報道機関向け情報配信システムをオンプレミスからクラウドへ移行
BCP対応と情報配信システムの利便性向上を実現

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毎月1000万人のユーザーがアクセスする日本有数の情報サイトをはじめ、報道機関や官公庁、企業などにニュース・情報を配信する時事通信社。1945年創立の同社は配信サービスの中核を担う報道機関向け配信システム(MACH)を2世代にわたるオンプレミスなシステムからクラウドシステムへと移行した。東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)は、時事通信社のパートナーとして、2006年の初代のMACH開発から、2013年のMACH2、そして今回のMACH3とシステム構築に携わってきた。MACH3ではクラウドマネージドサービス for AWSで、AWSへの移行をフルサポート、BCP(事業継続計画)対応としてのデータの多拠点化の構築も含めてシステム構築を計画通り、完了させた。 


Before

報道機関における配信サービスは、配信内容の遅延・未達は絶対に許されない。2006年の初代MACH以来、大きな遅延・未達の事故もなく、システムは順調に運営されてきた。しかし、BCP運用時おいてもデータ配信を通常時運用と同様に利用可能、配信システムの一層の利便性向上など、自社システムからクラウドへの移行が必要になった。

After

東芝が提供するクラウドマネージドサービス for AWSを活用して、クラウドへの移行を行い、計画通り新しいシステムMACH3を稼働させた。MACH3ではBCP対応として多拠点化を実現すると同時に、既存システムでは提供不可とされていた拠点へもサービス提供が可能になった。AWSに移行したことで、導入・運用コストと、システム監視の工数の削減が実現した。

配信システムで、マスメディア向けに正確なニュースを瞬時に提供


 ICTの急速な発展により、報道機関を取り巻く環境は大きく変化している。通信社から報道機関に提供されるニュースは「正確」、「公正」、「迅速」が重要だ。さらに近年はインターネットを介して、さまざまな情報が飛び交う中、正確さがますます重要になっている。

 1945年創立の時事通信社は、正確・公正なニュース、情報、データを国内外に伝達し、社会の発展に寄与することを目指して、通信社としての報道活動を展開している。その中で、報道機関に向けた最新のニュースは、全国紙、ブロック紙・県紙、NHK、民放キー局、出版社など約140社の契約メディアへと一斉に送信され、新聞紙面やテレビ放送に利用される。加えて、ポータルサイトやキュレーションを通じて、一般読者にも直接届けられる。専門・実務分野でも、金融・証券市場の動きから、商品の相場、行政動向などまで、さまざまな情報を発信。さらに海外28カ所に特派員取材網を展開、国際通信社と提携して、全世界から入電するニュースや写真を契約社に配信している。

 そして、これらは、配信システムMACHにより、報道機関に送られているのである。「初代のMACHは2006年に運用を開始しました。その後、2013年にシステム更改し、記事のみだけではなく、他システムを統合し画像も配信することが可能になりました。その後、2018年に、新たな配信システムMACH3の構築の検討に入るべく、プロジェクトを立ち上げたのです」と時事通信社 システム開発局 開発部 専任部長 兼 総合メディア局付の小川 泰孝氏は語る。

BCPに対応すべく、オンプレミスからクラウドへの移行を計画


株式会社時事通信社
システム開発局 開発部 専任部長
兼 総合メディア局付

小川 泰孝氏

 MACH3の構築にあたっては、全社レベルでのBCP策定に合わせて、多拠点化を実現、大規模災害などの有事の際にも対応できるシステムにすることにした。また、これまでの配信は専用線を使って行っていたが、国外にある在外公館や企業の海外拠点などは、専用線を用意することが難しく、システム・端末系についても非日本語OSである事も多く、すべての拠点でスムーズに利用することができる仕組みを検討しなければならなかった。検討の結果プロジェクトメンバーは、これまで運用してきた自社システムをパブリッククラウドに移行することを計画、移行先としてAWSを選んだ。「さまざまな観点から検討しましたが、私たちが希望するシステムにするため、オンプレミスからクラウドに移行することにしました。ほかの企業さんからもご提案いただきましたが、東芝を選んだ決め手は、マイグレーションにおける最適化、要件における理解度と実現力、運用についてさまざまな選択肢のある提案でした。特に運用サポートについては重視し、既存システムと同様の保守体制確保が可能。社内の運用セクションとの連携についても既存体制のまま受けて頂けることが大きい理由でした。このオンプレミスのプラットフォーム保守にかわるMSC(マネージドサービスセンター)の役割は大きく、パブリッククラウド運用における他ベンダーとの大きなアドバンテージになっていると思います。既存インフラとの親和性は本当に重要です。もちろん、これまで培ってきた長年の実績と信頼も安心材料の一つですね。」(小川氏)。

 実は、新聞社、契約メディアの文字コードやフォント、制御コードは1社ごとに異なっており、記事はそれに合わせて各社に配信する必要がある。また、各社向けについてもシステム用、編集端末用、印刷用、DRサイト用など細かく分かれており、それぞれに合わせた配信が必要となっている。この要件に対応する為、時事通信社はMACH第一期の構築に際して、東芝と共同でコード変換システムを開発。以来、その基盤システムを利用して記事を配信してきた。配信システムで重要なのは記事配信の遅延・未達がないことであるが、データの信頼性についても同様だ。14年余りの運用の中で、各新聞社、契約メディアへ間違ったデータで配信されてしまう事故は1件もなかった。これまで実績と信頼から、システムの基本構造は変更せずに、MACH3を構築することにした。

