もし、ランダムに生き方を決めてもらえたら?

キャプション-1 もし、ランダムに生き方を決めてもらえたら?

プラットフォーマーが膨大な情報を供給し続け早25年。情報爆発社会で生きる若者は、何をするにしてもまず情報を欲してしまいます。何が正解なのか、何をすれば評価されるのか気になって仕方がないのです。他人の価値基準に侵食され続けた彼らは、自分が何をしたいのか分からない日々を過ごしています。

キャプション-2 若者に課題を与える政府

情報に溺れる若者の増加を危惧し、政府は法改正を決めました。「29歳以下の国民が過大情報制限特区に移住すれば住宅と仕事を支給する。尚、本特区に居住者以外が立ち入る場合は通行税を課す。」 過度の情報を遮断し、まず何かしらの実体験を得てもらうことが狙いです。若者向けの周知活動が始まりました。

キャプション-3 新たな一歩を踏み出した若者

「潜水士か...レアだけど人気ない職業..ただまぁ、長くて3年だし、とりあえずやってみるか」 引き当てたカードを見た途端、加賀川耕太の口から愚痴が溢れました。ただ、珍しく今日の愚痴からは卑屈さは感じられません。今まで何をすればよいのか分からなかった苦しみから、抜け出せる予感を感じたのでしょうか。

関連する未来のきざし-1 事の顛末を知り無気力になる若者

中国では競争社会を忌避し、頑張らない生き方を選ぶ若者が増加していると言われている。日中福祉プランニング代表 王 青氏は、以下のように述べている。

受験戦争に勝つため、全ての時間を勉強に費やし、歯を食いしばって苦しんだ。大学に無事に入り、都会で働きたい夢も実現した。しかし、996(朝9時から夜9時まで週6日間勤務)や007(午前0時から深夜0時まで週7日間勤務)といわれる過酷な労働や高圧的な職場でいくら頑張っても、都会で家を買うこともできない。(中略)だったら「もういいよ、最低限な生存状態を維持すればいいだろう」と投げやりのような気持ちになっても無理はない。

【出典】
王 青.“中国の過酷な受験戦争を勝ち抜いた若者が「寝そべり族」になってしまう理由”.DIAMOND online.2021-07-28,https://diamond.jp/articles/-/277433,(参照 2022-09-27).

関連する未来のきざし-2 何がしたいか分からない若者

経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」のデータによると、18歳未満で「将来の夢を持っている」と答えた子どもが日本には60%しかいない。他国の80~90%と比較すると極端に低い1)2)。

教育現場を取材してきたジャーナリストの島沢優子氏は、子供たちが夢を持てないのは、何かに挑戦してみようという気持ちを学校で摘み取られていることが原因かもしれない2)と述べている。さらに同氏は、挑戦に失敗すると、周囲から笑われ萎縮してしまい、何も行動できなくなった結果、何をしたいのか分からないまま大人になってしまう2)と推察している。

【出典1】
経済産業省. “未来人材ビジョン”. 2022-04-05, https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf,(参照 2022-10-28).
【出典2】
島沢 優子.“日本では「夢をみられない」子どもが4割。「ミスが許されない」ことが起こす弊害”.FRaU.2022-10-03, https://gendai.media/articles/-/100476,(参照 2022-10-28).

関連する未来のきざし-3 情報爆発社会の到来

ネットやスマホ、SNSが普及したことによって、人々が接する情報量は膨大になっている。特に、デジタルデバイスに慣れ親しんでいる若者世代は、中高年層と比較して、情報過多な社会だと意識している割合が高い1)と述べられている。
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が実施したメディア定点調査の結果によると、「世の中の情報が多すぎる」と答えた人の割合は、2016年には4割程度だったものの、2017年から2019年まで3年連続で半数を超え続けている1)2)と報告されている。

【出典1】
藤代 裕之, 久保田 麻美, 白井 瞭, 土橋 臣吾, 野々山 正章, 保髙 隆之, 吉川 昌孝, 渡辺 洋子. “アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか“. 日経BP. 2020, Kindle https://a.co/7t7EFZE
【出典2】
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所.“メディア定点調査2022”. https://mekanken.com/mediasurveys/,(参照 2022-11-29).