「人事・給与データ=貴重な資産」の有効活用による、企業価値向上への挑戦
全国4本社1支社の「人財」を最大限に活かして、
お客様の満足度を高める付加価値を生み出す。
毎日新聞社の改革を支える、東芝ソリューション。
人材管理体制の見直しで社内変革を推進
昨年、創刊135年を迎えた毎日新聞社は、常に新たな試みに挑んでいる。2004年に始まり、現在も進行中の「MOAプロジェクト」も、そのひとつだ。「MOAプロジェクト」の目的は、社内の様々なシステムを改善し、企業価値を高めるための新たな取り組みができるよう、環境を整えることだ。「新しいことを生み出すためには、効率化も必要です。それは経営基盤の強化につながります」と話すのは人事・総務本部の矢吹修一次長だ。プロジェクトが開始されてから、最初に、改善点を洗い出すために、これまでの業務フローなどが見直された。その結果、業務の効率化はもちろん、情報管理や内部統制の強化などが挙がり、新聞制作、販売、広告、経理、情報共有ポータルなどの社内情報システムを刷新することが決まった。人事システムも刷新されることになった。「職種や部局間を超えた社内交流の促進、経営者を含めた各現場レベルでの人材管理をより進めるためには、人事情報システムの充実が不可欠になる」(矢吹氏)というのがその理由だ。
人も情報も埋もれさせない
人事・給与システムを入れ替えるにあたって懸念されたのは、新聞社独特の組織形態に対応したシステムが構築できるかという点だった。同社は東京、大阪、名古屋、北九州の4本社と北海道の1支社から構成され、国内外に400近くの支局や通信部、駐在などが存在する。拠点の数に加えて、編集、制作技術、販売、広告、事業、出版、デジタルメディアなどの各職場には、様々な職種が混在している。「システム導入前は、部局ごとにグループウェアが稼動しており、人事システムとの連携が不十分で、情報の共有が困難でした」と矢吹氏は振り返る。同社では正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなど、多様な勤務形態の従業員が常時4,000名前後働いている。「組織と人が複雑に錯綜する中、人事情報の充実と共有化を図らなければ、一人ひとりの能力を生かせる職場にはなりません。また、内部統制という観点から、今まで各部署で管理している部分も多かった派遣社員の情報も人事部に集約する必要がありました。そこで、従業員の人事・給与データを一元管理できるシステムの構築に取りかかりました」と人事・総務本部の鈴木隆史委員はシステム入れ替えの背景を語る。
人事・総務本部次長
矢吹 修一 氏(上)
人事・総務本部委員
鈴木 隆史 氏(下)
ホストコンピューターからの脱却
同社の人事・給与などを扱う事務系基幹システムは、長年にわたりホストコンピューターで運用していた。「新システムが動き出す前は、現場からの要望に100%応えきれていなかったと思います」と制作技術局技術センター業務技術担当の稲垣恒市課長は振り返る。社内の制度や組織、法改正がある度に、プログラムに手直しを繰り返して対応してきた。「度重なるソフトウェアの修正の結果、プログラムが膨大になり、システム的に限界が近づいていました」(稲垣氏)。「『こういった情報がほしい』と依頼されても、要望を整理し、パッチワーク化したプログラムの中でどの箇所を修正する必要があるかを調べ、修正するという手順を踏むので、どうしても時間がかかってしまい、すぐに応えることができませんでした」、と制作技術局業務技術グループの栗田雅彦氏は話す。ホストコンピューターによるデータ処理は順次対応するのではなく、まとめて処理していた。そのため依頼から結果が出るまでのタイムラグが発生してしまう。それを解決するには、「ホストからの脱却しかない」(稲垣氏)と、システムを運用管理する側が感じていたことも、プロジェクトを加速させるきっかけとなった。
制作技術局 技術センター 業務技術担当課長
稲垣 恒市 氏
選ばれたパッケージソフトは
制作技術局 技術センター 業務技術グループ
栗田 雅彦 氏
