既存環境をそのままに、短期間でクラウドシフトに成功
知財業務の効率的な運用を可能にする東芝の「知財管理サービス」

 金融機関向けの通貨処理機をはじめ数々の製品・サービスを提供しているグローリー株式会社では、オンプレミスで活用してきた特許管理システムのクラウド環境への移行を決断。既存環境をそのまま利用できる新たなクラウドサービスの基盤に、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する「知財管理サービス」を採用し、知財管理業務の効率化を実現した。


Before

知的財産部では特許管理システムをオンプレミスで運用してきたが、保守サポートが終了する時期を迎えるにあたり、新たな環境を模索することになった。その条件として、既存の環境からの安全かつスムーズな移行が可能であること、業務の効率化、機能の充実度、そしてサーバ管理の負担が軽減できる仕組みを希望していた。

After

移行ツールを利用し、わずか3日ほどでデータベースの変換・移行が完了。クラウドサービスの利点を活かし、特許事務所など外部との柔軟な連携を実現。サーバ管理などの負担もなくなった。必要な管理項目を簡単に追加できるなど使い勝手も高まり、安定した運用が可能に。

知財業務を事業に生かす活動をグローバルで推進


 通貨処理機のリーディングカンパニーであるグローリー株式会社は、1950年に開発した国産初となる硬貨計数機を皮切りに、数々の業界初製品を開発し続けている。同社の強みである認識・識別技術とメカトロ技術を駆使し、多方面にわたって事業を展開。“人と社会の「新たな信頼」を創造する” 新たなソリューションサービスの提供を目指している。海外事業比率も高まっており、国内はもちろん、海外の知的財産管理の重要性も一層増している。

 そんな同社において、国内および海外カンパニーを含めたグループ会社の知財管理業務を一手に担っているのが知的財産部だ。国内、海外それぞれに担当チームを配し、権利化された知的財産を事業に最大限活かしていくための取り組みを進めている。「事業部門と知的財産部とで定期的に知財戦略会議を開催し、事業活動と連動した知的財産活動を推進しています。最近では、競合他社よりも少しでも早く特許が取得できるよう、企画や開発段階でトレンドを読むアイデアを抽出したり、他社の特許に関する情報からのアイデア展開など積極的に発明発掘活動を行っています。これらの発明を事業に結びつけるために、自社の特許に様々な情報を関連付けて特許管理システムで管理しています」と同部 部長 松本 和久氏は説明する。その意味でも特許管理のシステムは同社にとって非常に重要なビジネス基盤と位置づけられている。

知的財産部 部長
松本 和久氏

保守サポート終了で業務効率化や負担軽減につながる環境を模索


 同社の知的財産部では、グローバルも含めて年間300件前後の出願を行っており、権利化された特許・実用新案・意匠の保有件数は国内外あわせると、のべ3,500件に上る。これら権利化された知的財産を事業活動に活用すべく、以前よりオンプレミス環境で特許管理システムを運用してきたが、サーバの保守サポート終了の時期が迫り、新たな環境への刷新を検討することになった。

 業務効率化の視点では、例えば特許事務所との効率的な連携をはじめ、審査経過の取り込みなどの手作業を自動化するなど、より確実な情報管理が求められていた。
 また、サーバ管理の負担軽減につながる環境も望まれていた。「以前はサーバ管理を我々自身で行う必要がありました。パッチ適用などメンテナンスに手間がかかりますし、何か障害が発生すれば復旧対応に時間をかけざるを得ません。新たな環境では、そんなサーバ管理の負担も軽減したかったのです」と同部 海外グループ グループマネージャー 丸岡  洋平氏は説明する。

業務改善を実現できる機能と支援体制の充実度を評価


知的財産部 海外グループ グループマネージャー
丸岡  洋平氏

 移行を検討するにあたっては、従来の環境を踏襲しながらも、業務改善を実現できる仕組みが望まれた。「大きな課題があってシステム刷新するわけではなかったので、使い慣れた現状の運用を可能な限り維持できるものを念頭に検討しました」と丸岡氏。その意味では、すでに蓄積された情報を負担なく移し替えるなど、新たな環境に安全かつスムーズに移行できる仕組みを求めていた。

 そこで、特許・情報フェアや株式会社発明通信社からの情報などをもとに、複数のソリューションを候補に選定。特許庁からの審査経過情報の取り込みなど機能の充実度が高いことを前提に絞り込んでいくなかで、東芝が提供する知財管理サービスに注目したという。「実際に使っている会社からヒアリングできたのは大きかった。東芝から手厚いサポートが得られている、と既に導入している企業からの評価を確認し、東芝の知財管理サービスに決定したのです」と丸岡氏。