 今回、時事通信社がAWSに決めたのは、システム構成の自由度が高いこと、データセンターが多様であること、そして、既存の専用線との親和性だった。また、社内の他のシステムで以前からAWSを使っていたため、担当者が慣れていることも大きな理由の1つだったという。「私はMACH3プロジェクトの前、別のプロジェクトで1年半ほど、AWSを使ったシステムの開発と運用を担当していました。MACH3をAWS上で構築することにしたので、当時の経験を生かし、東芝と仕様の策定などを進めることができました」と時事通信社 システム開発局 開発部 兼 東京五輪パラリンピック対策室の田中 仁喜氏は説明する。

株式会社時事通信社
システム開発局 開発部 兼
東京五輪パラリンピック対策室
田中 仁喜氏

クラウドマネージドサービス for AWSで、AWSへの移行をフルサポート


 東芝は最適なクラウドの選定から運用までをトータルサポートする「クラウドマネージドサービス for AWS」で、時事通信社を支援した。これは、東芝グループで実践したことがある、マルチクラウドの導入・運用ノウハウに基づいて、顧客のビジネス要件に最適なインテグレーション手法でクラウドを導入する。そして、総合的な運用サービスを組み合わせ、クラウド活用によるメリットを顧客のビジネスに役立ててもらうサービスだ。

 AWSに移行するにあたり、これまで使っていた幾つかのソフトウェアが利用できなくなる、ということが判った。例えば、従来のクラスタリングソフトウェアは使うことができず、新しいものに替える必要があった。そこで、AWSが提供する機能を組み合わせて活用することを顧客とともに検討を重ね、クラスタリングを実現した。

顧客のスムーズな利用とコスト削減、ワーク・ライフ・バランスまで


株式会社時事通信社
システム開発局 開発部 主査

堀内 健一郎氏

 MACH3は予定通り、2020年3月に稼働を開始した。AWS上に構築された新しいシステムは、既存の専用線閉域網インフラでの親和性をそのままに、スムーズに移行、課題であったBCP対応も実現できた(図)。さらにオンプレミスに対する費用対効果では、ハードウェアにとどまらず保守費の多くを占めていたミドルウェアのライセンス費も大きく削減。AWSに移行したことで、導入コストも削減され、運用費用、保守料金も節減された。配信システムもグレードアップされ、MACH3では、使い勝手も改善され、海外の配信先の利便性も一層向上した。

 運用面ではオンプレミスからAWSに移行したため、運用時のハードウェア障害を気にする必要がなくなった。「クラウドなので、システムの運用状態はリモートで簡単に確認できます。新型コロナの感染拡大の中で、在宅勤務が増える中、何か問題があるときはリモートによって状況をチェックすることができるので、とても助かっています。また、オンプレミスの場合OS、ミドルウェアに対するパッチ対応が少なからずあり、これに対応する為のシステム検証、運用負荷が軽減された事が大きな効果となっています。従来は深夜にサーバを再起動する運用が年に数回ありましたが、今はそれも皆無です」と時事通信社 システム開発局 開発部 主査の堀内 健一郎氏は語る。新型コロナへの対応下で、社員のワーク・ライフ・バランスにも良い影響が出ていたのである。

 「AWSについてはクラスタリング以外にも検討すべき問題がありましたが、システムを熟知している東芝の技術者たちが、きめ細かく手厚いサポートをしてくれました。また、データベースについても同様でした。東芝のおかげで、サービスを停止することなく、スムーズに移行することができました。プロジェクトは予定通りに完結しましたし、なによりもシステムが順調に稼働しており、とても満足しています」と田中氏は嬉しそうに語る。

他システムのAWSへの移行支援、新たなソリューション提案を


 時事通信社では、今後の分析なども含めて個人向けの情報提供にも力を入れていく考えだ。そうした中で、MACH3以外のシステムのAWSへの移行を検討中であり、記事編集でのAI活用など通信社としての業務拡大に対応したシステムを検討している。「私たちは、配信サービスだけでなく、ポータルサイトやキュレーションを通じて、個人向けにニュースや映像を提供するデジタル分野のサービスにも取り組んでいます。その中で、東芝にはこれまでの運用・保守の実績をベースに、当社の新しいサービスに必要なソリューションを一緒に考え、提供して欲しいと考えています」(小川氏)。
 
 東芝には、さらなる提案も含め、社会情報インフラを担う通信会社の期待と、ミッションクリティカルなシステムへの重責がかかる。東芝はそれらを担い、高い技術力と、長年にわたり培ってきた信頼と実績をもとに、時事通信社のパートナーとして、これからも多くの人々へ届くニュースを支え続けていく。

(左から)田中 仁喜氏、小川 泰孝氏、堀内 健一郎氏

SOLUTION FOCUS

「クラウドマネージドサービス for AWS」 

東芝マネージドサービスAlbacore™は東芝の幅広い事業領域で培った運用経験に基づき、最新のクラウド、IoT、AI、OSS等のテクノロジーを取り込み、成長し続けるお客さまのビジネスに貢献する運用サービスです。
東芝マネージドサービスAlbacore™のラインナップの一つであるマネージドサービス for AWSではAWS(Amazon Web Services)認定パートナーとして、クラウドシステムの実現において必要とされる企画から設計・構築、運用までをワンストップで提供します。ICTシステムの維持・メンテナンスにとどまらず、システムの更新や利用状況に合わせた最適化を支援し、継続的な改善を実現します。

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この記事の内容は2020年10月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名   株式会社時事通信社

設立    1945年11月1日

代表者   代表取締役社長 境 克彦

本社所在地 東京都中央区銀座5-15-8

事業概要  報道・ニュース・出版

URL    https://www.jiji.com/

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