ディープラーニング技術 乗合い需要予測

ディープラーニング技術 乗合い需要予測

降車場所にも対応した需要予測により、乗合い運行計画を最適化

近年、人口減少に伴う路線バスの廃止や運転免許を自主返納する人の増加など、高齢者を中心に移動困難者が増えています。このような社会問題を解決するための交通手段のひとつが乗合いオンデマンド交通です。乗合いオンデマンド交通システムは、複数の利用者からの事前予約により乗降車場所・時間などの要望に応じた運行計画を作成します(図1)。運行計画の作成時に、乗車場所と降車場所に対応した未来の需要が分かれば、それを考慮した運行計画を作成することができ、より効率的な運行が可能になります。しかし、一般的なタクシーなどを対象とした需要予測技術では、乗車場所(エリア)のみに対応した需要しか予測できないため、乗合いオンデマンド交通における効率的な運行計画の作成へ活用するには不十分です。そこで、乗合いオンデマンド交通における運行計画の最適化を目指し、乗車場所の需要だけではなく、AIで降車場所に対する需要も予測する乗合い需要予測技術を開発しました。高精度な人の移動需要予測により、将来発生するであろう予約を予め見込んだ運行計画を作成するなど、乗合いオンデマンド交通のさらなる効率化が期待されます。

多い地域で数千件の乗降場所があるオンデマンド交通において、乗車場所と降車場所の組み合わせをディープラーニングで一気に解析しようとすると、モデルのサイズが大きくなり処理時間も必要になります。そこで、(1) 事前予約データと天気などの外部情報データを入力として、乗車場所における需要件数の予測を行うモデルと、(2) (1)の入力データに加え、乗車場所に対応する各降車場所の特徴データを入力として、降車場所の予測を行うモデルの2つに分け、それぞれの結果を掛け合わせることで、すべての乗降ルートにおける需要予測を算出しました(図2)。2つのモデルに分けることにより、メモリ使用量の削減と処理時間の短縮を実現しました。

また、すべての乗降ルートにおける膨大な件数の需要予測結果を、オンデマンド交通の運営者が容易に確認できるように、(1)日毎の需要件数のグラフ化、(2)乗り降り需要のエリアごとのヒートマップ表示、(3)需要が高いルートの表示 の3つの項目で可視化しました(図3)。これによって、配車台数やドライバーの休暇などの事前調整はもちろんのこと、車の動きや人の流れを見込むことが出来るため、施設や自治体におけるイベント計画などにも活用ができると期待しています。

乗合いオンデマンド交通の運行計画イメージ

図中の「利用者」が乗車場所、「利用者」から延びている黄色い線の先が降車場所を示す。青い矢印で示すように、複数台の車両で利用者の要望に応じた運行計画を作成する。

乗合いオンデマンド交通の運行計画イメージ画像

乗合いオンデマンド交通の運行計画イメージ画像

乗車件数予測モデルと降車場所予測モデル

処理時間を短縮するために、乗車件数予測モデルと降車場所予測モデルに分け、それぞれの結果を掛け合わせることで、すべての乗降ルートの需要件数を算出。

乗車件数予測モデル
乗車件数予測モデル

乗車件数予測モデル
乗車件数予測モデル

降車場所予測モデル
降車場所予測モデル

降車場所予測モデル
降車場所予測モデル

需要予測結果の可視化

膨大な件数の需要予測結果を可視化した。1)日毎の需要件数のグラフ化、2)乗り降り需要のエリアごとのヒートマップ表示、3)需要が高いルートの表示 の3つの項目の可視化を行うことで、運行事業者による容易な確認が可能となった。

需要予測結果の可視化な部分の例のイメージ画像

需要予測結果の可視化な部分の例のイメージ画像

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