現場に負担をかけずにRFIDを活用した通箱の追跡・所在管理を実現
経費削減と出荷管理の効率化に貢献する
追跡・所在管理サービス「LADOCsuite®/LogiTrace」
人々の生活を支えるインフラ産業機器や医療機器に不可欠なプリント基板の開発・製造を手がける東芝ディーエムエス株式会社。同社では、取引先へ商品を納品する際に使用する通箱の在庫管理を徹底し、出荷管理の高度化を実現する仕組みづくりが急務となっていた。そんな同社が通箱管理を実現するために導入したのが、東芝デジタルソリューションズが提供するRFIDを活用した追跡・所在管理サービス「LADOCsuite®/LogiTrace」だ。
近年課題として挙げられる、循環型輸送機材物流の効率化に貢献するソリューション導入の経緯やそのポイントと効果について話を伺った。
Before
同社では、製品を取引先へ納品する際に静電気対策を施した特殊な通箱を利用している。しかし、通箱の所在確認や数量把握に課題があり、取引先からの通箱回収が滞り、不足分を新たに購入するなどして毎年数千万円ほどの経費が生じていた。これらを解決するために通箱の状況を正確に把握すると同時に、現場作業者の負荷を増やすことなく取引先への出荷管理を高度化するための環境づくりを模索していた。
After
「LADOCsuite/LogiTrace」を活用し、通箱に貼り付けられたRFタグをRFIDゲートやハンディリーダーで読み取ることで通箱の効率的な在庫管理を実現し、毎年生じていた通箱の新規購入費用が削減される見込みだ。また、通箱の管理に留まらず製品の出荷管理の高度化を図る手段としても今後の活用が期待されている。
業務プロセス改善の取り組みの中での通箱へのRFID導入の検討
東芝ディーエムエス株式会社は、プリント基板の設計からベアボード製造、部品実装にユニット組立、試験までを一社単独で一気通貫に対応できる、日本でも数少ないEMS(電子機器製造受託サービス)企業のひとつだ。長年東芝グループの社会インフラ領域の基板づくりを手がけてきた会社ならではの豊富な技術と実績を強みとしている。
同社では、モノづくりの改善活動のためのDE(デジタルエボリューション)/DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推し進めている。中でも業務改善プロセスの一つとして取り組んでいるのがRFIDの活用だ。「すでにトレーサビリティによる部品管理や工程進捗管理、入退室管理などさまざまな用途にRFIDを活用しています」と語るのは企画・調達統括部 企画部 企画担当 三浦 雄二氏だ。
企画・調達統括部 企画部 企画担当
三浦 雄二氏
通箱の新規購入経費の削減と、より高度な出荷管理を目指して
製造統括部 生産管理部 生産管理課 課長
蝦名 隆行氏
すでにRFIDは商品管理や進捗管理などで活用してきたが、製品の最終工程である出荷管理の部分への導入が課題となっていた。「東芝の府中事業所内の20ほどの出荷先に製品を出荷するときに使う通箱は、電子部品を扱う関係で静電気対策がされた通常のダンボールなどの通箱とは違うもので、購入に5倍から6倍費用がかかります。本来であれば出荷後に戻してもらうのですが、出荷したまま戻ってこないケースが増えていました。通箱ではなく、単なる出荷箱になってしまっていたのです」と製造統括部 生産管理部 生産管理課 課長 蝦名 隆行氏は説明する。通箱が足りなくなれば新たに購入せざるを得ず、その数は2ヵ月ごとにおよそ200箱、年間で数千万円ほどの経費が発生していたという。
「出荷数や行き先の管理が不十分だった点を改めるとともに、お客さまへのアプローチも含めてしっかり管理すべきだと考えました」と蝦名氏。こうして同社は、通箱の適切な管理を通じて、結果的に製品が正しく出荷されているかどうかという、より高度な出荷管理の実現を目指すこととなった。