 さらに東芝の知財管理サービスはクラウド環境で利用できるため、サーバ運用上の負担も大きく軽減できると判断。「既存の使い勝手はそのままに、クラウド上で利用できる東芝の知財管理サービスであれば、新たな教育コストをかける必要もなく、安定した運用が継続できると判断しました」と松本氏は評価する。

 こうしてさまざまな側面からの検討の結果、東芝の知財管理サービスが採用されることになった。

短期間での稼働開始、特許事務所連携で4割ほどの工数削減も


 東芝の知財管理サービスの導入決定後、わずか4か月ほどの短期間で稼働を実現した。同社の場合、データベースの変換だけで正味3日ほどでデータ移行が安全、かつスムーズに完了。「トラブルなくスムーズに移行でき、調整が必要だったのは、旧環境でカスタマイズしていた一部経費の計算部分だけでした」と同部 海外グループ 浦 貴子氏は説明する。

 社外の特許事務所などとの連携についても、今ではクラウド環境で柔軟なアクセスを可能にし、スムーズな連携が可能となった。「特許事務所から通知される情報の入力など、過去に比べて業務時間はおよそ4割程度削減されました」と松本氏は評価する。また、クラウドサービスのため、「いままでは年間36時間ほど障害対応などに割かれていましたが、今ではゼロになり、精神的な負担もなくなりました。サーバ管理から解放されたことは、私にとっては最大のメリットです」と丸岡氏は力説する。

 また、登録された特許を事業貢献度に基づいて評価し、ランク分けして入力することで、事業部門との定期ミーティングでも有効に役立てている。「特許に関連した自社の製品情報や他社情報、どの機種にどんな特許が使われているか、きちんと紐づけられて管理されています。貢献度のランクが高い特許を抽出し、事業部門に活用を働きかけるなど、マッチングの仕組みもできています」と松本氏は説明する。

 使い勝手の面では、必要な管理項目が簡単に追加できる点を高く評価する。最近では、欧州特許庁の早期審査プログラム「PACE」のチェック項目を加えたり、出願しなかった発明についてその理由を記録するコメント欄を増やすなど、管理上必要な項目を適宜追加している。「東芝の知財管理サービスは自由に設計ができ、業務に合わせて誰でも簡単に設定できるので、とても使いやすい」と浦氏は評価する。

データ活用を進めながら事業部門との連携をさらに加速


 今後については、東芝の知財管理サービス内に蓄積された知財情報や、権利化した特許を事業に生かすために、事業部門とのかかわりを深め、知財業務のさらなる効率化を目指している。「DX推進につながるデータ活用を進め、最終的には、発明者と知的財産部の情報基盤として東芝の知財管理サービスを活用することが理想であり、特許の活用や将来伸ばしていきたい方向性については、知的財産部だけではなく、事業部門が主体となって考え検討していくという流れも必要だ」と松本氏。
 「発明者にも知財管理サービスへのアクセス権を付与できるようになれば、直接、東芝の知財管理サービスに入力してもらうことで転記作業の負荷も軽減できるようになります。業務の効率化や転記ミスの回避にもつながるため、そんな環境づくりが進むことに期待したい」と浦氏も語る。

 また、海外の拠点からも東芝の知財管理サービスが利用できるようになっており、将来的には現地法人にも知財業務のスペシャリストを配置し、グローバルな環境での統合的な知財業務の推進を目指している。「売上比率を見ても、グローバルでの知的財産の権利化や活用がより重要になってきます。言語対応の課題はありますが、東芝の知財管理サービスを日本国内だけではなく、海外でも知財情報の共有基盤として活用していけるようにしたいと考えています」と丸岡氏は大きな期待を寄せている。

 短期間で安全かつスムーズにデータベースの変換・移行も含めたクラウドシフトに成功した同社。権利化された知的財産をグローバル市場にも活かしていくなど、同社の知財戦略を下支えする業務基盤として、今後も東芝の知財管理サービスは大いに活用されていくことだろう。

SOLUTION FOCUS

知財管理サービス

知的財産戦略の業務遂行を強力に支援する東芝の「知財管理サービス」ソリューション。
知的財産に関わる様々な情報をクラウド上で一元管理。
お客様独自の管理項目や画面、帳票、業務フローを用途・目的に合わせて柔軟に設定可能。
ノンカスタマイズで柔軟性の高いシステムを実現し、業務効率化の推進、権利の有効活用まで特許管理業務をトータルにサポートします。

この記事の内容は2021年10月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
グローリー株式会社

創業
1918年3月

代表者
代表取締役社長    三和元純

本社所在地
兵庫県姫路市下手野1-3-1

事業概要
通貨処理機、情報処理機及び通貨端末機器、自動販売機、自動サービス機器などの開発・製造・販売・メンテナンス

URL
https://www.glory.co.jp/