AIが病理診断の業務を支援し、病理医の負担を軽減
近年、ディープラーニングによる画像認識では、人の識別能力を超える性能が出るようになり、医療分野におけるAI活用への期待も高まっています。当社は、AIによる病理組織画像からの胃がんのリンパ節転移巣検出について、国立大学法人千葉大学と共同研究を進めています[1]。
日本人の死亡原因の1位は悪性新生物(がん)であり、特に胃がんの罹患者数が諸外国と比べて多いこと(男性1位、女性3位)が知られており、日本人にとって胃がんとの付き合いは切実な問題です。一方で5年相対生存率は60%以上と早期治療による回復率も高く、胃の機能をいかに温存しながら治療できるかが重要となります。
がんの治療では、病理診断でがんの種類や転移を高い精度で判断することが重要になります。しかし、日本では病理専門医の不足が深刻となっており、日本の病理医は医師全体の1%以下、人口当たりの病理専門医数は米国の1/3以下となっています。転移リンパ節組織像(図1)をAIで学習し、AI画像解析(図2)による転移診断のアシストの有効性が高ければ、病理専門医の負担を大幅に軽減するばかりでなく、将来的には胃の機能を温存した縮小手術により、術後のQOL(Quality
Of Life)の向上も期待されます。
当社は、ディープラーニングの最新技術と50年以上に亘るAI研究開発の知見を活かした高精度な画像識別により、病理医の負担を軽減し、迅速な診断のアシストを目指します。
HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色された胃のリンパ節
HE 染色を行い、デジタル化された胃のリンパ節の顕微鏡画像。実線で囲まれた領域は病理医が指摘した転移を含む領域。
AI による胃のリンパ節の画像解析結果
図1の顕微鏡画像をAIで解析した結果。AIが病理医による確認を促す箇所を着色しており、病理医が指摘した領域とほぼ一致している。