知財管理業務の工数を大幅に削減し、効率的な運用を実現
業務改善をノンカスタマイズで、3か月で実現した「知財管理サービス IPS」

 創業以来「省エネルギー、小型化、高精度」を追求し、源泉となる「省・小・精の技術」を強みに、プリンター、プロジェクター、ウオッチ、ロボットといった各種製品を世に送り出しているセイコーエプソン株式会社。同社のイノベーションを支える知財活動として、特許をはじめ、デザインなどの意匠やコア技術の名称に関する商標などの保護を中心に、自社ブランドの優位性を維持向上させるための知財ミックス戦略を展開している。このたび知財管理業務の効率化を目指し、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する「知財管理サービスIPS」を採用した。


Before

知財管理業務の1つである権利維持管理は、納付書のパターンが複数あるなど管理そのものが煩雑。年金納付などの進捗管理についてはExcelを用いていたが正確性を維持することに苦労していた。また、担当者に頼るところが多く属人化しており、業務の効率化および省力化に課題を抱いていた。

After

東芝のソリューション「知財管理サービスIPS」を導入し権利維持管理業務の効率的な運用を実現。複数パターンの納付書については発行や共願者へのメール送信を自動化。Excelでの管理も不要となり、正確な進捗管理を組織的に行うことが可能となった。
さらに、特許庁のデータとの照合を行う審査経過機能が精度向上と効率化に寄与した。

知財管理の環境整備を強力に推進


 知財管理業務の1つに、特許などの権利を維持するための年金を各国の特許庁に納付する権利維持管理業務がある。
セイコーエプソン株式会社では、この煩雑な業務を自社で行っているが、将来的な人的リソース確保の課題から、システムを活用した業務の効率化および省力化を推進しており、円滑な知財管理のための環境整備を進めている。

知財管理の効率化に向けて新たな仕組みを模索


 同社の権利維持管理業務では月2,500件を超える年金納付が発生しているが、この権利維持管理業務そのものが属人化していたと同部 松岡 礼子氏はその課題を説明する。「特許を取得している国ごとに年金納付制度が異なるため、どうしても処理が複雑になりがちです。また、共同出願における特許の維持や放棄については、社内だけでなく外部との確認作業が発生するなど、業務が煩雑化していました」。

 以前から知財管理には他社のパッケージ化された業務システムを導入、運用していた。当然ながら、そこには権利維持管理の機能が備わっていたが、社内の仕様に合わせた運用が困難なため、情報の器としてのみ活用してきた経緯がある。「既存のシステムを提供している会社に依頼すればカスタマイズできたのですが、高額な費用がかかってしまうため、代わりにExcelを使って年金納付の進捗管理などを行っていました」と松岡氏。そのため、経験豊富なメンバーによる属人的な業務に頼らざるを得なかったという。

 「そもそも既存のパッケージにはできるだけ手を入れず、必要な機能を外部から柔軟に調達できる環境が望ましいと考えていました。特定のベンダーだけに固執せず、必要な機能をパーツとして揃えていくクラウドネイティブな思想のもとで、最適な環境づくりを目指してきました。その中で、属人化して負担の大きかった権利維持管理業務を中心に効率化できる仕組みを検討したのです」と同部 金澤義博氏。

知的財産本部 知財企画管理部
松岡 礼子氏

業務改善をノンカスタマイズで、わずか3か月で権利維持管理の仕組み導入を実現


知的財産本部 知財企画管理部
依田 恵氏

 業務効率化に向けて模索を続けるなか、特許のイベントで出会ったのが東芝の提供する「知財管理サービス IPS」だった。「カスタマイズしなくても、フォルダや画面構成などを自由に設定できるのはとても魅力的でした。また、知財管理の仕組みそのものを入れ替えずに、必要な機能だけを部分的に選択できるのは東芝だけでした」と同部 依田 恵氏は当時を振り返る。

 必要な書類をフォルダに仕分けていくといった仕組みの分かりやすさも評価したポイントの1つだ。「設定でフォルダに機能を持たせていく仕組みなので、ITに詳しくないメンバーでもきちんと内容を理解しながら使うことができ、とても分かりやすいと感じたのです」と金澤氏。さらに、クラウドサービスの中でも「SaaS」*1である知財管理サービスIPSはサブスクリプションで導入でき、カスタマイズせずとも設定していくだけで自社の運用に柔軟に合わせられる点も高く評価したという。

 知財管理サービス IPSの活用事例や実績も導入を決断する大きなポイントだった。「特許庁の公開情報との照合作業や、共願者に自動的にメール配信できる機能など、特に負担が大きい業務を効率化した事例をご紹介いただきました。知財管理サービス IPSであれば、さらに根本的な業務効率化に役立てられると考えたのです」と依田氏。

