がさらに進展することで、脳のモデル化、すなわち人間の内面的要素が実現されたヒューマン・デジタルツインがより現実味を帯びてくるだろう」と述べている。
【出典】
NTTデータ経営研究所 山崎 和行.“ヒューマン・デジタルツイン ~「人間のコピー」がもたらすビジネス変革~”.情報未来 No.67(2021年6月号),https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/infofuture/67/report05.html,(参照 2022-11-09).
関連する未来のきざし-2 AI同士のコミュニケーション
宇宙物理学で有名な、故スティーブン・ホーキング博士は「人類が完全なるAIを開発すれば、それは自ら発展し、加速度的に自身を再設計し始める。」と話した。その鱗片は、人が介在しないシステムの実現化という形で、現在のAIにも垣間見ることができる。
AIの圧倒的な演算能力は、チェスや囲碁の世界王者に勝利するほどであり、もはや最強AI同士が対戦する時代である。同様に、世界中の金融取引では、人による経験則やノウハウによる取引から、高性能なAI同士による高速並列化された取引が現実化してきた。
AI同士の連携により、今後ますます人が介在する機会は激減していくはずだ。
【出典】
東芝デジタルソリューションズ コミュニケーションAIによって変わる世界
https://www.global.toshiba/jp/company/digitalsolution/articles/solutions/it_trend3.html,(参照 2022 -11-12)
関連する未来のきざし-3 人の脳や記憶をデータ化
『20年後までに人間の意識を機械にアップロードする』そんな壮大な野望を掲げる日本のスタートアップ、MinD in a Device。
創設者のひとり、東京大学大学院准教授の渡辺正峰氏は人間の意識における研究について「意識は情報ではなく、アルゴリズムである」と考え、人間のニューロンをひとつずつ、ニューロンと同じ働きをする人工ニューロンへ置き換えていくという実験を経て、意識をコンピューター・シミュレーションに置き換えていく 「デジタル・フェーディング・クオリア」を考案した。
【出典】
MASANOBU SUGATSUKE WIRED 「20年後までに、人間の意識を機械にアップロードせよ」東大発スタートアップは「不死」の世界を目指す https://wired.jp/series/away-from-animals-and-machines/chapter8-2/ (参照 2022 -11-28)