2005年から具体的にシステム刷新に動き出した同社は、パッケージソフトを導入する方針を固めた。注目すべきなのは「カスタマイズを前提に10社近くの市販製品を候補に挙げ、評価した」(栗田氏)という点。一般的にパッケージソフト選定の理由にあげられるのは、開発コスト抑制と作業時間の短縮が多い。同社はそれに加えて、パッケージソフトに手を加え、修正していけるものにこだわった。その理由は「職種が多様で制度も複雑な新聞社を一つのパッケージソフトだけでフォローするのは無理だと思った」(栗田氏)からだ。そして選ばれたのが、東芝ソリューションの人財管理ソリューション「Generalist®」 Version5だ。選んだ理由について、栗田氏は「完成度が高く、データベースや仕様が公開されていて手を加えやすい上、他社の周辺システム製品との融和性も高いこと」と語る。さらに、900社以上に導入実績があり、特に同業他社に実績がある点も決定を後押しした。
東芝ソリューションの対応を評価
「Generalist」 Version5の導入は2006年8月から始まった。仕様決定、設計、テストを経て、2007年8月より2ヶ月間従来のシステムと並行稼動した後、10月に本番稼動。途中、並行稼動前の5月のタイミングで「Generalist」 Version5が全面的にバージョンアップ、大幅な刷新を経ることになった。バージョンアップは機能が向上する反面、初期不良のリスクを負わなければならない。「個人別に監査ログを収集する機能やバックグラウンドでデータ処理して運用効率を図るなど、私たちにとってもメリットのあるバージョンアップでした。しかし、ファーストユーザーだったこともあり、導入過程で不具合が発生し、再度、検証を依頼しました」と人事・総務本部の南周子委員は振り返る。東芝ソリューションは開発者を現場に派遣し、プログラムの修正に全力を注いだ。「選定の約1年前、提案依頼書のやりとりの時から、東芝ソリューションの営業や技術者が、コンサルティングに近いかたちで関与してくれました。開発時も他のシステムとの連携には苦労したのですが、東芝ソリューションの技術者が会議に同席して、アドバイスをくれました。」(南氏)。人事部の塩野崎裕司氏も「たいへんだったぶん、システムに精通できましたし、愛着もわきました」と笑う。
人事・総務本部 委員
南 周子 氏(上)
人事部
塩野崎 裕司 氏(下)
社内風土や業務改革の起爆剤に
人事部
三角 洋平 氏
刷新された同社の人事・給与システムは、様々な成果をもたらした。「給与計算には2時間かかっていましたが今では10分強ですべて完了します。ミスがあると再出力まで時間がかかっていたのも、短縮されました」と人事部の三角洋平氏は話す。社員にとっては、給与明細の確認や振込口座の変更申請などが、オンライン上でできるようになり、利便性が向上した。加えて、「刷新前は給与体系や制度の変更ごとに技術センターへ依頼を出し、システム変更の仕様を決め、手直しを加えた上で用紙に出力していました。それが自分の端末でできる。効率化の度合いは計り知れません」と塩野崎氏も続ける。紙に印字する必要が減り、セキュリティーも向上した。情報の変更の履歴をすべてログに残す機能は不正防止の役割を果たすだろう。「これで本来の人材マネジメントや人事諸政策の企画立案業務に、より多くのエネルギーを向けられるようになりました」と鈴木氏は言う。「現状は効率化とセキュリティーの向上で成果を得た段階。これからは従業員に浸透させること、新しいビジネスや取り組みを促す組織改革、業務改善にどうつなげていくかが課題です」と矢吹氏は抱負を語った。いくつものアイデアが生まれ、様々な計画が進行するなか、それらを実現するために、同社にとって東芝ソリューションは欠かせない存在だ。
SOLUTION FOCUS
東芝ソリューションが自社開発した人財管理ソリューションパッケージ。1998年から販売され、現在までに東芝グループ(10万5,000人)をはじめ、製造、流通・サービス、建設、金融など多業種で900社以上の販売実績を持つ。先進的人事・給与制度から業種・業界ごとの固有制度まで幅広い機能を有するほか、複数法人の一括管理機能によりシェアードサービスはもちろんグループ企業の情報一元化も可能。評価・給与制度改定にも柔軟に対応できる高い適応力で戦略的な人材マネジメント環境を実現する。大企業向け導入実績としては国内トップシェア、中堅企業向けを含めた総合実績でも国内有力パッケージという位置付けで、ユーザー会による情報交換なども盛ん。
この記事の内容は2008年2月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
株式会社毎日新聞社
設立
1872年2月21日
代表者
代表取締役社長 北村 正任
本社所在地
東京都千代田区一ツ橋1-1-1
事業内容
日刊新聞、雑誌、書籍の発行および、メディア事業や、スポーツ・文化事業の企画開催
URL
http://mainichi.jp/