AIによる良品学習方式を既存の外観検査装置に適用
未知の不良検出を短期間で実現可能にする
「Meister Apps™ AI画像自動検査パッケージ」

 一般家庭用照明から、産業用照明システム、車載光源など様々な生活シーンに密着した製品の開発・製造・販売までを一貫して手がける東芝ライテック株式会社。同社の今治事業所では、製造ラインにAIを活用した外観検査装置を導入することで、高品質なモノづくりを推進している。その製造の検査工程において、良品学習方式を用いたAI画像検査技術により未知の不良を発見する環境づくりに貢献しているのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する「Meister Apps™ AI画像自動検査パッケージ」だ。


Before

徹底した検査体制を整備してきた車載用ソケットLEDの製造ラインにおいて、想定外の未知の不良が発生。導入していたルールベースの自動外観検査装置では拡張が難しく、またどこまでチェック領域を広げていけばいいのかについて正解を導き出すのも困難だった。こうしたことから、大規模な設備投資をせずに、既存の設備を活かしつつ未知の不良検出が可能な対策が必要となっていた。

After

「Meister Apps™ AI画像自動検査パッケージ」を既存の検査装置に組み合わせることで検出精度の目標値95%を達成。未知の不良も検出できる環境整備によって、確実かつ高精度な生産体制を実現し、顧客の信頼感の醸成を促進。ルールベースでの導入と比較して短期間でのシステム実装が可能に。今回のケースではイニシャルコストを約2分の1に抑えながら、目視作業の工数を約3分の1に削減することに成功した。

「あかりのパイオニア」として日本の照明業界を牽引


 1890年に日本で初めて東芝が白熱電球を実用化して以来、その事業を継承し「あかりのパイオニア」として照明業界を牽引してきた東芝ライテック株式会社。同社の今治事業所では、主に車載用光源の製造とともに、UVシステム・産業デバイスの紫外線ランプ各種、照射ユニット・装置のUV-LEDモジュールなどを製造している。

 今治事業所の製造ラインでは、高い品質を維持するための検査体制を以前から整備してきた。2021年から自動外観検査装置を導入し、大幅な生産効率の改善を実現してきた。「今では各工程で自動外観検査を実施しており、不良品の流出を防ぐためにAI搭載の自動外観検査装置を導入し、画像をもとにしたチェックを実施しています。中でも多くの製造業で採用されている市販の画像処理システムは、100台を超える規模で各工程における検査の自動化を支援しています」と語るのは、産業デバイス事業部 生産統括部 生産技術担当 グループ長の宮島 健一氏だ。

産業デバイス事業部 生産統括部 生産技術担当 グループ長
宮島 健一氏

未知の不良が検出できる新たな環境整備が急務に


 そうした環境を整備してきたが、検査対象となっていなかった部分で未知の不良が発生した当時を宮島氏は振り返る。「もともと導入していた自動外観検査装置では、未知の不良を流出防止させる仕組みではなかった。そうした中で、実際に不良を客先へ流出させてしまったことで、新たな対策が求められることとなりました。」

 不良が客先へ流出してしまうと、社員が客先まで出向いて急遽再検査を実施するなど、人件費を含めたコストが発生する上に、顧客からの信用失墜につながる大きなリスクもある。こうしたことから、既知不良の検出が可能な既存の外観検査装置に加えて、未知の不良が検出できる環境づくりが急務となったのだ。

既存検査装置と連携可能で、良品画像の学習で開発時間も短縮


 新たな環境づくりでは、コスト面からも、既存の設備を改変せずに検査精度をさらに向上させる環境整備が求められた。「ルールベースでの検出は、どこまでチェック領域を広げていけばいいのか正解がないのが正直なところです。また、一般的なAIだと、不良が出てからでないと学習ができないという課題があります。不良モデルの情報を学習させるだけでも時間がかかる上、拡張性についてもコスト面も含めて厳しい。だからこそ、精度の高い既存の検査装置とうまく組み合わせることで、想定できない未知の不良をしっかり検出できる環境を検討したのです」と同部 生産技術担当 参事の桑村 佳伸氏は語る。

