経営戦略に沿った柔軟な知財業務フローを実現する基盤を整備
東芝の「知財管理サービス」が知財戦略の迅速な推進に貢献
スポーツ用品を事業の柱に、スポーツを通して健康で持続可能な社会の実現に貢献している株式会社アシックスでは、特許や意匠を中心に権利化に向けた業務の効率化に向けた環境づくりを推進。研究所に在籍する技術者や特許事務所などと連携しながら、知財業務を円滑に進めるための基盤として、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する特許業務ソリューション「知財管理サービス」を活用している。
Before
社内ではすでに別の知財管理の業務基盤を運用していたが、業務スタイルが変化するにしたがい、要求仕様とのずれが発生してきた。また、入力項目の最適化や、レスポンス的にも十分でないなど、使い勝手の面で課題があった。そこで将来に向けた知財戦略の展開も含めて検討を重ね、新たな業務基盤を整備することを計画。
After
自社での改修も含めたカスタマイズが容易で、知財業務全般を柔軟にカバーできる仕組みとして、東芝がクラウド環境で提供する「知財管理サービス」を選択。社内の研究開発部門や特許事務所など関係組織とも円滑にコミュニケーションできるようになり、知財管理に関する全ての情報を集約することに成功。グローバル展開も視野に入れた業務効率化を実現。
専任者不在でシステムを活用できず、業務フローの見直しも急務に
創業者である鬼塚喜八郎が1949年に創業し、現在は各種スポーツ用品等の製造および販売をグローバルに展開している株式会社アシックス。「スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」をビジョンに掲げ、スポーツ用品を主力事業に、ライフスタイル市場向けの商品やフィットネスアプリなどのサービスを提供。最重要課題に掲げる「パフォーマンスランニングで勝つ」を実現すべく、機能性に優れたランニングシューズの投入を積極的に推し進めながら、スポーツ体験に新たな価値を提供する「デジタルドリブンカンパニー」実現に向け、デジタルを軸にサービスを強化している。
そんな同社で知的財産管理を担う法務・知財統括部 知的財産部は、戦略立案などを担当する知財戦略チームをはじめ、特許・意匠チーム、商標チーム、ブランド保護チームという4つのチームで編成されており、グローバルに知財戦略を展開。「私たちの顧客となる事業部や研究開発部門にとって満足度の高いサービスを提供できる組織となるべく、早期知財介入を掲げ、フットワーク軽く、緊密なコミュニケーションを図っていくというスタンスをとっています。また、最近では知財を経営に生かすIPランドスケープといった考え方が注目されているように、あらゆる局面に知財が積極的に関わるために、社内におけるプレゼンスを高めていく活動に段階的に取り組んでいます」と法務・知財統括部 知的財産部 部長 齊藤 浩二氏は説明する。
知財管理業務に必要な基盤として、他社の知財管理システムを利用していた同社。「実際、少数精鋭体制の現場では、本来必要なシステム管理の専任スタッフのメンバー割当が難しく、結果的に十分にシステムを活用しきれていなかったのです」と齊藤氏。そこで、まずは各業務フローを見直すことにした。
システム改修に必要なカスタマイズ費用が膨大に、使い勝手の課題も顕在化
以前の仕組みが十分に機能していなかった背景について同部 特許・意匠チーム マネージャー 下村 幸治氏は語る。「期限管理など最低限の機能は利用できる状態でしたが、入力項目が多いなど操作性の課題やサーバ上での処理遅延などの課題が顕在化していました。」
また、ビジネス環境の変化に対応すべくシステムを新たな業務フローに合わせようにも、カスタマイズ費用が高く、改善を進められない状態だった。「システムに私たちの業務を合わせるのではなく、業務にシステムを合わせていくことが望ましく、業務の効率化も含めて最適な環境を作るためには、既存環境からの脱却が必要だったのです」と下村氏。
同チーム所属の片桐 洋氏が担当していた意匠管理では、既存の仕組みを活用してはいたものの、実質的に1人で行っていた入力業務の負担が大きくなっていた。「特許事務所から送られてくる国内外の案件対応の過程で発生する情報のほか、社内手続に必要な情報など、さまざまな情報を手入力する必要があり、入力業務に手間がかかっていました。私しか入力できないような属人化した環境を解消する必要もあったのです」と片桐氏。
そこで、ワークフローの見直しも兼ねて、業務を洗い出し、その業務に必要な情報を整理しつつ効率的な知財業務フローが実装できる新たな業務基盤の実現を検討することにしたのである。
カスタマイズ性の高さで内製化が可能、業務効率化に貢献できると判断
新たな仕組として、クラウドサービスの活用が1つの解決策となったという。「社内に設置したサーバでの運用ではなく、クラウド環境を利用した方が、コスト面や定期的なメンテナンスの負荷からも解放されると考えたのです」と齊藤氏。
また、特許事務所との連絡や発明者への通知など、多くの情報がメールでやり取りされており、メール業務に忙殺されて本来の業務が進まないという状況の改善も求められていた。
さらに、設定変更や項目追加などを、その都度システムベンダーに依頼しなくても自分たちで柔軟に対応でき、また、現在のコロナ禍におけるリモート環境下で、知的財産部内はもちろんのこと、事業部や開発部門などとのコミュニケーション基盤としても活用できる仕組みを望んでいた。
