もし、食事が快楽のためだけの行為となったら?
キャプション-1 もし、食事が快楽のためだけの行為となったら?
2050年。シンギュラリティの到来により全ての人々が平等に、快適でなに不自由無く生活を営むことが可能な世界。
人類は繫栄を迎える一方、地球環境の変化や人口増加、食料の再分配により、以前のような食生活は送れなくなっていました。食事という行為は栄養を取るだけの行為となり、最適化された完全栄養食を補給する事で、誰もが健康的に生命を維持する事が可能となっています。
味気ない完全栄養食以外の食料が制限されているこの世界において、人々の食べる事を楽しみたいという欲望は“Real Meal”という新たなサービスを生み出しました。
キャプション-2 Dummy Food
“Real Meal”はフェイク食品である“Dummy Food”を無尽蔵に提供してくれる飲食サービスです。大気中の水蒸気やCO2、微粒子を主な原料としたこの食品は、香料や顔料と共に多種多様な見た目、食感として食卓上へ3Dプリントしていく事で人々は贅沢な食事を疑似的に楽しむ事が可能です。
このように、たとえフェイクであろうとも贅沢な食事を好きなだけ楽しむ“Real Meal”の登場は、好きなモノを好きなだけ食べるという快楽を人々に提供してくれる存在となっています。
キャプション-3 多種多用な味
“Dummy Food”自体は何ら栄養、味の無い食品を模したモノです。しかし、舌の上に直接プリントされたデバイスを介して食事を行う事で多種多様な味を疑似的に再現する事が可能となっています。このように人々の間では舌を始めとした皮膚のあらゆる箇所に機能拡張のための回路を直接プリントする事が一般的になっています。
近い将来、余暇を持て余した人々はきらびやかに着飾り“Real Meal”を楽しむ事がだけが食べる楽しみとなっているかもしれません。
関連する未来のきざし-1 食料需給のひっ迫
農林水産省の資料では、2050年の世界人口は、2010年比1.3倍(86.43億人)に達し、世界の食料需給量は1.7倍になると予測している。
「世界の食料需給は、人口の増加や開発途上国の経済発展による所得向上に伴う畜産物等の需要増加に加え、異常気象の頻発、水資源の制約による生産量の減少等、様々な要因によって逼迫(ひっぱく)する可能性があります。」と述べている。
【出典1】
農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室「2050年における世界の食料需給見通し」.2019-09,https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_mitosi/attach/pdf/index-12.pdf(参照2022-09-27)
【出典2】
農林水産省「令和元年度 食料・農業・農村白書」第1部 食料・農業・農村の動向 >第1章 食料の安定供給の確保 > 第3節 世界の食料需給と食料安全保障の確立.2020-06-16,
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r1/r1_h/trend/part1/chap2/c2_3_00.html
(参照2022-09-27)
関連する未来のきざし-2 サプリメントと完全栄養食の進化
必要な栄養だけを効率よく接種する事を目的に生み出された完全栄養食。既に粉末状からドリンクタイプ、普段の食品を置き換えた物など様々なタイプの製品が市場に存在している合成食品だ。1日に必要な栄養素をバランス良く含んでいる為、既に完全栄養食のみの生活を試みる人々も存在するという。
“広まる「完全栄養食」 効率食から健康リスク回避食へ変貌できるか?”の筆者は、「もし食料危機が訪れれば、通常の食事をお金がかかる嗜好品・節約できるコストと考えるようになる人が増え、完全栄養食は頼らざるを得ないコストカット食品となるかもしれない」と述べている。
【出典】
安部 涼.“広まる「完全栄養食」 効率食から健康リスク回避食へ変貌できるか?”.日経ビジネス. 2021-09-01,https://business.nikkei.com/atcl/plus/00005/082500004/,(参照 2022-11-09).
関連する未来のきざし-3 電気信号による味覚のコントロール
今、味を電気的に再現しようとする研究が世界の様々な研究機関で進んでいる。
人間の舌や口腔内などでは、「味蕾」という器官がセンサーのように口に入れた物の味を感じ取っているという。味の電子化とはこの味蕾に直接微弱な電気信号を与える事で味を疑似的に再現しようとする取り組みだ。“味をデジタル化する「電気味覚」の可能性”の筆者は、今後これらの研究が進めばよりコンパクトな物や味の共有、配信等の様々な可能性を秘めていると述べている。
【出典】
山下 裕毅.“味をデジタル化する「電気味覚」の可能性”.ITmedia NEWS.2022-03-31,https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2203/31/news065.html,https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2203/31/news068.html,(参照 2022-11-04).