 結果として、同社が目指す権利維持管理の効率化に資する仕組みとして知財管理サービス IPSを採用した。トライアル後にヒアリングを経て東芝側で設定を実施、わずか3か月ほどで運用を開始した。

※1 SaaS: Software as service(ソフトウェアとしてのサービス)。その他クラウドサービスにはIaas、Paasなどの種類が存在する

工数を大幅に削減、精神的な負担軽減にもつながる


 現在は、以前から運用している知財管理システムで管理する多くの特許情報のうち、年金納付が必要な1万6,000件ほどの特許情報を知財管理サービス IPS内で管理する。特許庁への年金納付に必要な納付書の発行や共願者へのメール送信などのほか、新たに権利化された特許情報も随時投入し、業務の一元化を推進している。
 またオプションの審査経過機能を使えば、年金納付状況以外のさまざまな情報の照合が実行され、大変便利だという。「週1回の頻度で照合結果がメールで通知されるので、差異の確認なども簡単にできるようになりました。また、作業工数が削減でき、照合できる情報が増えました。メリットはとても大きい」と金澤氏も高く評価する。

 権利維持管理については、大幅な工数削減を達成するなど、業務の効率化に大きく寄与している。「なかでも年金納付書の作成作業は大きく削減できました。例えば大学との共同出願の際には特許料の減免措置があるなど、納付書にはいくつかのパターンがあり、従来は都度自分たちで計算し、手入力が必要でした。それが今は機能を持たせたフォルダで情報を仕分けするだけで、適切なフォームで自動計算された納付書が簡単に出力できるようになったのです」と松岡氏は評価する。システムで自動出力できるようになった効果は大きいという。「手作業だけに、漏れなく確実に処理することは担当者の精神的な負担でしたが、自動化で工数が減り、気持ちもとても楽になりました」と依田氏の評価も高い。

知的財産本部 知財企画管理部
金澤 義博氏

 東芝については、「当初RPA*2の導入も検討していたのですが、私たちが求めていることに対してRPAでは対費用効果が十分には出ないとはっきり伝えてくれました。仕組みを無理に導入させることなく、私たちの望んだ形に仕上げてくれたことで、信頼できるパートナーだと確信しました」と金澤氏は語る。またシステム導入経験のない松岡氏や依田氏に経験を積ませたいという金澤氏の想いをくみ、コロナ禍の中で、オンライン打ち合わせや設定作業なども懇切丁寧に進めていった東芝の対応に感謝しているという。

 「ITの経験がさほどない私でも設定できるなど、自由度の高さを改めて実感しています」と依田氏。松岡氏は「東芝の担当者はシステムに関することはもちろん、特許に関する高い知見も兼ね備えているので、レスポンスも非常に早く、また、困っているとすぐに的確な助言や提案をくださいます。ツール自体もマニュアルを読まずとも感覚的に操作しやすく、システムに不慣れな私たちでも扱えるのは大きなメリット。使っていると楽しくなってきて、いろいろやりたくなってしまうほどです」と評価する。

※2 RPA: Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)

運用構成図

海外を含めた知財管理の一元化を推進、さらなる効率化への機能拡張にも期待


 現在は国内の特許に関する権利維持管理にとどまっているが、今後は海外も含めた管理を一元的に実施していく予定だ。「現状の管理業務は既存の仕組みと並行稼働している部分もありますが、一段落した時点で海外の権利維持も知財管理サービス IPSでおこなっていきたい。権利維持管理以外の業務にも拡張していければと考えています」と依田氏は期待を寄せている。また、共願者へのメール送信の自動化も視野に入れているという。「対象案件の抽出や問い合わせのフォーム作成などの業務についても自動化を進めていきます」と松岡氏。

 人材確保が困難になりつつある今、同社は知財管理の効率化および省力化に向けた活動をさらに推し進めていくところだ。そんな環境をシステム面からバックアップすべく、東芝は今後も同社の知財管理業務への強力な支援と関係者への手厚いサポートを続けていく。

SOLUTION FOCUS

知財管理サービスIPS

知的財産戦略の業務遂行を強力に支援する東芝の「知財管理サービスIPS」ソリューション。
知的財産に関わる様々な情報をクラウド上で一元管理。
お客様独自の管理項目や画面、帳票、業務フローを用途・目的に合わせて柔軟に設定可能。
ノンカスタマイズで柔軟性の高いシステムを実現し、業務効率化の推進、権利の有効活用まで特許管理業務をトータルにサポートします。

この記事の内容は2020年12月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
セイコーエプソン株式会社

設立
1942年5月18日

代表者
代表取締役社長 小川恭範

本社所在地
長野県諏訪市大和三丁目3番5号

事業概要
プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業、ウエアラブル機器事業、ロボティクスソリューションズ事業、マイクロデバイス事業 等

URL
https://www.epson.jp/