コンプライアンスのその先 コンプライアンスを支えるeラーニング

全社的なコンプライアンスをeラーニングでより効率化するために、
化粧品業界のリーディングカンパニーが選んだプラットフォームは、
東芝ソリューションの「Learning Wizard®」。


コンプライアンス対策へも広がるeラーニング活用


 1990年代半ばより社会に浸透しはじめたeラーニングは、受講者の都合にあわせて学習できる点、成績管理の自動化や教育・研修コストが削減できる点から、国内でもここ数年で活用される機会が飛躍的に増加し始めた。「より多くの従業員により多くの研修機会を」という企業の思惑も手伝い、インターネットを使って各研修を管理する「管理システム」、ユーザーが自由にコンテンツを作成できる「コンテンツ開発ソフト」、インターネットを使ったバーチャルクラスを提供する「eラーニングサービス」など、選択肢も豊富になった。企業研修用のeラーニングの市場規模は、今後ますます拡大が予想され、2008年度には約800億円に達すると見込まれている。実際にこれまではアプリケーションの習得が主だったそのカリキュラムも変わりつつある。特に個人情報保護法の施行を受け、情報セキュリティー教育やコンプライアンス(法令遵守)など、社員の行動規範に関するカリキュラムが増加している。

資生堂におけるeラーニング導入の経緯


 その中で、国内化粧品業界でトップシェアの資生堂が、パソコンを利用するおよそ1万人のグループ社員に向けた教育・研修にeラーニングを導入した。「コンプライアンスの社内研修や指導がますます必要となりつつある中、個人情報保護や機密データ、情報システム管理などの社内ルールの徹底に活用するため、2002年にeラーニングの導入検討を開始しました」と背景を話すのは、同社の川中哲哉情報企画部課長だ。資生堂は、それ以前も情報企画部が中心となって、社内ネットワーク上の社員専用サイトを使った情報セキュリティー管理研修を始めていた。同報メールによるアンケート調査や集合教育・研修を定期的に実施し、その徹底を図っていた。しかし「アンケートの回答率はおよそ60%に止まっていた(川中課長)」とその結果は満足の行くものではなかった。この課題を解決するために、eラーニング導入検討が進められた。

情報企画部課長
川中 哲哉 氏

使いやすさを優先した製品選び


情報企画部
中井 由美 氏

 2002年末、eラーニングのシステム選定がはじまった。選定に当たって同社が考慮したポイントは「私たちの考える教育・研修運用の標準化に適合できる仕様であるかどうか」と情報企画部の中井由美氏は話す。当時、いくつかのeラーニングのシステムが、部署単位で独自に検討されていた。社内の動きを考慮して全社統一の標準eラーニングシステムの構築が必須であるとの結論から「自社運用だけでなくASP※1も視野に入れて検討しました」(川中課長)、その結果選ばれたのが、東芝ソリューションの「ラーニング・ウィザード」だった。「パッケージソフト自体の機能に加えて自社内でeラーニング用のコンテンツを制作し、簡便にサーバーにアップロードできる点など、社内運用を加味しながら評価しました」(中井氏)。

※1 ASP/Application Service Providerの略。インターネットを通じて、ビジネス用のアプリケーションソフトをレンタルする事業者を指す。

コンプライアンスの指導と徹底に大きく貢献


 同社が「ラーニング・ウィザード」に決めた理由は、製品の機能や特長によるものだけではない。「このソフトはユーザーオリエンテッドの視点からカスタマイズできる領域が広く、私たちの要求する部門や事業所別の進捗状況、受講履歴の管理を行なうことができます。また、人事データベースと連携して組織の変化に自動的に連動しているため、最新の人事情報を反映できることが大きなポイントになりました」と川中課長は東芝ソリューションのサポート力を評価する。導入作業についても「スケジュールに忠実に進めてくれたので、非常にスムーズでした」(中井氏)。東芝ソリューションのトータルなソリューション能力が、導入に至った最大の理由と言えるだろう。こうして「ラーニング・ウィザード」は2003年6月に稼動することができた。翌年3月に、同社がプライバシーマーク認証を取得する際には、全社員への個人情報保護に関する教育・研修を実施するための強力なツールとして大いに貢献した。「ソフト導入以前は、教育・研修を担当する各部署がマニュアルやCD-ROMを制作、配布するといった事前準備が必要でした。さらに、社員一人ひとりの進捗状況やテスト結果などを電子メールで連絡するなど、非常に手間を要し、運用負荷の増大とコスト高を招いていました」と川中課長は当時を振り返る。eラーニングの効率の良さは次の川中課長の言葉に集約されるだろう。「極端に言えば、コンテンツ制作者とシステム担当者の2人いれば、全社員に教育・研修ができる」。また、「ラーニング・ウィザード」が人事データベースと連携することで、社員の進捗状況が一元管理できるため、教育・研修管理者は対象者が1万人いても最後の一人まで社員の進捗が把握できる。一方受講者は自分の時間が取れるときに効率良く教育・研修を受講することが可能になった。

