BCP管理に必要な情報収集と見積業務のデジタル化を支援
Meister SRM™でサプライチェーン全体を進化させる

スイッチやスマートキーといった広範な自動車関連製品を手掛けている株式会社東海理化では、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供している戦略調達ソリューション「Meister SRM」を採用し、調達業務におけるBCP(事業継続計画)管理の強化をはじめ、紙からの転記作業や押印による承認作業といった低付加価値業務の改善を実現。サプライチェーン全体のデータプラットフォーム整備を推進している。


Before

これまで運用してきたサプライチェーン情報管理基盤が老朽化。品番に紐づくBCP管理の徹底とサプライチェーン情報の効率的な更新とともに、システムへの転記や紙への押印作業といった低付加価値業務からの脱却も目指し、システムと業務の大きな見直しを検討することにした。

After

Meister SRMにより、低付加価値業務を削減しながら、事務品質の向上も果たし、電子見積およびサプライチェーン情報が便利になったと仕入先に実感してもらえるよう、Excelとの連携によって選択するだけで見積明細書が作成できる環境を整備した。これによりBCP管理の強化と業務の改善を実現した。

長期にわたる仕入先との良好な関係を築いていく方針を掲げる調達部


 1948年の会社設立以来、人の目に触れ、手に触れる、人に優しい製品づくりを通して自動車産業の成長を下支えしている株式会社東海理化。「人が手掛けないことこそやる」を創業の精神とし、ドライバーが日常的に触れるさまざまな自動車関連製品を世の中に提供しており、安全性や操作性、耐久性など高い設計品質で高付加価値なものづくりを推進。世界中の人とクルマを豊かにつなぐモノづくりによって新たな価値を創造している。

 原材料から部品、製品の調達業務を行っている調達部では、オープンで公平・公正な取引の機会を提供する「オープン・マインド・ポリシー」や仕入先と相互に発展しながら、長期に渡る良い取引関係を築いていく「ロング・ターム・リレイション・シップ」など5つの基本方針を掲げ、最適なグローバル調達を目指している。

低付加価値業務からの脱却と品番と紐づいたBCP管理を目指す


株式会社東海理化
調達部長
川村 泰幸氏

 調達部では、以前から仕入先の社名を軸にしたサプライチェーン情報を起点としたBCP管理を行ってきた。そんな折、仕入先が災害の被害を受け、品番ごとの影響度合いを把握することが困難な状況に直面した。「品番に紐づいた情報管理の必要性が高まる中、これまで運用してきたサプライチェーン情報管理基盤の老朽化への対応とBCP管理における課題を解決するため、システム導入の検討を開始したのです」と調達部長 川村 泰幸氏は当時を振り返る。

BCPシステム更新を経営層に提案した際、「机にばかりいて、物の価格が分かるのか。バイヤーは、もっと現場に出て、モノづくりを見てくること。その為にも低付加価値業務を見直し、時間を捻出せよ」との指南を受け、業務の実態確認をしたところ「仕入先との価格決定時には、紙での見積明細書のやり取りや押印作業など、低付加価値業務が少なくなかった。これらの事務業務も含めて、調達システム全体の業務改善を図ることにしたのです」と川村氏。

 また、国内だけで300社ほど、海外も含めると800社ほどある仕入先の最新情報の多くは担当するバイヤーが個人的に把握しているなど、情報管理が属人化していたことも課題として顕在化していた。「担当が変わったとしても過去の情報も含めて引き継がれるような仕組み作りも必要でした。ロング・ターム・リレイション・シップという方針を掲げ、仕入先とは長年の取引を積み重ねています。これらの情報を一元管理できる仕組みも欲しいと考えたのです」と語るのは調達部 調達企画室長 上田 英生氏だ。

 既存の購入単価管理システムを管理してきた情報システム部 システム企画1室 管理システムグループ 牛田 祥太氏も、今回のプロジェクトを機に新たな環境が必要だと痛感していた。「これまでは、国内だけでなく海外事業体専用の購入単価情報も社内のオンプレミス環境で管理していました。しかし、利便性の面からもセキュアな環境を維持しながら、全世界共通で使用できるクラウド基盤が必要だったのです」。

 これら調達業務におけるさまざまな課題を解決すべく、新たな仕組みづくりに向けたプロジェクトが動き出すことになった。

株式会社東海理化
調達部 調達企画室長

上田 英生氏

Meister SRMの豊富な実績が安心材料に


株式会社東海理化
調達企画室 主幹

須賀 雅美氏

 新たな仕組みづくりにあたり、グローバル展開を念頭に特に選定ポイントとして重視したのが、パッケージ内で同社が目指す調達業務が具現化できる融通性があるかどうか、調達部として実績をベースにリスクが低減できるかという観点だった。

 「あるベンダーからの提案は、すべてをカスタマイズして構築せざるを得ず、納期的にも予算的にも私たちの希望するものではありませんでした。また、調達業務としてパッケージ化された別のソリューションもありましたが、オンプレミスでの提供で海外展開時のセキュリティリスクや利便性の面で難しいことが判りました。しかし、東芝のMeister SRMであれば、クラウド環境でも利用でき、パッケージとして電子見積やサプライチェーン情報を活用したBCP管理の機能が備わっているだけでなく、Excelをインターフェースに見積明細書が作成できるなど融通性の面でも評価できたのです」と調達企画室 主幹 須賀 雅美氏は語る。