それらの要件を満たすものとして注目したのが、東芝が提供する特許業務ソリューション「知財管理サービス」だった。「海外スタッフからは、グローバルで広く利用されている別の知財業務ツールはどうかという話が挙がったものの、システム管理の負担という既存の問題の解消にはならないと判断。東芝のソリューションであれば、クラウド環境で利用できるだけでなく、コミュニケーション機能も備わっており、柔軟な設定変更にも対応できる。私たちが目指した仕組みとして最適だと判断したのです」と齊藤氏は説明する。
「他社でも、クラウドサービスの製品はありました。しかし、画面などのカスタマイズの自由度が圧倒的に高かったのが東芝でした」と下村氏。また、リモート時代に求められる申請承認などのワークフローがシステム内で実装でき、外部とのコミュニケーション環境も備わっている点も大きな魅力だったという。「東芝は、サポートの面でも私たちとフィーリングが合っていました。特許法に関する豊富な知見もあり、法的な観点も踏まえてすぐに答えをくれたのが東芝だったのです。東芝の担当者に知財分野の専門知識があることで、打ち合わせもスムーズに進められるのは大きなポイントでした」と下村氏は評価する。
最終判断として、既存環境を全面的に刷新し、同社が描く知財戦略に沿った業務フローを整備できる基盤として、東芝の知財管理サービスを選択することになった。
知財管理業務全般を強力に支援する業務基盤の整備を実現
現在基本的な業務フロー設計が終わり、今後は、知財管理業務全般をカバーする仕組みとして活用することになる。「基本的には特許・意匠チームを中心に運用しますが、知財戦略チームが立案する企画やプロジェクトのワークフローも新たな仕組みのなかで管理していく予定です」と齊藤氏。
知的財産部だけでなく、研究所が出すプロジェクトの進捗管理をはじめ、商品開発やマーケティング部門など組織横断的なプロジェクトも管理できるようになるなど、知的財産が関わるであろう全ての情報がこの仕組みのなかに取り込まれていくことになる。「発明届出よりも早い相談段階からこのツールを使ってコミュニケーションをとり、資料の一元管理や出願書類などの管理も行うことができるようになります。またリモート環境でもワークフロー決裁ができる仕組みも想定しており、最終的には全てペーパーレスで出願するところまで持っていきたい」と下村氏は期待を寄せている。発明者に対する報奨金管理の他に、今後はアメリカや中国にある開発部門への展開も視野に、統合的な知財情報の一元管理が可能な仕組みに育てていく計画だ。
今回の仕組みでは、必要最低限の項目だけの入力で済むようにインターフェースが構築されており、業務の効率化が実現した。「以前は特許事務所からの情報や、発明者やデザイナーとやり取りした書類の登録や履歴情報などを都度、手入力していましたが、おそらく以前に比べて半分程度の工数で済むなど、負担軽減に大きくつながることでしょう」と片桐氏。
カスタマイズ性の高さも見逃せない。「スクロールしないと情報が確認できない、タブを切り替えないと情報にたどり着かないといった事態に陥りがちですが、運用に最適な形で画面を構成しました。期限管理もシステム内で実装でき、属人化した運用から解放されました」と下村氏は評価する。
このプロジェクトは、コロナ禍の影響もあって、オンラインでの打ち合わせだけで稼働にこぎつけた。週1回のミーティングで意思疎通を図りながら、打ち合わせや機能実装後のフィードバックを実施していったのだ。「直接お会いすることができない中で、私たちの要望に沿って適切に対応いただき、最後まで一度も東芝の方々が来社することなく、予想以上の短期間で稼働できる環境ができました。我々も日常業務をこなしながらのプロジェクトでしたが、順調に立ち上げることができました」と片桐氏。
今回、東芝の知財管理サービスの提案や既存環境からの移行について、東芝との橋渡しをしたのが株式会社発明通信社だ。「既存の仕組みからの移行はもちろん、社内では手間がかかるような作業にも迅速に対応いただけたけて、本当に感謝しています」と発明通信社に対する片桐氏の評価も高い。
グローバル展開を視野に、関連部署とのコミュニケーション基盤として期待
今後は、グローバルで知財管理業務の一元管理が可能な基盤として拡張していくという。なかでも情報管理は、グローバル展開において重要になってくると齊藤氏は指摘する。「国によっては発明情報を海外に持ち出せないといった制限もあるため、システム環境やルール作りも含め、しっかりと検討する必要があります。その際には、東芝にもご協力いただきながらプロジェクトを進めていきたい」と期待を寄せている。
国内については、「今後は東芝の知財管理サービスで整備した業務基盤を部内で軌道に乗せていきながら、私たちが描く経営に資する知財戦略を円滑に遂行するために、これからも東芝と一緒に最適な環境づくりに取り組んでいきたい」と齊藤氏。
東芝の知財管理サービスは同社におけるグローバルな知財戦略の推進に欠かせない業務基盤の中核として、今後も役立つだろう。
SOLUTION FOCUS
知的財産戦略の業務遂行を強力に支援する東芝の「知財管理サービス」ソリューション。
知的財産に関わる様々な情報をクラウド上で一元管理。
お客様独自の管理項目や画面、帳票、業務フローを用途・目的に合わせて柔軟に設定可能。
ノンカスタマイズで柔軟性の高いシステムを実現し、業務効率化の推進、権利の有効活用まで特許管理業務をトータルにサポートします。
この記事の内容は2021年1月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名 株式会社アシックス
設立 1949年9月1日
代表者 代表取締役社長COO 廣田康人
本社所在地 兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目1番1
事業概要 各種スポーツ用品等の製造および販売