 そこで注目したのが、良品学習方式を採用するAI画像検査技術を持つ東芝の「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」だった。複数の良品画像から良品の範囲を学習することで、その画像から外れたものを不良と判断する仕組みで、未知の不良にも対応でき、短時間の学習で成果を出せるのが大きな特長だ。すでに導入済みの市販の画像処理システムと連携できるため、新たな設備を追加せずに検出精度を向上させることができる点も高い評価につながった。「今回、未知の不良が発生した製造ライン以外にも展開しやすく、良品画像のみの学習で開発時間も短縮できるなど大きなメリットがあります。正直、導入しない理由がありませんでした」と同部 生産技術担当 参与の近藤 靖氏は説明する。

同部 生産技術担当 参与
桑村 佳伸氏

 新たな環境づくりでは、コスト面からも、既存の設備を改変せずに検査精度をさらに向上させる環境整備が求められた。「ルールベースでの検出は、どこまでチェック領域を広げていけばいいのか正解がないのが正直なところです。また、一般的なAIだと、不良が出てからでないと学習ができないという課題があります。不良モデルの情報を学習させるだけでも時間がかかる上、拡張性についてもコスト面も含めて厳しい。だからこそ、精度の高い既存の検査装置とうまく組み合わせることで、想定できない未知の不良をしっかり検出できる環境を検討したのです」と同部 生産技術担当 参与の桑村 佳伸氏は語る。

同部 生産技術担当 参与
桑村 佳伸氏

同部 生産技術担当 参事
近藤 靖氏

 ルールベースの場合、良品にばらつきがあると不良の過検出率が高くなり、精度を高めていくためには開発期間がどうしても長くなる。「この良品学習がうまくいけば、ルールベース全体の開発フローが簡素化でき、かつメンテナンスの手間も大きく軽減できるのではないかと期待しました」と桑村氏。

 そこで、東芝と共に、現場の課題のヒアリングやサンプル開発などを通じてその結果をもとに、既存の画像処理システムによる検出精度をさらに向上させる仕組みとして正式に2024年から「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」の運用を開始し、現在では規格品を対象として組立4号機での運用を開始した。

 そこで注目したのが、良品学習方式を採用するAI画像検査技術を持つ東芝の「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」だった。複数の良品画像から良品の範囲を学習することで、その画像から外れたものを不良と判断する仕組みで、未知の不良にも対応でき、短時間の学習で成果を出せるのが大きな特長だ。すでに導入済みの市販の画像処理システムと連携できるため、新たな設備を追加せずに検出精度を向上させることができる点も高い評価につながった。「今回、未知の不良が発生した製造ライン以外にも展開しやすく、良品画像のみの学習で開発時間も短縮できるなど大きなメリットがあります。正直、導入しない理由がありませんでした」と同部 生産技術担当 参事の近藤 靖氏は説明する。

同部 生産技術担当 参与
桑村 佳伸氏

 ルールベースの場合、良品にばらつきがあると不良の過検出率が高くなり、精度を高めていくためには開発期間がどうしても長くなる。「この良品学習がうまくいけば、ルールベース全体の開発フローが簡素化でき、かつメンテナンスの手間も大きく軽減できるのではないかと期待しました」と桑村氏。

 そこで、東芝と共に、現場の課題のヒアリングやサンプル開発などを通じてその結果をもとに、既存の画像処理システムによる検出精度をさらに向上させる仕組みとして正式に2024年から「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」の運用を開始し、現在では規格品を対象として組立4号機での運用を開始した。

判別精度95%を達成、目視作業の工数を3分の1程に圧縮


 現在は、ソケットLEDの製造ラインに設置された外観検査装置の1つで良品学習を適用した「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」を運用中だ。「1ロットあたり数千個のソケットLEDが検査工程に流れてきますが、自動外観検査装置での良品学習による良否判別の精度は目標値の95%を達成しています」と宮島氏は説明する。

