AIによる外観検査で、誰でも熟練者並みの検査品質を実現
製造現場では、仕入れた素材や加工品を使って製品を製造する前に、不良品の目視検査が行われています。目視検査には、作業に時間がかかる、検査基準の形式知化が難しく担当者によって結果がばらつく等の課題があります。さらに、長年の経験によって蓄積された熟練者の知見を継承していくことも課題となっています。
近年、AI技術の一つであるディープラーニングによる画像認識は、人の識別能力を超える性能が出るようになってきています。従来の画像認識と異なり、識別対象の画像とその答えをセットにした教師データを用意すれば、人が認識ルールを定義しなくても、識別に最適なアルゴリズムをAIが学習してくれます。つまり、熟練者の判断結果を教師データとして蓄積しAIが学習することによって、熟練者の知見を継承したAIを作ることが可能になりつつあります。例えば、素材や加工品をカメラで撮影した画像からAIが良・不良を判定することで、検査品質を均質化し、作業時間を短縮できます。さらに、AIの判定結果を参考にすることで、熟練者の知見を継承することも可能となります。
ものづくりの現場では、図1に示すような課題を抱えることが多く、これらの課題を解決するため、仕入れた素材の受入検査や製造工程で良品と不良品を仕分ける中間検査などでAIを導入する現場が増えてきています。東芝産業機器システム(株)でもさらなる生産性向上のため、素材の受入や加工品検査へのAI活用の検討を進めています。産業用モータの鋳物部品加工面について、3種類の不良(図2)を対象にAIによる判定を評価した結果、不良品の検出精度が約99.5%、良品の不良誤検出率が約1.2%となり、期待する認識精度が得られることを確認しました。今後、実証実験を通して製造現場が抱える課題に対するAI導入の有用性検証を進めていきます。