 またMeister SRMは、製造業での実績が豊富だったことから、リスク軽減の観点からもその実績が安心材料となった。「設備投資にかかわるプロジェクトだけに、初期投資の費用インパクトはできるだけ小さくしたい。クラウド環境で利用できるMeister SRMは、サブスクリプションで利用できるので、選定のポイントとしてメリットが大きかった」と上田氏。システム面では、Meister SRMにて単価を決定することになるため、社内の購入単価マスターへの登録や生産準備のためのシステムとの連携なども必要になってくる。そこで、事前にシステム連携の可否を確認したところ、同社が目指す環境に適合できると判断した。「クラウド環境での利用が可能であり、海外展開時に求められるセキュリティレベルや使い勝手に関する要件を満たすことも確認できました。」と牛田氏。

 こうして、最終選定において、同社が目指す調達見積業務の電子化およびBCP管理の基盤として、東芝のMeister SRMが採用されることになったのである。

株式会社東海理化
情報システム部 システム企画1室
管理システムグループ

牛田 祥太氏

仕入先にも利便性を提供、低付加価値業務の削減に貢献


 今回の基本的な運用としては、見積依頼をかけた段階でExcelをインターフェースにした見積明細書にて単価情報の起票を取引先が行い、Excel上の情報がMeister SRMに自動登録され、承認を経たうえで単価情報が確定する。社内のバイヤー約60名を含め、見積明細書を作成する仕入先各社がそれぞれ活用しており、調達業務の基盤として利用者は400名を超える。色や一部仕様が異なる製品も品番違い扱いになるため、品番ベースでは単発発注で月に3,000件ほどあり、量産前に必要なプロセスごとの見積を含めると6,000件ほどの見積明細書が毎月やり取りされている。

 見積内容は多岐にわたっており、社内システムとの連携先もそれぞれ異なる。そのため、製品や部品、資材に関する見積システムは業務ごとに段階的な稼働を進めており、現在はフローが異なる設備見積以外の仕組みが稼働している状況だ。

 明細書作成では、Meister SRM内で管理されている各項目がマスター化され、プルダウンで選択できるようになっており、単価情報など最小限の入力で見積明細書が作成できる。「もともと私たちと直接取引している仕入先は認定制度に基づいており、2次以降の仕入先も届け出制になっています。当社の方で仕入先情報をMeister SRMでデータベース化していますので、このデータと明細書を連携し、それを選択するだけで品番に紐づいたサプライチェーン情報の管理が可能です。今回の新たな仕組みは、仕入先からすれば大きな変更点。移行しやすく便利になったと仕入れ先の方々に実感いただけるように、見積明細書のフォームを作りました」と須賀氏。

 段階的に移行を進めているが、すでに当初掲げてきた低付加価値業務の削減効果を実感しているという。「もともと紙に起因する低付加価値業務が調達業務の4割ほどを占めていました。今では紙そのものが大きく削減できただけでなく、転記ミスなども減らすことができるようになり、事務品質の向上に役立っています。また、仕入先への問い合わせなども削減できています」と上田氏は評価する。

「経営層から、調達部門は、できるだけ取引先の現場を見に行く時間を確保するべきだという指南もありました。今回業務の効率化によって汲々としていた値決めの業務から脱却し、時間の有効活用ができる環境が整いました」と須賀氏。

 Meister SRM導入に関しては、東芝から手厚い支援が継続的に行われている。「私たちは調達業務に関しては熟知していますが、システムを運用する際には、東芝からの支援が欠かせません。レスポンスよく真摯に対応してくれているのでとても助かりますし、何より、バイヤーや仕入先に対して迷惑がかからないよう配慮している当社の在り方をしっかりと理解してくれているところが私たちに寄り添ってくれていると感じます」と須賀氏は評価する。

グローバル展開の推進を加速、サプライチェーン全体の基盤としても期待


 今後については、国内中心の環境を海外子会社にも展開するべく、現地のシステム環境やデータ連携先などを調査していき、グローバル化を進めていく計画だ。「電子見積については、サプライチェーン情報がたどれるよう、仕入先管理はきちんとやっておく必要があります。また、仕入先に関連した業務が発生する品質保証部門など他部門の業務もMeister SRMに取り込んでいくことや、2次3次の仕入先で発生する見積業務でも紙の業務も当然残っています。これからもMeister SRMをベースに、仕入先向けにワークフロー機能や申請機能などを追加したり、これらの仕入先の方々にも活用してもらったりすることで、サプライチェーン全体のデータプラットフォームとなるよう調達基盤を整備していきたいと考えています」と須賀氏は期待を膨らませる。

 同社では今後、バイヤーはもちろん仕入先にもさらなるメリットを提示し、これからも関係者に満足してもらえる、嬉しさが実感できるような環境整備に取り組んでいくとの事である。調達業務の基盤となるシステムをさらに成長させていくための環境づくりに向け、東芝は今後も同社を支援し続けていく。

SOLUTION FOCUS

戦略調達ソリューション「Meister SRM™」

サプライヤとの接点プロセス全体にわたるコミュニケーション基盤による戦略調達の実現。
多くの製造業はグローバル市場で勝ち抜くために、戦略的な調達イノベーションに取り組んでいます。
日々収集される部材コストや取引先などのサプライヤ情報などを一元管理して有効に活用し、
調達コスト、遵法リスク、生産活動中断リスクを低減するサプライヤコミュニケーション基盤。
サプライチェーンを構成する生産拠点の位置情報を得て迅速に影響を把握できます。

この記事の内容は2020年11月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名   株式会社東海理化

設立    1948年8月30日

代表者   代表取締役社長 社長執行役員 二之夕裕美

本社所在地 愛知県丹羽郡大口町豊田三丁目260番地

事業概要  自動車部品等の製造

URL    http://www.tokai-rika.co.jp