情報企画部課長
川中 哲哉 氏

コンプライアンス強化で顧客の信頼を


情報企画部
中井 由美 氏

 eラーニングを定着させるポイントのひとつがコンテンツづくりだ。「社員が負担を感じることなく受講できるよう、1コンテンツを20分以内で終了できるようにまとめている」(中井氏)という配慮がされている。身近な内容にしたほうが興味を持って読んでもらえることも分かった。社員にとって、eラーニングは本来の業務ではない。「だからこそ、社員が受講しやすい環境を作ることが、最大のポイントです」と川中氏は語る。従来、全社員が履修し終えるまで3ヵ月以上かかっていたのを、現在では20日以内に短縮できたことはその成果だ。2005年、情報企画部、総務部、お客さまセンターがそれぞれ担当していた、情報セキュリティー管理、機密情報の管理、個人情報の管理に関するコンプライアンス教育活動を統合した。より効果の高い教育・研修を行なうためだ。「これで次のステップに進めたのではないか」と川中課長は言う。新しい体制で資生堂は、今まで以上にコンプライアンスの徹底を図り、社員一人一人がこれを遵守することにより、全てのステークホルダーの信頼を高めたい考えだ。

広がるeラーニングの用途


 現在「ラーニング・ウィザード」のカリキュラムはコンプライアンス関連だけでなく、管理職向けの人事研修、財務研修、環境研修、法務研修など社内eラーニングの標準化に沿って確実に広がってきている。多様な部門がeラーニングを利用している現状について、川中課長は「時間と距離を問わないeラーニングは、今のニーズに合っている」からと分析する。東芝ソリューションもシステム供給の役割を超え、資生堂がCSR※2活動の一環として開始した環境講座のコンテンツ制作にも協力した。今後のeラーニングの役割について、川中課長は「日本版企業改革(J-SOX)法の制定に合わせた、内部統制の徹底のための重要なツールになると確信しています」と言う。一方で、店頭や工場などにパソコンを持たない社員がいるので、eラーニングは万能ではない、と川中課長は言う。そうした社員には、従来の教育・研修を続けていく。しかし、大多数の社員の意識改革を効率良く促すことができる点で、時間的にもコスト的にもeラーニングが優位であることに変わりはない。「コンプライアンス、環境、今後新たに発生する教育・研修コンテンツにも対応できるでしょう」と、同社は社員教育・研修に大きな自信を持っているようだ。そんな同社をバックアップする東芝ソリューションは、今後もeラーニングのパッケージやシステム構築だけでなく、コンテンツづくりやコンサルティングなど、トータルなソリューションを提供できるパートナーとして、同社のコンプライアンスの確立をより一層サポートしていくだろう。

※2 CSR/Corporate Social Responsibilityの略。企業の社会的責任と訳される。

ラーニング・ウィザードのカリキュラム一例

SOLUTION FOCUS

eラーニングソリューション「Learning Wizard®

企業内教育、大学、地域教育といった様々なニーズに応える、インターネット/イントラネットを用いた教育システム。東芝グループ約10万人の社員を対象としたeラーニングで培ったノウハウが凝縮され、簡易なサーバー構成で大規模から中小規模までを幅広くフォローするプラットフォームと、各種システムとのデータベース連携など柔軟な拡張性が特徴。2006年6月には最新バージョンにあたるV2.8がリリースされ、学習管理システム(LMS:Learning Management System)において集合研修用の学習管理機能の強化が果たされ、数万人規模での教育の一元管理が可能になった。

この記事の内容は2006年9月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
株式会社資生堂

設立
1872年

代表者
代表取締役社長 前田 新造

本社所在地
東京都中央区銀座7-5-5

事業内容
1872年(明治5年)に日本初の洋風調剤薬局として東京・銀座に開業。以来、「私たちは、多くの人々との出合いを通じて、新しく深みのある価値を発見し、美しい生活文化を創造します」という企業理念のもと、化粧品をはじめトイレタリー、サロン、食品、医薬品に至るさまざまな事業において付加価値の高い商品やサービスを提供する、国内化粧品業界トップ企業。その影響力は業界だけにとどまらず、広く社会へ波及する力を持つ。現在は「一瞬も 一生も美しく」という新たなコーポレートメッセージのもと、100%お客さま志向の会社へと進化を遂げようとしている。。

URL
https://www.shiseido.co.jp/