 「良品学習を適用する際には、1,000枚ほどの良品画像を使って学習を実施しました。ルールベースの検査は一から作り上げる負担が大きいが、機器への改造も不要で、Meister Appsであれば2時間ほどで数百枚の良品画像が学習できる点は大きなメリットでした」と桑村氏は評価する。追加学習の際も、短期間で精度を高めることができる点が大きな魅力の1つだという。
 良品閾値を最適化する東芝の良品学習方式は、ルールベースの開発と比べておよそ半分程度の開発工数で実現することができたという。

 新たな環境を整備したことで、未知の不良を外部に流出させてしまうリスクを軽減し、顧客に対する信頼感の醸成につながる環境づくりが低コストで実現した。「別の検査装置を導入する場合と比べ、検出精度向上が可能となっています」と宮島氏。

 また、良品を不良と判断してしまう過検出を減らせたメリットも大きい。「良品であっても多少のバラつきがあるため、現場に出向いてその都度閾値を調整する必要がありました。良品学習を取り入れたことで過検出が軽減され、作業フロー、工程の短縮につながっています」と桑村氏。過検出の抑制により目視作業の工数を3分の1程度に圧縮できている点も見逃せない効果だ。その分の人員を他の工程作業に充てる有効活用も可能になったという。

 「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」の良品学習機能のもう1つのメリットは、学習データが用意しやすい点にある。「一般的には学習データとして良品画像と不良画像の両方が必要ですが、不良はもともと発生数が非常に限られており、データを用意するだけでも大変です。Meister Appsは良品のバラつきを学習する手法だからこそ、短期間のうちに高い検出精度を達成できるのです」と近藤氏は評価する。

良品学習を横展開しながら、データ活用の幅を広げていきたい


 今後については、まずソケットLEDの他の製造ラインに「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」の展開を進めつつ、他製品の製造ラインにも広げていきたいと意欲的だ。もちろん今治事業所のみならず、同社の他事業所への展開も含めて検討していきたいという。

 また、良品学習で得たデータを活用し、上流工程の設備における品質改善につなげていくことも視野に入れている。「社内だけでなく、部品を購入しているパートナー企業の製造品質向上にもデータ活用できる場面があれば活用していきたいですね」と近藤氏は語る。

 いずれは現場担当者も追加学習が実施できるような環境整備にも取り組んでいきたいという。「例えば、タッチパネルを操作するだけで簡単に追加学習できるような環境を整備することで、製造現場でも定期的にメンテナンスできるような環境づくりも期待したいですね」と宮島氏。

 既存設備を活用しながら製品の製造における最終工程で未知不良を高精度で除去できる東芝の「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」は、同社の高品質なモノづくりを支える一助として今後も大いに活用されていくことだろう。

SOLUTION FOCUS

Meister Apps™ AI画像自動検査パッケージ

東芝独自の良品学習方式を使ったAI画像検査技術を活用し、不良品の見逃しや過検出を抑えつつ、誰でも簡単に短期間で外観検査自動化を実現します。他社製画像処理システムとの組み合わせによるハイブリッド方式のため、Meister Apps™ AI画像自動検査パッケージで学習を行うだけで、欠陥検知に必要な判定閾値を自動で定義できるため、不良画像の分析が不要になり、専門知識が無くても検査の設定が行えるようになります。

この記事の内容は2025年3月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
東芝ライテック株式会社

本社所在地
神奈川県横須賀市船越町一丁目201番1

事業内容
LED電球・蛍光ランプ等各種光源、照明器具、配線器具、照明制御関連機器、航空灯火システム、舞台・スタジオ照明システム、車載・産業用光源およびこれらの関連商品ならびに応用装置の製造ならびに販売

URL
https://www.tlt.co.jp/tlt/