すでにRFIDは商品管理や進捗管理などで活用してきたが、製品の最終工程である出荷管理の部分への導入が課題となっていた。「東芝の府中事業所内の20ほどの出荷先に製品を出荷するときに使う通箱は、電子部品を扱う関係で静電気対策がされた通常のダンボールなどの通箱とは違うもので、購入に5倍から6倍費用がかかります。本来であれば出荷後に戻してもらうのですが、出荷したまま戻ってこないケースが増えていました。通箱ではなく、単なる出荷箱になってしまっていたのです」と製造統括部 生産管理部 生産管理課 課長 蝦名 隆行氏は説明する。通箱が足りなくなれば新たに購入せざるを得ず、その数は2ヵ月ごとにおよそ200箱、年間で数千万円ほどの経費が発生していたという。
「出荷数や行き先の管理が不十分だった点を改めるとともに、お客さまへのアプローチも含めてしっかり管理すべきだと考えました」と蝦名氏。こうして同社は、通箱の適切な管理を通じて、結果的に製品が正しく出荷されているかどうかという、より高度な出荷管理の実現を目指すこととなった。
製造統括部 生産管理部 生産管理課 課長
蝦名 隆行氏
現場の負担が少ないこと、物流の仕組みへの知見も決め手に
同社が導入にあたり特に重視したのが、現場作業者の負担にならない仕組みづくりだ。「QRコードなどを作業者自らが読み取らないといけない運用では、作業者への負荷が増加してしまいます。そのため、今回のRFIDにより、ゲートを通過するだけで自動的に読み取りを行うなど、作業者に意識させない仕組みづくりに重きを置きました」と三浦氏。当初はカメラを用いた画像認識などのアプローチも検討したが、扱うデータが大容量となるため、カメラから得られた画像は出荷のエビデンスとして活用し、通箱の管理自体はRFIDを用いたアプローチに絞ったという。
当初は、通箱の出荷と返却の仕組みを実現するハードウェアおよびソフトウェアがパッケージ化されたものを検討したという。しかし、自社の仕様にカスタマイズする際の開発コストや読み取るためのゲート改造費用の増加に加え、運用までに時間を要してしまうことから、それぞれ最適なソリューションを検証し組み合わせることを選択したという。
こうして検討する中で注目したのが、東芝デジタルソリューションズが提供する追跡・所在管理サービス「LADOCsuite/LogiTrace」だった。「先行して、通箱に貼り付けられたRFタグを読み取る現有ハンディリーダーで検証しました。RFタグを自動的に読み取るためのゲートについても、安全性や読み取り精度、スキャンしていることを現場に意識させない仕様などを考慮しながら、複数のソリューションで検証を重ね、物流の仕組みやRFIDに関する実績や知識を併せ持った東芝デジタルソリューションズより『LADOCsuite/LogiTrace』を使ってうまく集約する仕組みを提案いただいたのが決め手でした」と三浦氏は説明する。
自社での維持管理の負担がいらないクラウドサービスとして利用できるものが理想的であり、まさに「LADOCsuite/LogiTrace」はうってつけだった。「東芝グループ内でクラウドを利用する際のセキュリティ要件が非常に厳格なのですが、東芝デジタルソリューションズはセキュリティ対策の経験と知見も豊富で、東芝グループのソリューションであることも大きなメリットでした」と三浦氏。こうして、通箱の追跡・所在管理のために「LADOCsuite/LogiTrace」の導入が決まった。
経費削減と、通箱管理の可視化へ
現在は、出荷され取引先に保管されていることが確認済みの2,300個とともに、RFタグを貼り付けて社内から出荷するおよそ900個の通箱が把握できているという。これから所在確認を進めていく外注先も含めると1万個に近い通箱が管理対象となる見込みだ。「手元に戻ってきていない通箱も含め、すべてにRFタグを貼り付けることができれば全体数が把握でき、返却依頼など具体的なアクションにつなげていくことができるようになります」と蝦名氏は説明する。
具体的な運用としては、通箱を識別するRFタグとともに、出荷先情報を付与したRFタグを貼り付け通箱がRFIDゲートシステムを通過することで、通箱と出荷先情報が紐づけられる。ゲートを一つ立てれば運用が可能となり、出荷された製品が取引先に届いた段階で、出荷先情報を付与したRFタグを運送委託会社が回収する。また、仮保管している通箱に関しては、個別にハンディリーダーでまとめて読み取ることで返却確認を実施している。
「LADOCsuite/LogiTrace」を中心とした通箱管理の基盤を整備したことで、2か月ごとに通箱を追加購入していた費用の削減が確実に見込める。「通箱の動きが可視化できれば出荷先での滞留状況を把握でき、出荷先へ通箱の返却を促すことに期待しています」と三浦氏は説明する。
また、現状の主に紙ベースでの出荷管理から、今後は製品を届けた段階で出荷先情報が付与されたRFタグを回収することで、納品履歴の把握がこれまで以上に厳格に実施できるようになり、出荷管理の高度化につながることもメリットとして挙げる。
「LADOCsuite/LogiTrace」の導入支援やカスタマイズ、ゲートやハンディリーダーからの情報収集など、導入に際しての全体コーディネートを手がけた東芝デジタルソリューションズについては、「我々の課題解決に最適なソリューションとして調整いただいたことで、短期間で立ち上げることができました。手厚く支援いただき感謝しています」と蝦名氏は評価する。特に東芝グループとして独自の仕様や要件にマッチした提案はもちろん、物流に関する豊富な知見やノウハウを生かせたことがプロジェクト成功の大きな要因となっているという。
材料入荷などの入口管理や、データを現場で可視化するダッシュボードも視野に
現在は「LADOCsuite/LogiTrace」を軸として通箱の管理が始まったばかりだが、製品の出荷管理の高度化やロケーション管理を含めたより効率的な管理を目指している。「通箱の所在が厳格に管理できれば、現場業務の効率化に向けたさまざまな施策に落とし込んで業務をブラッシュアップしていけると考えています」と蝦名氏は期待を寄せる。
また、物流という観点では、「東芝の物流IoTソリューション『LADOCsuite』には倉庫管理や倉庫運用のソリューションもラインナップされているので、それらも含め、業務のさらなる高度化につなげていきたいですね」と三浦氏は語る。
今後は「LADOCsuite/LogiTrace」で把握した通箱の状況を現場で可視化するためのダッシュボードづくりなど、日々の作業に役立つ情報提供の方法についても検討を進めていきたいという。「経営層を含めた関係者へリアルタイムな情報を発信し、一層の効率化を図っていきたい」と三浦氏。
工場や物流倉庫で欠かせない通箱の追跡・所在管理の徹底と高度な出荷管理への足掛かりとして、今後も「LADOCsuite/LogiTrace」は現場の業務改善に貢献していくことだろう。
SOLUTION FOCUS
追跡・所在管理サービス「LADOCsuite®/LogiTrace」
追跡・所在管理サービス「LADOCsuite®/LogiTrace」は、RFID を使用して輸送器材の所在データを自動収集し、輸送器材の動きの見える化を実現するソリューションです。クラウドで利用可能で、管理者の負担軽減や適切な資産管理の実現など、物流コストの削減に貢献します。
この記事の内容は2024年12月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
東芝ディーエムエス株式会社
操業開始
2002年1月
所在地
東京都府中市東芝町1番地(株式会社東芝 府中事業所内)
事業概要
電子機器の詳細設計・回路設計、電子部品モジュール設計・製造(ベアチップ実装)、LSI設計(ASIC、FPGA)、プリント配線板設計シミュレーション(電磁界解析、伝送線路解析、EMC解析等)、プリント配線板設計・製造・ユニット組立・試験、プリント配線板故障解析、修理サービス